兄 の願い
家近くの坂を上ったところに廃神社がありました。いつも人の気配がなく、行事で使うこともない寂れた神社でした。
夏、田舎のおじいちゃんの家に遊びに行った俺は、近所にある神社に遊びに行っていました。隣の空き地に大きな葉っぱと落ちていた木の枝で秘密基地を作ったり、神社の床下の蟻地獄にアリを落としたりして遊んでいたのを覚えています。
男の子っぽい遊びは嫌でしたが、私は兄といつも一緒にいました。他人と会話するのが苦手な私を気にかけて、いつも二人で遊んでくれました。でも、男の子っぽい遊びばかりだったのは、ちょっと嫌だったなぁ。
ある日、神社でお願いすることになりました。俺はなんでお願いしようと思ったのか思い出せないけど、何か適当に、お祈りする形だけ取っていた気がします。
一緒にお願い事がしたい、と言った私は『ずっと兄と一緒に居られますように』とお願いしました。兄にはたくさんの友人がいましたが、私には兄しかいませんでした。我儘なお願いだとはわかっています。
その日の帰り道は、なんだかいつもと違うような気がしました。いつもよりセミの声が大きく聞こえました。普段しないことをしたからでしょうか?揺れる草木が人影に見えてしまうような不気味さに怯え、俺は速足で家に帰りました。
その日の帰り道、私は兄に何をお願いしたのか聞いたのですが、兄は教えてくれませんでした。いつもは私に歩幅を合わせてくれる兄がどんどん先に行ってしまうのが少し寂しくて、半べそで後を追いました。
その日から、少しだけ奇妙なことが起きるようになりました。話し声や物音が聞こえたり、何か忘れているような感覚がずっとあったり…俺は周りに相談したけど、親やみんなは気のせいだと言っていました。
なんで無視するの?
俺は幽霊や霊感なんて信じていません。死んだ人が幽霊になるのだとしたら、世界中が幽霊でひしめき合うことになってしまいますし。そういうのは嘘か、興味を引いてもらう為の話題作りだと思っています。
なんで無視するの?
今は、普通の生活に戻れていると思います。大人になってから一度、あの神社を見に行こうとしましたが、聞いた話ではすでに取り壊されて更地になっているそうです。
お兄ちゃんは何を願ったの?
兄妹ですか?俺は一人っ子でした。隠し子だとか腹違いだとか、そんな話も聞いたことはないです。
なんでそんなこと言うの?
なんで?
神社はまだ、そこにあるよ
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