ペルソナ2というもの
”異”
2はとにかく他のナンバリングと比べて異色なのである。
一応、時系列的には1の後の話で、地理的にも1の舞台であった御影町と、2の舞台である珠閒瑠(すまる)市は近いらしい。1の主人公たちが通っていた聖エルミン学園の制服を着たモブも登場するし、そもそも1から続投で登場するキャラが数多い(アヤセとマークと主人公以外全員、プレイアブルキャラが続投)。
ただ、1とのつながりが強いとは言え、2は1の続編というわけではない。御影町の異変は解決済みの事件として風化を始めており、2のストーリーはまた別個のものだ。
まず前提として、舞台となる珠閒瑠市では””噂が現実になる””という現象が起きている。
そして、都市伝説として「ジョーカー様」と呼ばれる存在、および、それを呼び出すための儀式がある。
自分の携帯電話から、自分の番号に電話を掛ける。通常はつながらないが、何故かコール音がするらしい。そして、電話に出るのだ。「ジョーカー様」が。
ジョーカー様は呼び出した者の願いを尋ね、叶えるが、答えられなければ影人間にされてしまうという。
影人間にされたものはあらゆる望みを失い、無気力となり、誰からも認知されなくなって、最終的には存在自体が消滅してしまう。
罪
2は「罪」と「罰」の二部作品だが、「罪」の物語は、主人公周防達哉が仲間と共にジョーカー様を呼び出す事から始まる。
細かく語ると非常に長くなるので、ざっくり端折る。
周防達哉以下4人の幼馴染+””お姉ちゃん””である天野舞耶は、幼少期に起きた事件によりペルソナ能力に目覚めるも、衝撃的な体験によりその記憶を忘却して生きてきた。しかし高校生(社会人)となった現在、彼らが再び出会い、失われた過去と絆を取り戻す中で、最終的には黒幕であるニャルラトホテプと対峙。これを退けるが、舞耶は邪悪な策謀により命を落とし、滅びの予言により世界は滅亡する事が決定。
この結末を受け入れられない達哉たちの前に、ペルソナ能力を与えた張本人であるフィレモンが現れ、過去、達哉たち幼馴染と舞耶が出会ったことがすべての始まりであり、故にその事実を””なかったこと””にすれば、この運命から逃れられると提案。達哉たちはこれを承諾し、かけがえのない仲間や絆と引き換えに平穏な日常を取り戻す──
と、ラストがかなり重く、ヒーロー&ヒロインが巨悪を倒してハッピーエンド、という王道展開ではないため、評価は分かれる所。
ゲーム全体の雰囲気は明るい方で、コミカルな掛け合いやギャグっぽい展開などは随所に見られるのだが、このクソ重エンドを緩和するには至っていない。
また、1のアングラさとは違うものの、いわゆるオカルト雑誌(ムー)のトンデモ話を現実にしてしまう展開+一般的認知が薄い、マイナーなマヤ・アステカ神話に関連した概念や単語の登場、さらにはヒ〇ラーと聖槍騎士団まで出てくるので、話としてとっ散らかってる感は否めない。
当時の厨二病にはさぞかしブッ刺さっただろうが、令和の時代にどうかと言うと、非常に疑問である。
と、ここまで下げの評価をしてきたので、いくらか良い点を挙げようと思う。
””噂が現実になる””という現象はシステムとしてゲーム全体に影響しており、それを総称して「噂システム」と呼ぶ。
この噂システムは斬新、かつ非常に柔軟なもので、望みの結果を得るために 自分に都合のいい噂を流布する、といった行為が、そのまま攻略の快適性につながる事は現代までのゲーム史においても稀有な体験であった。
致し方ない部分として、噂を流布する上で必要な行為(幾許かの金銭であったり、悪魔との交渉であったり)が手間である事は否定しないが、それだけでこのシステムを全否定するにはあたるまい。
ただ、1に比べればかなりの高速化がなされたとは言え、やはり戦闘には時間がかかること。相変わらず鈍足に人権がない(今作では栄吉)こと。合体技の登場である程度の緩和はなされたのだが、結局鈍足のタイミングで発動するために敵の行動でキャンセルさせられることもままある。
さらに、悪魔の感情を高めてスペルカードや噂の流布を狙う交渉が複雑化しており、全ての悪魔に最適な交渉ユニット及び選択肢は膨大な数になる。とても覚えきれない。
