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Thrill Me 配信感想:木村前田ペア

Thrill Me(スリルミー)とは、Stephen Dolginoffが実際にあった事件をもとに上梓した、男2人とピアノ1人の1セル3ピースの愛憎劇です。
楽曲紹介についてはwikiを参考にしました。あらすじはwikiをご覧ください。

はじめに

ここでは2023年10月28日~11月5日の間にイープラスで公開された配信について感想を記述しています。
わたし(筆者)が見たのは木村達成(私)×前田公輝(彼)/落合崇史(ピアノ)の配信です。
※SNSでの感想を見る限り、今回上演された3ペアごとに表現や客の受け取り方がだいぶ違うらしく、その中でも木村前田ペアのお芝居は毎回アプローチを変えてきてたそうです。なので、ここで書く印象や疑問、考察についてはあくまでも配信を見た上での感想になります。
このような観劇ブログ文を書くのは初めてなので、イレギュラー表現や段落があると思います。文法もちょいちょいおかしいです。素人の戯れとみなし、ひらにご容赦願います。

舞台の感想を書くにあたって

「スリルミー」を翻訳したら、「ワクワクする」とありました。ときめくとか、興奮するとか、暗喩では性的交渉の意味合いもあるとか?
登場人物は『私』と『彼』で、両者ともにスリルを求めて物語がはじまるんだけど、結局スリルってなんだったんだろう?
たぶん『私』にとっては”彼からの愛”で、『彼』にとっては放火? 殺人? ニーチェの超人論とか厨2めいたことをいってるし、サイコパス的な人間は感情が薄いっていうから強い刺激?
理解し難いと思いながら、これで視聴5度目ですがメモを取りながら感想を書いてみました。

メモ

・初見としての感想ではなく、何度か最後まで視聴した上での感想(疑問)となります。なので、話も前後します。
・メインパートを歌うほうがリードしてて決定権があるのかな。
・木村私=私、前田彼=彼、筆者=わたし、で区別をつけています。
・懊悩する男性の姿(演技)が好きなので、afraidとLifePlus99Yearsの2場面だけでも全ペア観たかった。
・パンフを見たら54歳だったので修正しました。
19歳+34年服役=53じゃないんだ?
・歌のナンバリングもパンフの記述に合わせました。最初からそうすればよかったよね…。パンフの表紙がマットめでヌルヌルだから、指紋をつけたくなくて触りたくないのよね。


M1◇Prelude プレリュード

<54歳の私>
開始 ここ最初3連符って思うじゃない。楽譜を見たら8分音符の4連符だから「えぇ」ってなる(素人感)。鍵盤のめっちゃ左寄りで和音が鳴ってて恐ろしさ出てる。
1:20 左の和音が葬送の鐘の音のように聞こえる。ピアノの奏でる曲はM15(レイに懇願するときの歌)?M9(スポーツカー)?
どちらにせよ、彼が猫なで声で相手をたぶらかすときの曲みたい。
3:04 犯罪史上に残る惨劇(wikiによれば1名の殺人と3名以上の嫌疑)だって。

ここの私の所作について。
最初のシーンで背中から振り返る。顔が真っ黒で表情の判別もつかない。手錠(に見立てた指の絡み)にスポットライト。個性を奪われた犯罪者でしかない私。裁かれる者としての私。
私および彼について、殺人の動機の説明を求める裁判官、仮釈放審議の場であると表現されている。

私「何を知りたい」→偉そう
背後の窓枠が6つに分かれている。これはこの後ずっと4つの枠になってる? イメージ的に、十字架を想起させるんだけどそういう意図は無いのかな。
物語のもととなった犯人像はユダヤ系アメリカ人でユダヤ教(しかし熱心ではない)、スリルミーを書いた作者はアメリカ人だからキリスト教寄り?

M2◇Why 隠された真実

<54歳の私>
私「お話します」
過去の彼との話を『私に残る”傷跡”』と表現している。思い出でも記憶でもない、愛情ともかけ離れている。
でも同時に『夢のような』とも『眩しく熱い記憶』とも言っている。心を通い合わせたというより、一方的な憧憬みたい。
動機については『彼と共に生きていくため』というが、”共に”というにはあまりに一方的過ぎる結果なんだけど、それについてはどう解釈すればいいんだろう。私も己の傲慢さに溺れて彼の気持ちを汲み取れなかった?

・子供のころから一緒だった。
(高1の時にあの公園で彼の写真を撮っている)
・高校は2年スキップして大学も一緒で、4年の時に彼のほうが別の大学に移った。(このとき彼は大学院に行っていた)
・彼は、卒業後に戻ってきた(半年して戻ってきた)。
・それで私も彼も19歳ということは、写真の彼は15歳ということ?

関係ないけどめっちゃユニコーンの「人生は上々だ」がまわる…。

哀しい様子の私を見て喜ぶ彼という図があって、それが2人のゲームだと私は考えている。彼が消えたら一生苦しむ私が見えて楽しいだろうに、彼は私の元に戻ってきた。どうして?
卒業したから? 家督を継ぐ必要があるから?
ていうかそもそも、どこかに行った彼っていうのは彼自身の意思で遠くに行ったんだろうか?

