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住宅営業マン、鉄骨メーカーにフルボッコに負ける

私の場合、過去数年でいうとプラン見積の段階で競合なしでの受注が半分、複数社と相見積になっていての受注が半分くらいです。

最近は法人からの紹介が増えたので、相見積が増えてきているので、他社の優秀な営業マンに負けないように、日々勉強しています。。。

当然、日々お客様から見比べられている訳ですから、お客様が他社を選択してさようなら、なんていうことは日常的にあります。

自社の建築に自信があり、設計士まで指名して挑んでいる勝負ですから、負けると間違いなく自分のせい。

負けた後は未だに3日は凹みます。

そんな私が、鉄骨メーカーに叩きのめされて、しばらく立ち直れなかった一組のお客様のお話です。


母子で来場されたO様

O様は女性一人で息子さん二人を育て上げた立派な方で50代、ご子息二人は20代の3人家族でした。

築30年を超えたお住まいを建て替えて、3階建て屋上付きの家がほしいという要望でした。

来場されたO様と次男様は建てる気満々、モデルハウスの部材一つ一つを確認されていました。

「これは絶対建てるお客様がきたーー!!」と緊張しながら接客をして、色んな質問をしていきました。

そんな会話の中で、ふと「どうしてたくさんある会社の中で当社にご来場いただけたんですか?」と聞いてみると。。。

「(鉄骨メーカー)に今プランと見積を頼んでいるんだけど、他の会社も見たいって言ったら、隣のおたくがデザインもいいし、オススメだって言うものだから。」

な、な、なんだこの当て馬感は。。。

察しの悪い2年目の私でも体勢不利を一発で自覚できる一言でした。

しかし、今月中には当社か鉄骨メーカーで結論を出すと言われてしまうと、乗っからざるを得ないのが弱い営業マンの宿命。

来週プランヒアリング、再来週にはプランと見積を出す約束をしてしまいます。

スルッと進捗していくヒアリング

この時期の社内は、東日本大震災後、4月に上司もチームもコロコロ変わり、十分に相談できる空気はありませんでした。

「今月中にはジャッジされるとはおっしゃってて。。。」

数字に困っている私は、当て馬感を感じていると言い出せず、今月契約判断ができるというポジティブな報告だけをして、設計士を確保してしまいます。

プランヒアリングには、次男様と同い年の設計士を連れていきます。

その作戦はうまくいき、盛り上がる打ち合わせ。

「あれ?なんかこの雰囲気いけるんじゃ?」と思わせる空気感でした。

「それでは来週にプランと見積をご提示させていただきます」

「来週は長男も連れていきます。結構細かいこと気にするタイプだけど、頑張ってね。」

よし!今まで会えていなかった長男様にも会えれば、リアクションがきちんと伺える!

私はそこで謎の自信をもってしまいました。

そう、これは地獄のはじまり。。。

長男様のターン

日が暮れたモデルハウスでの商談でした。

初めてお見えになった長男様に丁寧に挨拶し、早速プラン説明をします。

担当した設計士は、とても理性的に整理されたプランをつくるのが得意な先輩でした。

説明もわかりやすく、すっきりと広々した間取りにお客様も笑顔が見えます。

続いて見積説明。

先輩からは、「(鉄骨メーカー)は高いから、こっちが多少高くたって大丈夫だからビビらず堂々と説明してこい!」と言われていました。

順番に上から項目を説明し、一気に総額・値引き条件まで説明。

「このまま当社で進めていただけませんか。」

今思えば、これがはっきりした私の人生初クロージングでした。

そこからしばらく沈黙が流れます。。。

クロージングをしてからの沈黙は恐い。

でも、ここで口を挟むとよくないと先輩から習ったばかりなので、唇噛みしめて我慢します。

「質問させて頂いてよろしいでしょうか。」

口を開いたのは長男様でした。

「私は今まで仕事の都合でおたくの打ち合わせには参加していなかったですが、プランはとても素晴らしかったです。」

「ただ、性能面について説明を聞いていないので、おたくの耐震、耐火、保証とメンテナンス周期を教えてもらえます?」

めちゃくちゃ嫌な予感がしました。

プランと見積を一気に説明したのに、そこについての質問が出ずにいきなりスペックの話。。。

「それでは説明をさせて頂きます。」

手元のアプローチブックを開きながら、耐震の説明からスタートしていくと。。。

長男様「ちょっと待ってもらっていいですか、(鉄骨メーカー)から、木造だと~~」

長男様「すいません、(鉄骨メーカー)だとそこは~~」

長男様「(鉄骨メーカー)の担当は大事なポイントと言ってたのは~~」

長男様のターンが止まりません。

私の説明に対し、ことごとく反論・論破していきます。。。

(知識のついてきた今では、きちんと回答できるような質問ですが、当時の私は説明を即座に反論される経験がなさすぎて、半べそでした。)

