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何をしても自分と心が動かない

ニーネのレア音源やマニア向け音源などを集めたサブスク限定ベスト「ブラックメロンパン」が今日から解禁されました。ナタリーさんにも取り上げてもらったのだ。ありがとうナタリーさん。これからも全力でナタリーさんに頼っていこう。


「ブラックメロンパン」には、ぼくの好きな初期の楽曲「窓の外」が収録されています。1993年頃制作とのことです。


この曲、大好きなのです。引きこもりの歌だから。
「自分を遠くから眺めているような変な感覚に陥ってしまい、しかもそこから帰ってこれそうにない」みたいな、その病的な感じが最高です。


夢の中の日々 夢の中のような日々
何をしていても自分と心が動かない
家の中の日々

「窓の外」

閉じた心。やる気のなさ。薄れていく感受性。まるで自分だけが社会から取り残されてしまったみたいな、現実感のない、夢の中のようなまどろんだ生活。
「夢」という言葉は、どちらかといえば良い意味で使用されることの方が多いと思うのですが、この曲では悪い意味で使われています。つまり「まどろんだ悪夢の中にひとりぼっちで取り残されてしまっている人」の歌なのです。だからめちゃ良いのです。根暗には突き刺さるのです。

大塚さんはニーネ詩集のあとがきに「この時期は閉じた心を歌っていた」というようなことを書かれています。たしかにその通りで、ニーネ詩集の第10章に収録されている1985~1997年頃の曲は、歌詞の主人公がなんだか病的で危なっかしい感じだったり、人間関係をぜんぜんうまくやれていなかったり、死についてぼんやり考えこんでいたり、とにかく暗い作品が多めです。

むりやり笑うのはほんとに悲しい
むりやりはしゃぐのはほんとに悲しい
こんなに苦しい気分も こんなに悲しい気分も
誰にもわかるわけがない

「誰もいない」


あっちに行っちゃいけないよ いけないよ いけないよ
あっちに寄っちゃいけないよ いけないよ いけないよ
何があっても知らないよ 知らないよ
あっちに行っちゃいけないよ いけないよ いけないよ

「あっちに行っちゃいけないよ」


いくつか引用してみました。第10章はこういう歌詞ばかりです。完全に閉塞しているし、人間関係にも疲れ切っています。「あっちに行っちゃいけないよ」は死の雰囲気が強く、過剰なほどに同じ言葉を何回も繰り返すところが不穏で良いです。「大塚さん、20代の頃めっちゃ暗かったんだろうなあ」と思うと、ど根暗のナードとしてはやっぱりどうしても親近感が湧いてきちゃうよね!

この「窓の外」や「誰もいない」などの時期の大塚さんが持っていた「閉じた心」は1stアルバム「8月のレシーバー」にも引き継がれ、そこでまた別の魅力を放ち始めるわけですが、それはまた別の機会に書きますね。



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