彼が血の誓いを誰かと交わした経験を私が知らない、ということは、大学4年の転学と、転学前の夏休みに1人でどこかに行ったときのどっちかだろう。ひょっとして、そこで彼は誰かから傷つけられた可能性があったりする?
『血の誓い』という発想が彼以外の誰かから出てきたものだとすれば、何か彼のコンプレックスを刺激するような経験をしたのかもしれない?でなければニーチェのような、なろう小説の主人公みたいな思想に染まらないと思う。

彼は劣等感が強い子供だったのかもしれない。劣等感は本人の資質に縁らない。変な例えだけど手塚治虫だって新人漫画家に嫉妬バリバリだったらしいし、どれだけ才能が有っても欲望だけは尽きない。

メインテーマ

過去へ遡る

<19歳の私>
3時に公園で、という約束。
バードウォッチングの私は裸眼の時に目をすがめている。双眼鏡を見るために外していた?
契約書を確認する時に眼鏡をかけるくらいだから相当な近視かと思ってたけど、私の視力ってどれくらいなんだろう?
その私の後ろから彼がそっと忍び寄るときに、かかとから地につけて音をたてないようにしてるのが幼い。

8:04 私「元気そう」→彼「まあ」と答えるときに1拍に溜めてて、何か気持ちを隠してるみたい。
私が弟から情報を仕入れていたことに腹を立てて(あのバカ、余計なことを)いるのは、弟と私が親しくコンタクトを取ったせいかと思っていたけど、もしかして彼は私を困らせたくて現況を黙っていたのに私に知られ、私が少し安堵していたことに怒ったのかもしれない。
意地悪をしたかったのかな。
9:00 彼「(今の状況に)満足している」 ←わざわざ言うのが嘘くさい
自分で自分を超人とかいう人は超人と言うより少年でしかないけど、そうなのって話を合わせてあげてる私が大人なんだろうな。
9:26 私「君の弟はお金を渡さないと情報をくれない」 ←これも最初は悪い弟かって思ってたけど、私から自主的にお小遣いをあげて彼の情報を流してもらってる可能性もあるのかと思った。弟は「別にお金なんかいいよ~」とか言っても「でも悪いからさ~これで何かいいもの食べてよ」「そう?ありがと~」みたいな関係かなって思った。
私「どうして大学を移ったの?」 彼「天才ならそのくらいわかるだろ」 天才は関係ないと思うけどおとなしく頷いてあげる私が偉い。どうせ弟から情報もらってるから理由は分かってると思うけど。
9:35 彼の唐突な友達一杯いる自慢は私に対する交友マウントか何かかな。どうせそうだろうな。うわべだけの友達って私には分かってるから「そんなの意味ない」って言い返すけど、彼は「おまえ(私)も同じだよ」って言うのが意地が悪い。彼にとって私の存在も何の意味もない虚無な存在って言いたいんだろうけど、それ逆説的に彼の交友関係が空虚だっていう証明になってる。彼ってあんまり口喧嘩得意じゃないのかもしれない。
言い合いになって彼がどこか行ってしまいそうになったから私が立ちふさがったら、「Auf Wiedersehen.(さよなら)」ってわざわざドイツ語で投げかける彼が意地が悪い。ニーチェ研究会って実質ドイツ語会話の勉強会なのかな…ニーチェってドイツ人らしいし…。
私「(僕たちは)ただの友達じゃない」と言い返して、ここで初めて2人の関係が明らかになる。

M3~M4◇Everybody Wants Richard 僕はわかってる

10:15 私の歌唱、めっっっちゃ良き声!! アニメの主題歌みたい。まっすぐで伸びのいい、好もしい声質。声優やれそう。
ここからしばらく私のターン(自己主張強め)。私が主張を始めると決まって彼って躱すよね。このときは煙草を口に咥えて、火を持ってるかなんてどうでもいいこと尋ねてきて、でも私は先読みしてるから言われる前にマッチを差し出してるから銀座のホステスみたい。
マッチの火を見つめる彼の気持ちって、不満の表れなんだろうな。
私が「彼はわざと消えたけど私のもとへ帰ってきた。それは私が一番大切だと思ってるから」と歌い、実際(大切かどうかはともかく、ほかに帰るところは無かったんだと思う)言い当てられた彼は腹いせに私に煙を吹きかける。私は噎せる。
彼の女遊びは彼の弟から情報を得てる。外で遊んでいるのはわかってるけど、自分はおとなしく待ってやってるんだ……と彼が受け止めたのかは知らないが、彼の中に憤懣が溜まっていく様子は伺える。表面上は冷静に見えてるけど、それは彼の仮面なんだろうな。
私が歌いあげている間、彼は別のことを考えている様子。
12:48 予定を変える、と彼が言うから私が喜びかけたら、まさかの放火の提案をする。
古い倉庫は今も使われていないのかを私に確認して、
彼「よし火をつける」(なんで!?)
彼「牛小屋を燃やした時と同じ要領」(だからなんで!?てか🐄は?)
私「また火をつける気?」(ですよね)
彼「嫌ならいいけど?」(嫌でしょうが)
私「見張り役なら」(なんでよ妥協すんなよ)
彼の指示が細かい「ガソリン、長めのマッチ、ぼろきれ」(長め)
私が承諾して、彼がキスをくれる。
ここ、触れるだけのからかうようなキス→歯をのぞかせて笑う→私の顔をじっと見つめる→もう一度唇を重ねて、今度は深く長いキス
悪い顔~~~~~~! 悪い男!! もう誑す気まんまんじゃん。
呼吸が苦しくなって彼の身体を押しのけたら、あれだけ望んでいたくせに私の方から顔を背ける。純情~~~~ッ
それでいて彼のかけた言葉が「満足か?」って上からだし、私は複雑な表情で返事も硬いし、なんかショックを受けてるみたいにみえた。
立ち去る彼の後を数歩ついていった私の後方に、彼はマッチの箱を放るから、私はマッチの箱に気を取られて立ち止まってしまう。
私が、傷ついた顔で、彼に対する激情を歌に乗せて熱唱するシーンは可愛かった。
ラムのラブソングっぽさあった。ごめんスルーして。

M5◇Nothing Like A Fire やさしい炎 

<54歳の私>
独白

彼の放火に対する異常な執着心(性的な興奮)をつまびらかに語る。

・火をつけたのは彼
・ガソリンをまいたのは私
すぐに逃げようという私を、しばらく見物すると断言する彼が抱き留めて、なあなあで結局炎をみてる2人の図が、キリストの磔のようにも見えた。
炎が立ち上る様が綺麗だ、高校のころを思い出す。
彼「資料室を燃やしたとき」(燃やしたんかい)
彼が私を名前呼びからの、何が欲しいのやら成長やら触ってやらDomSubやら、途中から「あ、睦言ね」って気が付いたから良かったものの…。燃えるの見ながらいちゃついてた。

