彼の話-4

彼は自分の好きなものについて考え始めた

彼は週刊少年ジャンプが好きだ。初めて読んだのは小学五年生だった。兄が買い始めたのでそれを読んだ。面白かった。わくわくした。毎週新しい物語が読めること。自分の想像を超える面白さに出会える。新しいものに出会える。それがたまらなくうれしかった。大人の階段を登った気がした。

→彼は常に知らないものを知れる喜びを得たい人間なのかもしれない。

彼は逆転裁判というゲームが好きだ。逆転裁判は力で相手をねじ伏せるゲームではないからだ。確固たる証拠があって相手を追い詰めるからだ。また、絶対にクリアできるゲームである点も好きだ。分からなければ全部突きつければ正解するからだ。彼はクリアした逆転裁判を何度もプレイした。理由は何だったのだろう。多分、知っている世界で同じことをすれば楽にクリアできるからだ。彼は簡単にクリアできる爽快感を味わいたかったからなのだろうか。また、逆転裁判に出てくるキャラクターに会いたくなりゲームをした。彼らは犯人だろうが証人だろうが皆個性的であった。彼らのリアクションが見たくて何度もプレイしてしまった。また、犯罪を犯す理由も人ぞれぞれで本当に自分を守るために犯罪を犯す人もいれば家や他人を守るために犯罪を犯す人もいた。そこに人間の哀愁と可笑しさを感じた。リアリティーとフィクションがちょうどよい具合に混ざり合っていた。ちなみに彼は逆転裁判3のサーカスの話が好きだ。物語としても逆転裁判1~3までは本当に面白い。6も結構好きだ。大逆転裁判も結構好きだ。逆転検事は2はとても面白かった。やはりゴドー検事が好きだ。かっこいい。

→彼は人の人生経験を聞くのが好きだ。理由は面白いからだ。今のその人になるまでには様々な理由があって今のその人になっていると考えるからだ。出来れば成功話より失敗した話のほうが面白い。失敗話は笑いに変える以外の成仏方法が無いからだ。これも逆転裁判からの影響だったとは。彼もオドロキである。

彼はスティールボールラン(ジョジョの奇妙な冒険 第七部)という漫画のジャイロ・ツェッペリンが好きだ。理由は彼が納得を何よりも優先しているからだ。自分の先祖代々の仕事に誇りを持ち、技術もあるのに命がけのレースに繰り出す。ジャイロは死刑執行人として働いてきたのだが死刑になる予定の男の子の死刑に疑問を持った。その子を助けるためにレースに参加した。可哀そうだから助けたいという気持ちはもちろんあるだろうがそれよりも自分が納得できないから助けたいのである。そこが良い。

→彼も納得できないことはずっと心の中にしこりが残るタイプだった。ジャイロのようにな考え方に共感してしまう。

彼はお笑い芸人が好きだ。彼は人が笑っているときの空間には不幸な人間が少ないからだ。人をバカにする笑いは好きではない。純度の高い笑いには素晴らしい価値があると思う。そして人の笑いを生み出すお笑い芸人というものはなんて崇高な職業なのだと考えていた。また、彼はお笑いという生活に無くても困らないものに魅力を感じている。

→彼は殺伐な空気が苦手である。彼自身の心が疲れてしまうからだろう。だからお笑い芸人が好きなのである。

彼は音楽を聴くことが好きだ。音楽は良い。あれも聞いているときに不幸な気持ちにならない。それどころか不幸な記憶も音楽がつくと不幸じゃなくなる。まるで魔法のようだ。彼は音楽を演奏してみたことは何度かある。ピアノを八年間ほど習っていたが全く身につかなかった。そして、小学生の時はトランペットを演奏し中学ではチューバを吹き、大学時代はトロンボーンを吹いていた。だが、一向に上手くはならなかった。演奏はあまり好きではなかったのかもしれない。

→彼は音楽の作り出す空間が好きだったのかもしれない。あの空間は人を幸せにしてくれる。そう思っていた。

彼は家族が好きだ。今まで育ててくれたことに感謝している。彼は親を愛している。親には幸せになってほしい。


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