見出し画像

里雪型? 過去から学ぶこと

2021年1月上旬寒波

2年続いた暖冬傾向からこの冬は12月中旬の寒波に始まり冬らしい天候が続いています。今週後半は、さらに強い寒波がやってきそうな予測となっています。気象庁のHPの数値予報天気図http://www.jma.go.jp/jp/metcht/suuchi.html から6日の00UTC(日本時間09時)を初期条件とする72時間先、9日の日本時間9時の数値予報天気図を見てみましょう。

画像1

冬型の気圧配置というと、等圧線の縦縞模様が特徴的です。その縦縞が密になっていると北西風が強く吹いて日本海側は暴風雪、関東平野などはからっ風という天気になります。下の図は昨年の12月15日9時の天気図です。九州から関東にかけて5本の等圧線が縦にきれいに並んでいます。この日、群馬県のみなかみ町藤原では1日で積雪が115cmも増えるという記録的な大雪となりました。このように密な縦縞の等圧線が並ぶ時には新潟県と群馬県の県境付近のような山岳部で大雪となることが多く、「山雪型」と呼ばれます。

画像2

ところが最初に示した天気図では縦縞があまり顕著ではありません。縦縞というよりもふにゃふにゃと曲がっているのも特徴的です。気圧が500hPaとなる高度が等しいところをつないだ天気図を見てみると、日本付近が大きな谷間のように低くなっています。5400mの高度線が九州南部から日本の南海上を通っています。

画像3

これは、日本付近がすっぽり冷たい空気に覆われていることにも対応します。850hPa面(地上1500m付近)の気温の予測を見てみましょう。

画像4

地上で雪となる目安の−6℃線は九州の南まで下がり、大雪の目安となる−12℃線が九州から紀伊半島にまでかかっています。このように日本列島が冷たい空気にすっぽり覆われるなかで、最初の天気図のように密ではない等圧線、このような時には日本海側の平野部、沿岸部で大雪が降りやすく、里雪型と呼ばれています。実際に72時間後の地上天気図の予想には降水量の予想も描かれていて、朝鮮半島の付け根付近から能登半島付近に向けて降水の多い領域が帯状に連なり、日本海沿岸で強い降水も予測されています。この強い降水域ですが、JPCZとも呼ばれて日本海側平野部での大雪の主な要因となるものです。九州にもやや強い降水域が出ていますね。

なお、最初に示した天気図は9日午前9時段階のもので、7日8日は全国的に強い風が吹き荒れて暴風雪になる地域もあることも念の為追記しておきます。

2018年の里雪型大雪

福井や金沢、富山といった都市部では、昭和38年のいわゆるサンパチ豪雪では2m前後の積雪になりましたが、近年では地球温暖化の影響もあり、積もってもせいぜい数10cm程度で、毎年のようにそのような冬が続いたことから、北陸の都市部自体が雪に脆弱になっています。2018年に珍しく里雪型の大雪があり、福井では37年ぶりとなる130cmを超える積雪となり、交通、物流が大混乱したのは記憶に新しいかもしれません。

2018年の上空の天気図を見てみましょう。こちらは気象庁のHPではなく、デジタル台風の100年天気図データベース、http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/weather-chart/から掲載しています。

画像5

さきほどの500hPaの予想天気図と日本付近の谷の様子が似ています。5400mの等高度線も九州南部から日本の南海上に伸びています。

今週末に向けて

ということで今週末にかけて要警戒であることは間違いありません。救いとしては、ようやく一連の寒波も終わりが見えつつあることです。しかし、今までの積雪にさらに大雪が加わる地域もありますし、交通や物流などは集中的な降雪による影響で大変なことになりますので、国土交通省と気象庁と連携して地方レベルも含めて警戒が呼びかけられているとおり、それぞれの地域に応じた対応をお願いします。

過去を識り、それを未来に活かす

いままでnoteへの投稿の多くは、過去を識ることで今そして未来に役立てようという趣旨で書いています。夏の間は、台風や豪雨に関連してその趣旨で投稿しました。デジタル台風の100年天気図データベースを活用させていただいていますし、その取り組みを高く評価しています。

この発想も含め研究計画として、JSTの共創の場形成支援プログラムに提案しました。それが昨年12月に採択されて、研究がスタートしたところです。https://www.jst.go.jp/pf/platform/file/r2_saitaku_gaiyou.pdf

10年計画の息の長い研究プロジェクトですが、過去を識り、今を理解し、未来を共に創る、というスタンスで、過去の気象データを改めて整備するとともに、気象データを産業界、地方自治体等で利活用推進し、それが国民生活さらには国の力として少しでも貢献できればと考えています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?