やさしい炎は輪唱形式だった。
彼がメインパートで私が追いかけて歌ってる。でも、彼が私を抱きしめた後から私がメインパートに入れ替わった?私が両腕を翼のように広げたあたりから、メインとサブが入れ替わってるように思った。そこからずっと私のターンだった。
彼「♪壊れてねじれた心」(何されたんよ…)

<54歳の私>
独白で、放火の後で連絡すると言ったのに連絡が無かったと。
背景で白く光る窓枠は十字架のようだった。けど、別にそういう意図は無いかも。
それで、私は彼の部屋を尋ねた。

<19歳の私>
彼に了解を取らずに押しかけたので、弟とコンタクトを取って入れてもらった。私の頼みごとを、彼の弟は気安く聞いてくれてる印象を受ける。意外と私と弟との関係性は良好にも見えるので、ますます弟はとばっちりを受けて彼に逆恨みされてる説が強まった。
それで、弟が入れてくれたって答えたら彼は弟に殺意を向けるし、ニーチェ読み終えて超人だから寝るとか子供っぽい言い方するし、なんとなく彼は私に対しては甘えが見え隠れする。もしかしてだけど、彼は私に対して常に意地悪をしてないと落ち着かないくらい私のことが(実は)怖いのかな。私が彼に対して逆らわないよう見張ってないと不安なのかも。もちろん、彼に自覚は無い状態で。
彼「俺が寝てるのを見てろ」(お前の寝る場所は無いってこと?)
ありがとうと私はお礼を言う。それでおとなしく膝を抱えて彼を見つめてる。歪んだ関係性だよね。

M6~M9◇A Written Contract 契約書(その1~4)

あんなことバレたら~という歌。倉庫への放火について不安な私と、全部ニーチェで片付けようとする彼の対比。(ニーチェへの風評被害)
ここでも彼は私にニーチェの本を投げてよこす。決して手渡さない。接触を避けている。

23:15 私は彼に身体を寄せるが拒否される。
彼は、犯罪行為に加担しなければ私とセックスしないと言い放つ。(もっと婉曲的な表現だけど、要はそういうことでしょ)
彼「わかってるだろ?」
私「僕たちそんなんじゃないだろ」
彼「わかってないようだな」(どっちなんだい)
残りの夏を1人でどうぞ的な捨て台詞を彼が言って、私は急に日和って「別に止めようとしてない」とか答える。
だけど、ここからどうも私の策略が発動してるみたい。
私「僕の助けとか無くてもいいでしょ」(駆け引き)
そしたら彼も負けずに
彼「お前が必要なんだ」(駆け引き)
それで私が面食らってたら彼がもう一度、
彼「お前が居ないと駄目なんだ」
言い方もセンテンスを区切って、言い含めるようなセリフだった。あれは完全に駆け引き。
私「そんなこと言われたの初めて」(どうしたんだ彼は??)
私はやにわに信じられず、どうせ彼は裏切るし私の言う通りにもしてくれないと反論する。
そしたら彼が、
彼「がっかりだ。少しはまともな人間になったかと思ったのに」
※これ、めっちゃ気になる言葉なんだけど……。もしかして、彼自身が父親とか教授とか、目上の偉い人から言われたセリフでは?

歌の続き:自分だけいい子になって~
契約書というフレーズは彼が初めて使った。
25:35 2人は対等とか正式に結ばれるとか永遠とか婚姻届けかな。
彼がタイプライターを出してきた。
私「ルームメイトから盗んだやつだ」(おい待て)
タイプライターの印字が薄れてたり欠けてる文字が有ったりのくだりで、これがのちのち脅迫文を作った証拠になる。
メガネが無いと打てない、という私の言葉で、メガネもまたブラフになってくるみたい。
私「できるかぎりで」ってはつらつとした声で歌うから笑っちゃった。可愛い。
この手の雑務を私に全部任せるからあとあと彼が窮地に立つのに、彼の計算が甘いのか私のことを侮っているのか。
経理に売上金抜かれる会社みたい。それで経理はV-tuberに1億円スパチャして捕まる手口。

血のサインのところ。
彼「出せったら」(かわいい)
彼「指拭け血で汚すな」(世話焼き)
彼「前にもやったことある」(なにそれ聞いてない)
30:00 ここからの合唱は
もう戻れない~→メインパートが私でサブが彼
誰も破れない~→メイン彼、サブ私
血のサイン~→ここはユニゾン
永遠に~メイン私、サブ彼
彼主体に見せかけておいて実は私の思惑通りでもある、ということかな。
その契約書もろくにチェックせず?彼は指ではじいてるからとことん私を甘く見てると思う。

<54歳の私>
独白:
しばらく平穏だった(強盗しておいてそういう発言?)
何週間か経って何かが変わっていった。

<19歳の私>
強盗の表現として、天上からカバンが落ちてくる。彼か私が持ち運ぶ演出じゃないのはなんでだろう。
収穫はそれなりに値段の張りそうな金品なのに、彼はライターに心を惹かれている。火をともしてじっと見つめている。
スキンシップをねだる私を彼は拒絶するし、それも私のほうを一度も見ないでやめろって言ってるのがひどい。
彼はライターだけ盗って、私に「欲しいものが有ったら取れ」って言うから私としては「抱きしめて」ってねだる流れになる。
もともと強盗行為に対する熱が冷めてきた彼にとって、私から性行為をねだられるのもストレスだったのかもしれない。
無作為だと思うけど、次は父親のオフィスに忍び込んで盗みを働こうと持ち掛ける。金庫の中身を推測したうえで金庫の番号は弟の誕生日だろうと勝手に思い込んで激怒する。ここはそうかもしれないし違うかもしれないけど。
私の感情を無視したつもりはなくて、むしろ踏みにじりたかったんじゃないかな。最悪だけど。
なにせ彼にとって怒りのトリガーの9割くらいは父親みたいだから。父親コンプに弟コンプで彼が非常に面倒臭いことになってる。

