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証言をつなぐ。

「広島長崎だけでない、3回被爆したんだ。」

ETV特集をみると戦後史をいかに自分自身が知らないかを思い知らされます。日本は原爆だけでなく水爆の被爆国なのです。 

番組は1992年放送のNHKスペシャル「又七の海」(歴史に残る名番組の一つ)に出演した大石又七さんが、今年の3月に亡くなる直前まで被爆の責任を問い続けていた証言記録です。

証言をつなぐ
責任の所在を有耶無耶にするアメリカへの責任追求を生涯忘れなかった大石又七さん。ローマ法王が来日すると知ると、急ぎ第五福竜丸記念館の学芸員に連絡を取り、会いに行こうと試みます。曰く「広島、長崎だけじゃないことを伝えたい」有耶無耶にされる被害者の声を伝え続けるその執念は、時が過ぎれば全てが忘れ去られていこうとする日本の私たちにとって、大切な姿勢を伝えてくれました。

番組の終盤にかけては、大石又七さんの講話を聞いて意思を受け継いだ中高生たちのいまが映し出されます。なかには教師となって大石又七さんの言葉を生徒に話伝える人もいました。
こうした証言をつなぐ試みの中心にあるのは、第五福竜丸記念館です。番組では学生たちが大変懸命にノートを取って学芸員に質問をし続けていました。「又七さんの気持ちはわからないのだけれど、わかろうと努力することはできる」率直だけれども普遍的なメッセージのある感想が印象的でした。

オリンピック組織委員会の対応が問題となる中で、いま日本の人権に対する無知が露になりました。多様性を求める中で、私たちが知るべき人権のひとつは戦後史における人権侵害の歴史なのかもしれません。テレビドキュメンタリーの記録的役割は今後ますます重要になるかもしれません。

広島や長崎だけでなく3度被爆した国ーその事実すら知らず、どのような補償がなされたのか否か、そしてその政治選択に関してどのような議論がなされたのか、さえも知らない私には、その問題の構造を知るだけでも福島の原発事故だけでなく今日における、国策と被害者を考える上で重要な示唆をもらいました。

7月24日放送、ETV特集
「白い灰の記憶〜大石又七が歩んだ道〜」

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