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北陸地方平野部の大雪

里雪型

非常に強い寒波により本州の日本海側から九州にかけて特に平野部で大雪となっています。海岸に近い平野部で大雪になるパターンということで、これを里雪型と呼んでいます。山岳部にくらべて標高も低く、海にも近いので、北陸以西の平野部では地球温暖化の影響を受けて気温が下がらず冬でもみぞれや雨であまり積雪が増えないことが多くなりました。里雪型の大雪自体が珍しくなってきています。里雪型の大雪となるためには、海に近い平野部でも1日中気温が氷点下となるような強い寒波が必要条件となります。

下に示すのが本日1月9日午前9時の850hPa面(およそ1500m上空)で解析された気温です。東日本から西日本にかけて-12℃程度の気温であることがわかります。

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1500mで−12℃だと、平均的な温度減率6℃/kmを仮定すると地上付近は-3℃程度となりますが、日中は日射の影響を受けますし、また海の温度も高いので海岸沿いはその影響を受けます。下の図が日中15時のアメダスの気温ですが、晴れている関東平野など5℃以上の気温になっています。雲に覆われている日本海側の平野部では大体氷点下で、里雪型の条件を満たしていることがわかります。

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次にこのような典型的な里雪型の大雪がどの程度発生しているかを過去に遡ってみてみます。

北陸日本海側平野部の最深積雪の年々の記録

気象庁では気候変動監視レポートを毎年発行しています。http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/monitor/index.html ここには世界の平均気温や日本の平均気温がどう変化してきたか、というグラフがあります。日本の平均気温の統計においては、都市化によるヒートアイランドの影響が小さく、また長期間観測が行われている15の観測地点を使っています。これによると、都市化の影響を除いても、100年間に1.24℃の上昇があることがわかります。

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特に1990年代から高温で推移していることがわかります。こうした高温化にさらにヒートアイランドの効果も加わって、都市部ではこれより大きな気温上昇が観測されており、猛暑日が激増するなどの影響が出ています。また、冬の日本海側平野部では今までは雪だったような天気図でもみぞれや雨となるなど、まとまった積雪になりにくくなってきています。

下図は冬季の最深積雪の長期的な変動を解析したもので、左が東北・北海道の日本海側、右が北陸(新潟県を含む)の日本海側の主に平野部の観測に基づくものです。どちらも長期的に減少していることがわかりますが、10年間で東北・北海道は3.2%、北陸は11.4%の減少率と、東北・北海道にくらべて、北陸の積雪の減少傾向が大きくなっています。寒いところでは1℃気温が上昇しても雨に変わることが少ないのに対して、北陸の平野部では、もともと気温が0℃に近いので1℃程度の上昇でも雨に変わってしまうことが多いと考えられます。こうした中でも2018年は北陸でも積雪が多く、前回のnoteで紹介した里雪型の大雪がその背景にありました。

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具体的に富山市の観測データで1962年以降で見てみましょう。気象庁HPの過去気象データからとったものをエクセルで簡単にグラフにしたものです。これを書いている現在積雪123cmですから、すでに1985年の昭和60年豪雪(139cm)以来の積雪になっています。さらに38豪雪は186cm、56豪雪の160cmといった記録が昭和の時代にはあります。

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次に福井市の観測データで第二次大戦後から長期間をみてみます。2018年の記録は1981年以来であったことがわかります。ただ同程度以上の積雪は昭和の時代には何回かあり、特に38豪雪で知られる1963年には2mを超える積雪となっていることがわかります。また2020年の冬に記録的に積雪が少なかったことは富山のデータも含めてよくわかると思います。今回は1mを越えようとしていますので、平成以降では2018年と2011年に次ぐ積雪となっています。

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まとめ

地球温暖化により気温が上昇、北陸の平野部では積雪も減ってきているのですが、実際の気象の変化にはそれに自然の変動が加わります。今回の里雪型の大雪は、富山市で見る限り平成以降にはなかった規模のものといえそうです。福井市では2018年と2011年に現段階の積雪より多い積雪を記録しています。

温暖化といっても大雪に油断してはなりません。少雪傾向に慣れた地域の住民にとっては、生活スタイルも変わってきていますし高齢化も進んでいる中で昭和の豪雪以上の社会インパクトがあるのかもしれません。一方、温暖化が進む中で、今後もこのような里雪型の大雪がどの程度発生するのか、こうした研究も進めていく必要があることを痛感しました。

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