M10◇Thrill Me スリル・ミー

私の求愛満載ソング。私は不満が爆発してるのに、彼は家族への怒りで賢者モードになってるので、言い争いがちぐはぐになっている。
しまいに私は契約書を持ち出して、破り捨てるがかまわないかと脅すんだけど、そもそも彼はなんで1人で強盗や放火をやらないんだろう? 中学女子の便所友達みたいになってるの不思議なんだけど。
基本的に犯罪って言うのは共犯者から足がつくことが多いと思う。単独犯のほうが尻尾を捕まれないはず。彼はなんでも1人で出来そうだし、何より頭脳明晰なのに、どうして私を巻き込もうとするのだろう? 自分の手を汚したくないとか? 教唆なら、まだ私と彼が生きた時代では罪に問われないから?
1人で実行することと、私に身をゆだねることを天秤にかけて、彼は私との行為を選択した。
ネクタイは抜いたし服のボタンも外して身を横たえたけどマグロだったんだけど…供物みたいに見えたシーン。私は「いい加減な気持ちなら嫌」って歌ってて、そうね…彼はいい加減な気持ちで抱いてる(抱かれてる)と思ったよ…みんなそう思ってるし、そんな男やめろって思ってると思うよ。

<54歳の私>
もし彼の犯罪行為に付き合わなかったら、彼は私に2度と会ってはくれなかっただろう、って言ってるけど、それはどうだろ?
なんだかんだ言って私のほかに悪事に誘える相手が居なさそうだし、私に合わせてくれそうに見えたんだけど、惚れた弱みを持ってると正常な判断が欠けてしまうのかな。
私「友情が必要でした」
友情という言葉を言いよどむのは、当時のゲイに対する風当たりの強さを表現しているのかな。
私「どうして自制がきかなかったのか」
自制とはどっち方面のことを指すんだろう?自分を制御できないってことだから、彼に対する性的な欲求を押さえきれなかったという意味にとっていいのかな。
とすると、ここは裁判官に聞かせる言葉ではなく、ひとりごとに近い内省みたいなものなのかな。

<19歳の私>
やったあと5分後に人を殺そうとか思いつく彼よ。私からの性的交渉を受けた後でだいたい悪いことしか思いついてない。
39:20 論理的とか進化とかごちゃごちゃ言ってて結局は転嫁というか、本来そこは私に向けた殺意だろうに、憎しみが弟にスライドして彼は弟を殺すとか言い出してる。
社会的にそれはやっては駄目なことだと私が言うけど、社会だとか世間だとか、そういうフレーズは彼にとって禁句で、余計に彼の気持ちを殺人に傾けさせてしまった感がある。
41:20 
私「誰を殺すの」
彼「俺が一番ムカつく奴」
私「僕?」(即答だった笑った)
彼「お前以外で」(めっちゃイラついてるのが笑える)

M11◇The Plan 計画

彼がどれだけ弟を憎んでいるのかが滔々と歌われる。邪魔とか、死ぬのが正義とか。
父親に対する憎しみも歌われる。父親は弟を溺愛しているから、弟を殺したら父親は発狂するとか、そしたら家の財産は全部自分の物とか。
私は、もし家族をころしたら彼は重要な容疑者になるとか、弟が殺されたら親は悲しむし、何より弟は家族なのだと言って殺させまいと彼を説得する。ちょっと理解できないんだけど、彼は親を悲しませたくて弟を殺したいんだと思う。家族だからこそ、父親の愛情を独占する弟に嫉妬し憎んでるんだと思う。私の説得で彼が納得してるのが私には呑み込めなかった。
結果的に知らない子供を殺して身代金を要求する手筈になった。
私「(彼も私も裕福だから)金に困ってない」
彼「お前はそうだが、うちは最近父親がケチで金を出してくれない」
会社の業績が傾いてるんでなければ、彼は浪費家で親が手を焼く存在だと伺える。金遣いの荒い息子だとすれば、父親も態度が厳しくなるのは当然だと思う。彼は厄介者なのかな。

殺人計画ソング:ハンマーで頭を割る~
メインパート彼、サブ私
ここでは私も本心からうなだれているように見えた。素のままの私だから彼も自然に私を抱きしめてあげたのでは?

私は常に彼の出方を見て臨機応変に対応を変えているように思った。
最終目的が彼の確保っていうのは変わらないけど。

<54歳の私>
殺人準備は私が用意した様子。ここで階段の一番上にテーマカラーの青い長方形が現れる。

M12◇Way Too Far 戻れない道

<19歳の私>
戻りたかったけど戻れなかった、と悔恨の歌を歌う私。すべてが手遅れだったと歌う。
彼が実行に移す姿を眺めているだけの私。
曲調はメジャーコードで、持ち物チェックを入念にした後で青に消えていく彼を見送る。
止められなかった彼のことを今でも後悔している。
49:56 歌っていくうちに、54歳私の顔が現れる。

M13◇Roadster スポーツカー

通りすがりの小学生くらいの少年を誘拐する歌で、車に乗せてあげると誘ってる。彼の仕草や声音がところどころひょうきんお兄さんになってて、これは前田彼の素の部分なんだろうなと思った。ついてっちゃうよーこんなの。
子供を誘っている間はずっとライトが顔に当たらない。
うっすらライトが当たって表情が判別できるくらいになったのは、「家のそばにきたら下ろしてあげるよ」って歌っていたときで、目が笑ってなかった。
53:40 黒手袋をゆっくりと嵌めている。手首にライトが当たる。
最後駄目押しのワンフレーズがロングブレスだった。ステージをぐるっと回って消えていくまでずっとノンブレスで、酸欠で息が苦しそうだと思った。子供が死ぬ前に彼が死ぬところだった。
54:19 殺しちゃった。

