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磁気嵐と地磁気観測

地磁気の嵐により、低緯度でもオーロラが見えたということで世界でニュースになりました。日本でオーロラが見えるのはロマンを感じますが、一方では、情報通信の発達した現代、磁気嵐が社会に及ぼすリスクが心配であるのも確かです。こうした問題意識から、宇宙天気予報とも呼ばれる情報提供が進められるようになりました。
宇宙天気予報は、気象庁ではなく総務省所管の情報通信研究機構(NICT)の担当です。最初は、気象庁地磁気観測所のニュースが目立っていたのでちょっと気になっていましたが、真打ちのNICAの記事が次第に増えてきました。なんでもまず気象庁に報道機関が問い合わせるというのもあろうかと思います。まあ、磁気嵐とか宇宙天気予報という言葉自体、気象の世界からのアナロジーになっています。下記はNHKの記事のリンクとなります。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20240511/1000104492.html?fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTEAAR1WBwbG_3iz1HA6UC0sG2aBkngNSpbIccb8d8R81dUF6oF37vE8k6y6oDo_aem_AU-R9jmIsPC5xbwHxhhvY3pUPN2X-iGb3cy0Sex4SVTW2A70g7QA8-uPsMuk3Ho1fY36R5mnG7lVO_319PckoIFt

情報提供はNICTの担当である一方、気象庁の地磁気観測所はひたすら地味な観測を継続しています。茨城県柿岡の観測所で100年以上の観測データが得られていることで、今回の現象が過去と比べてどの程度なのか、という情報が得られるのは貴重です。
この観測所、もともとは都内にあったのですが、大きな直流電流が流れる電車施設が増えてきたことなどから、都内では地磁気のノイズのレベルが高まり、大正元年(1912年)に茨城県石岡市柿岡に移転しました。
電流が流れるとその周りを回る磁場が発生します。この磁場が自然の地磁気の観測にとっては、人為的なノイズとなってしまうのです。電流の流れる方向が細かく切り替わる交流だとノイズは小さくできることから、この地域を走る常磐線やTXなどは交流電源を駆動力としています。鉄道ファンにはレアな施設や車両があることから、嬉しい面もあるのかもしれませんが、茨城県の交通ネットワークに少なからず影響を与えている面があります。
このような規制の根拠になっているのは、電気事業法の基づく電気設備に関する技術基準を定める省令の第43条にある下記の記載です。
「直流の電線路、電車線路及び帰線は、地球磁気観測所又は地球電気観測所に対して観測上の障害を及ぼさないように施設しなければならない。」
法令でこのような規制を設けたおかげで今の観測品質が維持できているということになります。気象庁の気象観測がさまざまな人為的な影響で品質の維持に苦労している現状もあり、他の気象観測にもこんな規制があればいいのに、というのは観測側の論理ですね。

石岡市柿岡の気象庁地磁気観測所



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