「それじゃ、持ち帰って来週中に返事するね!」とO様。

「は、はい、ありがとうございました。。。」HPゼロで見送りもままならない私。

失意のまま商談は終わり、答えのわかりきった返事を待つという屈辱の体勢になってしまいました。

数日後の朝イチ、O様からお電話を頂きます。

「あー、朝からごめんねー!この間はありがとうね、うちの息子面倒だったでしょう?でもおかげでね、しっかりと決意しました!(鉄骨メーカー)にします!ごめんね!」

寝ぼけ眼でとった電話で、矢継ぎ早に断りのお電話をいただき、ショックが大きすぎて、全く受け止められませんでした。

ここから10日ほど、本当に具合が悪くなりました。

病は気からと言いますが、心が傷を負いすぎると、体がしっかり変調をきたすことを体感した最悪の2週間でした。

この1棟から学んだこと

1、苦手な建築計画はジャッジを明確に

当社では三階建ては問題ないのですが、屋上になると金額はどうしても高くなり、鉄骨メーカーと比べると不利になることは目に見えていました。

その他にも、鉄骨メーカー先行だったために、要望の端々から鉄骨メーカーがウリにしているアイディア・デザインがあり、当社らしさが出しにくい展開でした。

ここで、「当社なら当社らしくこんな提案はいかがでしょうか。」と切り返していれば話は全く違ったと思います。

当時の私はそんな知識も度胸もなく、お客様の言うままに鉄骨メーカーの土俵へと上がっていきました。

あまりにも自社との相性が悪い計画の場合、最悪最初からこちらから辞退してもいい、そんな強さが営業マンには必要かなと最近は思っています。

2、お住まいになる家族のご意向は、なるべく早く押さえる

今回の一番の盲点は、きちんと長男様の性格や意向を早めに押さえていなかったことです。

プランと見積を出すまでに、その他のスペック面のご不安ごとなどは営業マンが解消すべきでした。

これもキーマンを読み違え、O様と次男様さえコンセンサスがとれればいけると踏んだ私の甘読みでした。

3、営業戦略ってものがある

ここまでお読みになって、営業経験のある方はお気づきになったでしょう。

これは全て鉄骨メーカー営業マンの素晴らしい案内・手のひらの上で私がころころ転がったという話です。

鉄骨メーカーの営業マンは、きちんとお客様に建築計画と、自社の建物の相性の良さを説明しています。

その上で、お客様に「当社で任せてもらえないか」というテストクロージングをかけ、「他社も見たい」というお客様の本音を引き出しています。

そこから、「(私の会社)がいいですよ」と競合先を指定し、その会社をすすめるポイント(私の会社のストロングポイント)を案内した上で、「ちょっとここが気になるかな」なんていう風に、私に難しい質問がいくように示唆する。

そうすると商談でお客様は私にスペックの質問をし、私は誘導されたかのように私の会社のストロングポイントを喋ると、「ちょっとここが気になるかな」と示唆された質問がお客様からくる。

そこに私は慌てて返事ができず、お客様は「(鉄骨メーカー)の営業マンの言うとおりだ!」となって勝負アリ。

これを読んであなたは卑怯だと思いましたか。

私は全くそうは思いません。

きちんと彼らはお客様と向き合って、自分たちの建物がお客様に最適だというプレゼンをし続けています。

その上で、他社をみたいというお客様の希望に合わせてスケジュールを組み、他社の勉強までしているからこそ、質問すべきポイントまでアナウンスできています。

悪いのは自社の突っ込まれやすいポイントに無自覚で勉強を怠ったがためにお客様に自社製品の素晴らしさを伝えきれなかった私だと思います。

こういった競合していくなかでのテクニックは色々あるようです。

私自身は油断すると口が悪くなるので、他社のことはあまり勉強せず、商談でも最低限しか触れないようにして、「お客様に嫌われないようにしとこう」という方針です。

しかし、緻密な営業マンたちは、常に戦略の応酬だったりします。。。

そうは言っても、他社のことばかり意識して、お客様の顔が見えていないと気持ち悪い悪口営業マンになってしまう。

そういった意味で、この鉄骨メーカー営業マンは、お客様にベストな提案をする対応力と、他社に負けない戦略性を兼ね備えた優秀な営業マンだったのかなと思います。

これからもたくさんの商談で競合していきますが、どこよりも「お客様のためになるお手伝いをしているのは我々だ」と言い切れる準備をしたいものです。

ではでは。

↓新人時代に経験した東日本大震災の話はこちら


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