M14◇Superior 超人たち

ピアノの音の入り方(スラ―)が超絶天才。ニーチェだね(誉め言葉)~。
興奮して縄を鞭のように打ち付けてる彼は少し滑稽に思えた。
からの、血を洗い流せとか相変わらず指示が細かい。お父さんが嫌いで犯罪に手を染めたのかと思ったら「街を破壊」とか言い出して…果てしないなあ…地球征服もしそうな勢い。彼は何がそんなに憎いの?世間?(元ネタのシカゴって保守的な地域らしい。ガリレオ地動説を指示しただけで裁判にかけられたレベル)彼には常に閉塞感があったのかも
私はそんな彼が怖いけど、歌には怯えよりも興奮が現れてて、少なからず私も犯行を楽しんでいるように見えた。
♪完璧な夜を~ ここで腰の抜けた私の後ろに彼が回り込み、私の腕をつかんで広げさせる。飛んでいく翼のようでもあり、十字架にかかる殉教者のようにも感じられた。
一通り満足して立ち去る彼の手を私はつかんだまま離さない。
この夜の彼は私を振り払うことなく、私を導いて消えていった。彼は満足したのだと思う。

<54歳の私>
私「彼は幸せに満ちていた」
その幸せな興奮のまま、彼の部屋で脅迫状を爆速タイプする彼とすでに醒めて落ち込んでる私がいて、これも私の計算だとしたら被虐的だ。
彼の書いた脅迫状をチェックするときに、私のメガネが無いことに気が付く。

M15◇Ransom Note 脅迫状

ここの輪唱が好きです。彼が歌うフレーズを私が追いかける。ユニゾンでは彼の声が強く、私の声はときにかすれて聴こえない。
計画は完璧だと彼が言うのを、片膝を抱えたまま私も繰り返して「完璧だ」と言う。私の表情、それまでの弱気が消えて企むような笑みが一瞬浮かんでいる。
「完璧」の意味が私と彼でずれている。
なお膝を抱える心理は不安や緊張であり、まだ私に確証がないことの表れだそう。でもネット検索したら勃起したときも膝を抱えるって書いてたから、現時点で即興的に私は彼を罠に嵌めるストーリーを思いついてしまって、下半身に血が集まったのかもしれない。

私は、もし彼が誘拐されたとしても父親は心配すると言い、彼は「父親は世間体を気にするから金を出すのだ」と切り捨てる。

最高気温は40度を超えた イリノイ州シカゴはそんな高温にならない。異常気象の年? 暑くて腐乱が進んだせいで遺体が見つかったのかも。

1:01:00 電話に出るのは弟って、彼は常に自室に引きこもってて、弟はリビングで家族と寛いでいるのが常態だったのかな。家庭での彼の孤立を感じる。電話を取り次いでもらった彼の様子では、表面的には弟と険悪では無さげ? 弱みを握られないように、家族に対して感情を噴出させてないのかも? 唯一さらけ出してるのは私に対してだけかも。

M16◇My Glasses/Just Lay Low 僕の眼鏡/おとなしくしろ

遺体の身元確認の決め手は背中のあざで、見落としたのは彼の手落ちらしい。ミスは認める素直な彼…。
ここでも現場に行くなとか指示するのは相変わらず彼(鍋奉行)。
『Just Lay Low(ジャスト レイ ロウ)』騒ぐな(おとなしくしろ)という意味で、私の名前がレイで、韻を踏んで歌詞を作りやすそうって思った。

私「メガネを落とした」それっぽいメガネが現場に落ちていて騒ぐ私に対して、
彼「取り調べられるのはお前だけだ」って冷酷な言葉に、これまで狼狽えた演技(?)をしていた私が一瞬、「え…?」って真顔になるのが、じわっと怖くなる。もし、ここも私の計算の内だとしたら、完全にプランBに移行した瞬間じゃない?
私にとって彼というのは、意地悪な態度で私を苦しめるけど私が本当にピンチになった時は助けてくれる存在だと思っていた。
でも、私が殺人の容疑者となり、逮捕されて死刑判決を受けても、彼は私に罪を押し付けて自分だけ逃げる卑怯な男ってわかってしまった。
彼がそうくるなら、私にも考えがある。もう2人が無罪になるルートは除外し、永遠に憎まれ許してくれなくても彼の身体を手に入れるルートに焦点を定めたのではないだろうか。キリスト教は自殺は地獄行きだから、彼の自死は免れそうだし…。
もし、メガネを落としたのがわざとでなければ、私の二面性を感じて恐ろしい。本気で焦りながら、同時進行で、この状況をどうやって組み込んで彼を手に入れるか考えてるってことでしょ。怖い。

1:03:45~ ピアノがいい。というか、伴奏が激情にあふれててすごくいい。最後に歌がユニゾンになるところも合わせてステキ。

<54歳の私>
裁判官の言葉により、当時の調書がほとんど残されていないことが明かされる。
しかも残っている調書は私の主観が入りまくってるってこと? それは54歳私も「重要じゃない」って言うよね。
私は、この事件について猟奇的というレッテルを張られるのは抵抗がある。彼との思い出だから?
私「あんなに早くわかるとは」薄ら笑い。さすがに簡単すぎたかな、って苦笑にも思えた。私と彼は天才で、彼はあからさまに周りの人間を馬鹿にしていたけど、私も本心では周りが馬鹿に見えていた。それが私の本性なんだろう。

<19歳の私>
私は警察で取り調べを受けて、尋ねられるがままに答えている。(メガネのこと)
私の父親は有名人。上流階級かな。地元の名士?
彼は自分のことを弁護士だと言う。逮捕されたあとで私と口論するときに「お前って弁護士みたいだな」って悪口に使ってるのに、そのあとで優秀な弁護士に死刑回避してもらって「あんな弁護士になりたかった」とも言ってて、彼って言ってることが二転三転するのね。信用できないね。
私が警察の取り調べでごまかせないから、彼は自分の名前を出すなって、ここでも保身しか考えてない。
でも、怖がる私に対しては言い訳を考えてやるような変な面倒見の良さが出てる。優しいのかな…中途半端な優しさ…ずるい。