こんな中で特殊なペルソナ入手のために必要となる““fool““のカードを得ようとすると、運ゲーによる試行錯誤は不可避。非常に手間である。
やり込み要素はあってしかるべきだが、いささか苦行の側面が強いことは否定できない。
罰
さて。こうした「罪」の諸々を更に異色に引き継いだのが「罰」である。
「罰」の主人公は「罪」にてヒロインであり、ラストシーンで命を落とすことになった天野舞耶。その仲間はほぼ全員成人済み。
そう。「罰」はペルソナシリーズにおいて唯一の““成人がペルソナ使い&主人公““の作品なのだ。いい大人が真剣な顔で「ペルソナー!!」と叫んで銃撃し悪魔を倒して金銭を奪い取るのだ。これを異色作と言わずして何と言おう。
ストーリーは「罪」のラスト、達哉たちが出会いを諦めて運命のやり直しを受け入れたシーンから始まる。
仲間たちがやり直しを受け入れて消えていく中で、達哉一人はどうしても受け入れきれなかった。そのため、平穏な世界が取り戻されたはずの現実に、「罪」の達哉一人が““特異点““として存在することに。
ニャルラトホテプは達哉に告げる。「もしも思い出してしまえば──」世界は再び、滅ぶ。
滅びの回避のため、達哉はたった一人戦いを始める。
一方で主人公舞耶は雑誌取材のため(言い忘れていたが彼女は出版社勤務である)、達哉が通う七姉妹学園へ。「ジョーカー様呪い」の取材、調査を進めるうちに異常事態に巻き込まれる。出現した悪魔に襲われ、ペルソナ能力が覚醒。しかし「ジョーカー様」(に扮した須藤)の強力な攻撃で窮地に追い込まれ、あわやのところを達哉が助けに。
「何も見るな、何も聞くな。思い出すな。忘れるんだ、すべて…」
それだけを言い残して立ち去る達哉。彼の思惑に反して、舞耶は更に異変へと踏み込んでいくのだった。
““罪““をプレイしてから““罰““をプレイすることが推奨されるが、““罰““からプレイすると達哉の存在の謎めいた感が強まるのでそれはそれで悪くない。
他者(舞耶含む““罰““のプレイアブルキャラたち)を拒み、一人きりですべてを解決しようとあがく達哉と、どうしようもなくそれに惹かれる舞耶。この二人のすれ違いや軋轢か““罰““ストーリーの醍醐味と言える。
また、ペルソナシリーズ唯一の成人済み主人公とあって、““大人““と““子供““の対比が何度も描かれる。ペルソナ使いなのでアウトローもいいところな連中ばかりだが、大人として社会に、世界に向き合っていく姿。自分の選択に責任を持つこと。そうした生き方が複数の切り口で描かれる。
システム面では、””罪””を下敷きに””罰””ならではの要素を加えた感。そのため””罪””から削除された要素は少ない。多様な掛け合い交渉も、やたら印象深いNPC達も、懸賞ハガキ応募事務所も廃工場も健在である。
ただ、依然として鈍足に人権はないままで、かつ今回の主人公舞耶は先手魔法タイプのために非常に打たれ弱い。一般的なRPGの主人公のように前線で割と器用に立ち回る、という先入観でプレイするとあっさり倒されている、という事も起こり得る。
その点で言うとストーリー後半で加入する達哉は一線級の働きができる。いくら前作で修羅場を越えてきたとはいえ、既存PTメンバーの成人達を隅に追いやる活躍をする高校生。大人とは何かを考えさせられる。
余談
ペルソナ2は罪罰どちらもリメイク版が発売されており(ただしPSPやPS Vitaのためプレイは難しいと思われる)、そちらには追加要素もある。ただ、今になってプレイするにはただでさえ多いやり込み要素と時間がかかるダンジョン、戦闘、それに加えての新要素と胸やけのするボリュームになってしまっており、気力体力共に充実したプレイヤーでないとちょっととっつきづらい。
個人的には是非ともお勧めしたいタイトルとは言い難いが、ペルソナ3以降とそれ以前との大きな違いを知る意味では、一度プレイする意味はあると言っておこう。
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