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モバイル端末で縁石のような段差を点群化する:②

Part 1は、こちらの記事をご覧ください。

PIX4Dcatchで坂道にある縁石の段差を鮮明に点群化する試みを行い、良好な結果が得られましたが、改めて平らな場所にある縁石で再撮影しました。

簡単に撮って帰るはずが、オートタグを設置してみたり、違う撮影パターンを試してみたりと、ちょっと試行錯誤したので、その過程をご紹介します。

フラットな路面でリベンジ

ということで、いい感じの縁石を見つけたので、早速グリッドパスで撮ってみます。

「グリッドパス」で撮影

さて、点群は?

「グリッドパス」で撮影したときの断面

。。あれ??
なんか違う。。さっきまでの感動はどこへ。。
ノイズというか、2重化が発生していますね。どうやら、上下のパスでカメラを動かしましたが、画像同士で上手くマッチングができていないようです。

とは言っても、1目盛は1cmなので、点群の2重化を受け入れたとしても、全体の厚さは2cmなので、モバイルの計測としては悪くないという説もありますが。。。でも点群マニアとしてはちょっと納得いかない。

原因はこれか?単画像を見ると模様が難しい

原因としては、路面の細かいマダラ模様が悪さをしているのだと思います。SFM処理をかけるときは、複数の画像に写っている画像の特徴的な要素を見つけてマッチングを行うのですが、マダラ模様だとどこを見ても同じような感じなので、そっくりな画像がいくつもあるようだと難しかったようです。

リベンジマッチ:オートタグを設置

特徴点が現場にないなら、自分で置くスタイルで行きます。

オートタグの設置例

オートタグを設置すると、PIX4Dcatchのアプリが存在を自動で認識して、画像の後処理をかけるときに、各画像の「そこの位置は全部同じ場所だ」ということで位置を合わせ込みます。そのため、各画像同士のマッチングをより正確に行います。

撮影経路とオートタグの設置位置

オートタグを設置した位置は、上の画像の通りです。幅8m程度の計測範囲に、8枚のタグを設置しました。前回と同様に、「グリッドパス」スタイルで撮影していきます。

「グリッドパス」・オートタグありの場合の断面

やった!あの感動が再び、という感じです。点群の2重化もなく鮮明に段差を捉えています。しかも、点群の厚さも、3-5mm程度になりました。オートタグのおかげで特徴点が難しい場所でも正確に点群化できました。

余談:横向きに動いて段々にすると?

今まで、ずっと上下に動いて、少しずつ横に進んで撮ったのには、訳があります。というのも、同じ箇所を何度も違う画角で撮影すると、点群の2重化リスクがあるからです。例えば、8m一気に右に進んで、一段変えて8m左に戻って来ても、最初と終わりでマッチングができないリスクがあります。

横に動いて複数段もトライ

ただ、オートタグを設置しているので、多少いい加減な動きをしても、正確にマッチングします。そこで思い付いたのが、一気に横に移動して何段かに分けて撮影するスタイルです。

点群化処理してみましたが、先ほどの上下のグリッドパスと特段違いないように見えます。この動きを行う場合は、オートタグは必ず設置した方が良いと思います。

横に移動しながら撮影・オートタグありの場合の断面

この横に大きく動くスタイルのほうが、何度も立ったり、しゃがんだり、が不要なので、撮影するときは楽でした。

いずれのスタイルも、点群の厚さが3-5mmに収まる結果となりました。Part 1でも触れましたが、路面切削工の鉛直方向の測定精度は±4mmです。点群の厚みが5mmなので、生成された点群から座標を読み取る精度は±2.5mmと解釈しても良いと思います。読み取り精度は良いとして、あとはどれぐらい点群全体の精度を担保できるか?恐らく、標定点をたくさん設置すれば高精度にはなりますが、そこまですると「点群化が目的化」してしまいますね。

まとめ

ということで、微妙な段差をどれくらい鮮明に撮れるかの実験でした。
結論としては、一直線上で歩いても、それなりの点群は作れる。ただ、最上級な点群を作るためには:

  • ドローンで言う「グリッドパス」のようなスタイルで撮影する。

  • 特徴点の抽出が難しそうな場合は、いくつかオートタグを設置する。オートタグを設置すると、ユーザーの動きの制約が少しシビアではなくなる。

というところになります。もし段差の最上級な点群を作るときは、試してみてください。

「3次元計測技術を用いた出来形管理要領」の「第4編 路面切削工編」への使用はかなり攻めすぎ(というかあまり現実的ではない)ですが、そのレベルの点群は作ろうと思えば作れるという印象を受けました。



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