M17◇I’m Trying To Think あの夜の事

♪誰かそこに居たか この彼のポーズが逆転裁判のキャラのポーズっぽくて(プレイしたことない)かっこいい面白い。
ずっと彼のフレーズを私が追いかける輪唱の歌で、ときたま私が彼を追い越すと彼が褒める。
手つなぎ押しくらまんじゅうはどういう意味? またニーチェ…。
彼をバックハグするのに俺との関係を話すなとかいうのはずるいね。

1:11:25 ここの私の独唱は警察での取り調べなのかな。
ちらちら見上げながら一瞬頬に笑みが浮かんでるところ。

<54歳の私>
次の朝、警察で取り調べを受けたというセリフ、これはさっきの独唱シーン?

<19歳の私>
公園で彼と落ち合う私。ずっと保身しか考えてない彼が卑怯。
私が褒めてって言ったら、彼はよくやったって言った後で階段を蹴って激怒してて、勝手だ~。
彼「俺を巻き込むな」って、彼が私を巻き込んだくせに~。
私はオドオドしたふりをしながら、新聞に証拠が発表されてるとか、私が疑われてたら釈放されてないとか、彼のことを煽ってて面白い。
彼は笑いながら私を責めるのね。
1:15:15 彼は私を切り離したい。私は彼にすがりたい。
私は契約書の存在を持ち出す。彼は私を見捨てる。
私は感情が爆発して、自首するって彼に言ったら、二度と会わないって彼に言われて私はすごく悲しそう。
彼に、「おまえは最低だ」って言われて、ここも判断が分かれるところ。
計算づくでここまで来た私だったら、「最低だ」はそれはそうって我に返ってる。結果的に彼をハメるための策略であればなおさら。
計画なんか本当は無くて、ただ彼に尽くしてただけの私だったら、ここでの彼の「最低だ」発言がトリガーになるよね。彼を離さないためには絶対に彼と共倒れの道に進むしかないって思う。

M18◇Reprise:Way Too Far 戻れない道(リプライズ)

「禁じられた森」「道に迷う」(ホグワーツかな)
いよいよ私のクライマックスが来て、最後の切り札を使う。死刑か終身刑のどちらかしか道は無くて、ある意味、賭けでもある。

<54歳の私>
彼はどうせ私がビビってやめるだろう(または、いつものように彼の言いつけを守って、自分だけ罪に問われるだろう)と思ってただろうけど、私は本気だった→自首した。
私はずっと拘置されてて、そこへ彼が逮捕され連行されてきた。私の悪い顔…。
彼の愕然とした様子、憔悴した姿と、現状が理解できないと言った顔、乱れた前髪(大合格!)。
彼「この裏切り者」 この、って言ったときに声が裏返ってて、わざとかたまたまかわからないけどめっちゃ合格の札を立てたわ。
落ち着いた私と動揺する彼の対比がまた良い。
彼「酒で酔わされて脅された」 (何されたつもりです?)

私は証拠保全をしていて、なんだったら過去の盗みや放火の証拠も残してる。私ってパワハラ受けたらボイコ持ち込んで録音するタイプかな。パワハラとかいじめってスマホや日記に毎日記録するだけでも証拠になるらしい?
当時の警察は遺体と容疑者を結びつける証拠を揃えられなかった。だから、私の自白をもって証拠とし、私は司法取引をして全部喋ることで刑を軽くする方向に持って行った。彼のことがなければ執行猶予付き実刑2~3年で刑期を終える手筈だった。
(私はあくまで幇助犯か従犯であり、実行犯は彼だから刑の重みが違う)

私「僕はなんにもしてなかった」 (子供のころの夏休みを思い出すわ…最終日…)

それを知った彼「本気で裏切るつもりなんてなかった」(めっちゃ嘘)
私ももう負けてなくて、自分は本当のことを話しただけって言い返す。

1:22:34 そしたら彼は私に向かって「まるで弁護士」って言い捨てるけど、褒めてるようには思えない口調なのがよくわからない。侮辱してる?
彼の過去に、弁護士的な立場の人と、何かあったりする? 彼も私も法学部(飛び級で入れる大学で法律を扱ってるのって当時のイリノイ州ではシカゴ大くらいだったから。実在の事件もシカゴで起きたことらしいし)だから、進む道は法曹関係のはずで、もしかして彼の父親って判事?(判事と弁護士では判事のほうが難しいから弁護士を馬鹿にしてるのかも)

私はとどめに「僕と君とは違う判決になりそう」って煽りを入れてきて、やりおるわ…ってなった。

M19◇Keep Your Deal With Me 僕と組んで

1:23:15 彼~~~~~~~! 
助けてくれ、とか、謝るとか、信じてとか、俺を捨てる気かとか、行かないでとか。
私はこの言葉を聞きたかったよね。でも実際に彼の姿を見て、言葉を聞いたら、むなしさが込み上げてきて泣きそうになったんそれで彼のほうからキスされて、彼に誠実さは全然無くて、嘘ついてるってわかった。
彼は嘘ついて私に媚びて、そうして欲しかったのは確かだし、惨めな彼を見て嘲笑ってやるって思ってたかもしれないけど、私は泣いてしまった。彼がそういう男だってわかってたのにね。辛いね。
私「わかった、なんでもしてあげる」 ころっと態度を変えるよね! 彼…許すまじ…。
弁護士に頼めとか、強くなれとか、俺がついてるとか、どの口が言う? って思った。
未練がましく彼の背中を目で追う私と、暗闇に消える彼で、また元通りの彼優位の関係性に戻った(と、見せかけたシーン)。

