購入の決定要因は「価格」「スペック」だけとは限らない...?
僕は「買い物」が好きだ。
今は、シェアやレンタルの様に物を所有せずにその価値を享受したり、旅行やアクティビティの「体験」の価値を置くもが増えていることも理解しているし、僕自身それらにお金を使うことも多い。
ただ、「買い物」、物を購入し所有する行為自体が好きなのだと思う。
そして、感染症対策はシェアやレンタルの伸びに少しだけ影を落とすのかもしれない。
だからこそ今一度「購入」について考えたい。
「購入」という行為を分解する
購入という行為を分解すると、3つに分かれると考えている。
・目的を持つ(目的の明確化)
例:お腹を満たしたい、着飾りたい、家を快適にしたい
・目的が達成できそうな物を見つける(探索)
・物の価値を判断をして購入を決める(意思決定)
「目的の明確化」と定義したものの、これは必ずしも意識的に行われるものではない。
なんなら、目的の明確化→探索→意思決定の流れすら、ほとんどの人は無意識に行っているものかもしれない。
また、衝動買いなどは、探索→意思決定→目的の明確化(自身の行為の正当化)など違う流れをたどっているとも言える。
次に「探索」、物を見つけられる(見つけてもらえる)かは、買う側はツールやリテラシー、売る側から見るとマーケティングやPRの話となるので別でnoteにまとめられたらと思っている。
で、今回は価値判断「意思決定」を深堀りをしたい。
購入を決定する要素、「購入変数」
「意思決定」は、購入するものの価値と支払う価格の比較で行われる。
価値>価格の状態であれば購入する。ものすごく単純で当たり前に見えるが、意外と「価値」が絶対的なものではないのが面白いと思う。
価値は様々な要素で決まる。この要素を「購入変数」と呼ぶことにする。
「価値=目的+購入変数+購入変数」というイメージだ。
わかりやすく具体例をあげると、
例1 )
すごくのどが乾いていて、200m先のスーパーでお茶が100円で売っているとする。
「乾きを癒やす(目的)>100円」
のどの乾きを癒す(目的)に対して、100円以上の価値を感じればお茶を購入するだろう。
では、ここに別の要素が入るとどうだろう?
例2
すごくのどが乾いていて、200m先のスーパーでお茶が100円で売っている。しかし、目の前には自販機があり、同じお茶が160円で売っている。
乾きを癒す(目的)+今すぐ(購入変数)>160円
200m我慢して歩いて100円のお茶を買うのか、今すぐ自販機で買うのかで判断は分かれてくるのではないか?
この様に、同じものであっても「購買変数」で価値は変わる。
「購入変数」の種類
購入変数は「機能的変数」「情緒的変数」の大きく2つに分けられるのではないかと考えている。
ざっくりわけると、機能的変数は、スペックや利便性。情緒的変数は、デザインや口コミ、安心感、イメージなどが含まれる。
この2つの違いは、Amazonと楽天の2つECモールの成長の違いで見るとわかりやすいかもしれない。
Amazonは本の販売からスタートしたプラットフォームで、みんなが同じ価値を認識できる型番商品を比較して購入がしやすい、いわば「機能的変数」に重点が置かれた設計がされ、サービスが成長していった。
・価格のわかりやすさ(機能的変数)
・共通の商品説明ページのレイアウト(機能的変数)
そこに加えて
・primeでの商品の配達スピード(機能的変数)
・レビューの充実(情緒的変数の強化)
一方、楽天初期の、お取り寄せグルメなどで急成長した背景もあり、「情緒的変数」を重視した設計がされていた。
・お店や商品ごとの独自のデザインやレイアウト(情緒的変数)
・長い商品説明(情緒的変数)
そこに、
・楽天スーパーポイント(機能的変数)
・自社物流や「あす楽」「均一の送料無料」(機能的変数)
最終的には機能的変数、情緒的変数のどちらも重要にはなってくるため、コモディティ化されてくるが、どちらを重視していたかで、これまでの変遷が違ってきていると思える。
より重視されていく「情緒的変数」
今後は「機能的変数」で戦うことがより厳しくなっていくと思われる。
物の機能や利便性などの「機能的変数」は大きな資本を持つ企業やメーカーほど優位性が高い。その上、自動車・家電・日用品・アパレルなどさまざまなもので、「機能的変数」を高める研鑽が繰り返され、多くのものがコモディティ化しつつある。
今後「機能的変数」の主戦場は、AIでの最適化によるさらなる利便性向上に移っていく。
そうなると、大きな資本がないメーカーなどが物を売るには「情緒的変数」を増やす、もしくは変えていくし無くなるはずだ。
「情緒的変数」には、
・ブランドの世界観
・サスティナビリティ
・フェアトレード
・透明性
など、まだまだ突き詰めていける要素は無数にあるし、購入するターゲットの世代・人種・性別・好きなもの・重視するものなどで何を変数に置くかも変わってくる。
そして、今後メインに消費者になっていく、ミレニアル世代やZ世代は、この情緒的変数を重視する傾向がある。
昨今のD2Cが増えてるのもここが関係している。
D2Cとは、情緒的変数を突き詰め、新たな変数を提案し、そこにデータ分析による機能的変数を追加したブランドなのかもしれない。
文:那木丈裕
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