<54歳の私>
私の笑みって、拘置所で苦しんでた彼を思い出してるよね。
呆れてたのかな。年を取って、彼の浅はかさを何度も思い出して、何も感じなくなった笑みかな。

M20◇I'm Afraid 死にたくない

舞台を2つに分断して、照明を落とす枠の中を監房として表現してる。
判決前夜の2人の話で、ここで初めて彼の弱さが全面に出てくる。
叫んで髪をかきむしり、かと思えば我に返って声が死んでたり、また狂乱状態になって暴れ、必死に逃げる手立てを考え、無理だとわかり絶望に陥り、そういうことを夜の間延々とやってる彼の隣の監房で寝た振りをしながら笑顔全開の私っていうのが面白かった。カメラは私の笑顔をフレームに捉えるべきだったと思う。
彼の絶望のあがきが良かった。最高過ぎた。前髪の乱れが大優勝だった。
眠れないとか、死にたくないとか、そんな感情が彼にもあったんだねえ、ニーチェの論説と真逆の存在だね。

<54歳の私>
判決が出るまでしんどかったって言ってたけど、ここまで仕組んできたのに最後の最後でこけたら最悪ってこと? こけるってつまりどのような形でも彼と別れ別れになったら嫌だったってことかな。

<19歳の私>
1:31:04 護送車の中で、前夜あれほど身もふたもなく痴態醜態を見せたくせに、まだ強がる彼を言葉で追い詰めて精神崩壊させていくシーン。名場面ですね。
wikiに書いてたけど、罪を認めなかったら裁判員裁判になってしまう。国民感情は彼と私に対して憎悪一辺倒だから、そうなったら確実に死刑になる。だが罪を認めて有罪を受け入れたら裁判官の判決次第となり、弁護士次第で死刑を免れる確率が上がる。
状況証拠はあるって話だけど、被害者と加害者の間に利害関係が認められなかったから殺意の証明が出来なかったとかそういうことなのかな。
この期に及んで彼は「自分たちを弁護した弁護士は最高だった。俺がなりたかったのはああいう弁護士だ」って謎の虚勢を張ってて、それだって本心かどうか疑わしいし、私もそんな彼のことを半笑いで見てるし、もう本心を隠さない。
1:33:19 私が彼にネタばらしをする。
すべて私の計算通りで、彼は私の思った通りに動いていた。
彼にとっては無意味な殺人かもしれないが、私にとっては必然的な理由があって、それは彼を檻の中に一生閉じ込めるため。
犯行現場に落としたメガネは決定的な証拠となった。
わざとだよ(NANAかよ)
彼と一緒に逮捕されるためにそうした。

これ、私は必ずしも殺人まで考えていなかったと思う。
このAfraidとLife Plus 99 Yearsのリズムが奇しくもワルツなんだけど、ダンスの足取りは相手が1歩引いたら自分が1歩前にでて、相手が横に1歩ずれたら自分も同じ方向に1歩ずれるのね。相手に合わせて同じステップで踊るように、彼に合わせて私は作戦を適応させていったんじゃないかと思ってる。チェスとか将棋みたいに相手のミスを誘いながら自分の最終目的に辿り着くよう布石を打っていったんじゃないかな。私は彼を手中に収めるため、何百通りものルートを考えてて、その中でも一番最悪だったのが殺人で、その最悪を彼が選択したから苦悩したんだと思う。

M21◇Life Plus 99 Years/Thrill Me(Finale) 九十九年 / スリル・ミー(フィナーレ)

証拠隠滅とか全部私に任せていたから、私の計画はあっけなく成功した。殺人はもちろん、強盗や放火についても全部取っておいたから、警察は彼のことも逮捕した。
唯一彼の支配下にあると思われた私でさえ、彼の思い通りにはならなかった。それどころか、凌駕されてしまった。
Lifeとはは終身刑のことで、追加して99年の懲役だから、実質死ぬまで刑務所から出られないということになる。
私の計画を知り、愕然としてうつむく彼に、私は「俺が怖くなったか」と追い打ちをかける。ここで初めて私は一人称「俺」になるのいいよね。

でも彼も私が思うほど単純ではないし、愚かでもない、感情面が育ってないわけでもない。
彼「君を認めよう」 彼の心が閉じた。ていうか彼も初めて? お前でもレイでもなく”君”って言ってない?
彼「君は孤独だ」 彼の愛情は完全に私から離れてしまった=私は彼から愛情を受けられないので、一生孤独になるという宣言
その歌を受けて私が返す歌が
私「離れられない」 私はもしかしたら彼の心が離れることも計算済みで、それでも物理的に彼という肉体が手元にあって誰の物にもならないことを願っていたのかもしれない。
その私の最悪の決心を知って今度こそ恐怖に怯えた彼は後退りして階段を上って、昇りつめた最後の青に追い詰め、閉じ込められてしまった。なんかこう追い込み漁みたいだなと思った。
もう彼の気持ちがどこにあるとかどうでも良くて、彼を閉じ込めておけるなら死体でも良かったのかもしれない。あと歌ってる私の首筋に虫刺されが有って痒そう。

<54歳の私>
彼と一緒にいたかったから罰を受け入れた、というのは、司法取引を中止してまで監獄に居たということであり、罰っていうのは犯罪の結果である罰もそうだけど、彼を壊したことの罰も含まれるのかもしれないと思った。考えすぎかな。
犠牲者には何の罪も無いから懺悔する。
もし、投獄されて数年後に、ほかの受刑者によって彼の命が奪われていなければ、また違う未来があったかもしれないけど、失った者について生存IFを考えたところで気持ちがしんどいから「こんな話したくない」って私は泣いたのかもしれない。
仮釈放はアメリカの刑務所満員問題があるから。
自由だと言われても哀しい顔だったのは、私にとって大事な彼が存在しない以上、居場所が変わったところで何の意味もないということ。指が解かれて手錠が外れる演出はいいなと思った。手のひらをちょうどいい具合にライトに当てないと大変よね。
所持品は小銭、金の懐中時計、煙草ひと箱、一枚の写真、高校生のころこの公園で撮った彼の写真。


訂正

私「なんでだよ」 ←(2023.11.05 訂正)これ、松岡山崎ペアを視聴した時にスクリプトを見たら「待ってたよ」だったんですが、「待ってたよ」が正解なんですか?
ま、間違えてた…?すみません(;´д`)

(2023.11.05.)とりあえず、ここから下は、「なんでだよ」と思った時点の解釈です。
このセリフについてずっと考えてるんだけど、何通りも答えが出てきて逆に分からないんだけど、何に対するなんでだよ、だろう?
私が私に対して「なんでだよ」って言ってるのであれば、若いころの彼の写真を見て、その時の純粋な恋慕の気持ちが込み上げてきて、枯れたはずの自分の感情が芽吹くことが信じられなくて、でもその気持ちをぶつける相手はすでにこの世を去っている理不尽、という意味合いの「なんでだよ」かな。なんで今更そんな気持ちにならなきゃいけないんだよっていう。
彼に対しての「なんでだよ」なら、バッドエンドになってしまった状況をもう生きていない彼にぶつけてるのかもしれない。
高校生っていうから彼と私の場合は(飛び級してるから)15歳くらい?の写真で、まだ表情が硬くて幼さの残る彼は、19歳の彼よりも段違いに純粋であったはずで、契約書なんか交わさなくても対等だったし、もしかしたら淡い恋心が芽生えたか、まだ意識の底に眠っている状態だったのかもしれない。
何もかも拗れる前の、無邪気だった時代なのかもしれない。何も間違っていないころの写真を見たから「なんでだよ」って言葉がこぼれ出たのかな。
ここまで(2023.11.059

テーマ曲が私の口からこぼれ出る。
すべての始まりに心が戻った笑顔と、そのあとの無表情で物語は幕を閉じる。

ハモリの時は上のパートを私、下のパートを彼。
メインパートは上かな?支配しているのは私ということ。
私と彼の最後の戦いで私が勝った。

青色の概念を調べたんだけど、キリスト教もユダヤ教でも救済の意味合いがあるらしい。

私の狂笑は舞台表現として客席に向けてるだけで、彼を見上げた顔だ。彼に平常心が残ってたら私を怖がったかもしれないが、なにせ今の彼は絶望で虚脱しているので響くものが無い。

カーテンコールのお辞儀で徐々に中の人の地が出てくるのがだいご味ですよね。陽キャ×陽キャのペアだからカーテンコール楽しそうで見てる方も楽しくていいです。


終わりに

ヤバい男がクズな男を好きになって離さないっていう話かと思った。
ヤンデレとツンギレ?

自由になった私の姿で物語の幕は降りた。
私にとって彼への愛は独占欲だったのかな。
彼は承認欲求が強すぎたのかもしれない。
だから弟が生まれたら父親の愛情が奪われると恐れ、弟を憎み、父親を憎むことになった。
私に対しても無意識の底で敗北感を抱いていたから(つまり私の実力を見抜いていた)嫌悪したのかも?
彼は誰に対しても絶対的な存在でありたかったが、ニーチェはそもそも「絶対」を否定していたから矛盾が生まれた。

彼は最初から最後まで劣等感の塊だった。
甘やかしてくれていた私が牙をむき、最後のプライドすら失ってしまったのかもしれない。
ニーチェの名は出てくるけど実質ニーチェなんてどうでもよくて、ただ自分で自分を愛せたら孤独に耐えられていたんじゃないだろうか。
孤独は誰しもが持つ不変の感覚だから、鈍感に生きていられなかった彼が可哀相かな。

ニーチェってつまり、超人とは全てであると同時に無である。
バオバブの木の根元であり曼陀羅の軸である。
神への信仰から解き放たれることによって自由を獲得するのが超人思想?

彼もまた私に憧れていたのかもしれない。
私の姿を超人に見立てて、愛せていたのかもしれないと思った。
私が彼に陥落し彼の愛を獲得するためのいいなりの人間になってしまって本当は不満だったのではないだろうか。
私にとって彼はルー・ザロメに重なったのでは。

何回も観てたら感情移入して涙目になっていました。私視点で観てた時は彼をどうしても捕えたかったし、彼視点だと何故だか辛かったです。

余談
スリルミーの元となった事件って小説となり、映画化も何度もされているようです。
有名どころではヒッチコックだって。つまり、さんざん擦られた実在の事件ですね。わたしは知りませんでした。

例えばシリアルキラーならエド・ゲイン、テッド・バンディ、ジョン・ゲイシーとかルーカスとか、冗談抜きで枚挙にいとまがありません。エド・ゲインやテッド・バンディあたりまでは超有名だと思う。

猟奇的殺人鬼のエンタメ化は数え切れないほどあって「羊たちの沈黙」もそのひとつです。
複数の受刑者に取材をした上で作り上げられた犯人像なので、レクター教授は存在しないが、小説に出てくる殺人事件は実在の事件をモデルにしています。遺体の皮をはいで家具を作ったのはエド・ゲインだそうです。
羊たちの沈黙にいたってはファンコとかホットトイズとかでフィギュアやぬいぐるみも出てるしTシャツやバッジも売られています。
なので、スリルミーのグッズ展開が特別というわけではないでしょう。
そもそも海外では登場人物名が固有名詞でついてるのに、日本版と韓国版だと「私」と「彼」って代名詞になってるんですってよ。なんでだろう? 普遍性を重要視したのかな。
ていうか舞台写真(ブロマイド)とかぬいぐるみとかトートってどっちかというとタレントグッズでは?
ホリプロは俳優グッズもっと出してくれやい。勇んで買うのに。


しかし11月なのに25度超えてて、暑くてカップに氷を入れたんですけど、スーパーエルニーニョって何なんですかね。
遮光カーテンで閉ざさないと汗がにじむほどの気温て…。

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