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姓名判断の「吉名」は幸運を招くってホント?

姓名判断は流派が違うと吉凶が反対になることがあります。後悔しないよう、特定の流派を信じる前に、その流派が他の流派に比べてどれだけ信頼できるか、自分自身でよーく調べたほうがよいでしょう。

でないと、「期待はずれ」を通り越して、とんでもなく高い代償を払うことになりかねません。

安易に誰かのお勧め流派に飛びつくなどは論外です。わが子に大凶名をつけてしまったり、ただでさえ低迷気味の運気がさらに悪化したり、「知らなかった」では済まされない事態に陥る恐れがあります。もちろん、名前が人の運命に影響するとしたら、という仮定の話ですが。

●姓名判断はお手軽な呪術?

東洋でも西洋でも占星術は出生の年・月・日・時間で占うので、運命は基本的に「決まっている」と考えます。生まれた日時は変えられませんからね。開運の余地はあるにしても、運命の範囲内に限定されるわけです。

一方の姓名判断は、占星術があきらめている運命すら「変え得る」と考えます。しかも、自分の努力とは無関係に、名前の魔力だけで開運しようというのです。そんなお手軽で都合の良い「占い」(というより、もはや「呪術」)が本当にあるとしたら、利用しない手はありませんね。[注1]

「運命を変えたい」というのは、万人共通の願望ではないでしょうか。人生にはさまざまな困難や不安があります。だからこそ、誰もが「幸運を招きたい、不運は避けたい」と願うのです。してみると、姓名判断の人気の秘密は、名前がもつと信じられている「呪力」にあるのかもしれません。

人間は昔から名前に特別な力が宿っていると信じてきました。名前が霊魂そのものだと考える民族もあるくらいです。良い名前をつければ、あるいは良い名前に変えれば、運が良くなると信じる素地は、実は誰にでもあるのです。[注1]

●運命が先か、名前が先か?

ですが、もし「名前で運命が変わる」としたら、おかしなことになります。名前が「原因」で運命が「結果」になってしまうのです。本当でしょうか。後先が逆ではありませんか?

不勉強のせいで進級試験に落第点を取ったとしましょう。成績が仮に10点だった場合、0を書き足して100点にしても、「落第」の事実は変わらないでしょう。落第の原因は不勉強であり、10点は結果でしかありません。

「吉名は幸運を招く(吉名にすれば不運を幸運に転換できる)」という発想は、「答案用紙の10点に0を書き足せば、不合格が合格になる」とどこが違うのでしょうか。

運命とは「 人間の意志を超越した力による幸、不幸のめぐりあわせ」と考えられているものです。言い換えれば、「人間にはどうすることもできない」ものが運命です。

ところが名前は自由に選べます。すると、「人間にはどうすることもできない運命を、人間が自由に選べる名前で変えられる」ことになります。矛盾してませんか?

●「吉名は幸運を招く」ってホント?

こんな怪しげな主張は、まず疑ってかかるべきでしょう。「名前で運命転換なんてインチキだ」という占い師は昭和初期にもいました。

「名前は、人が持って生まれた運命の結果であり、原因ではない。だから名前(結果)を変えても運命(原因)は変わらない」というのです。確かに、こちらの考え方のほうが理に叶っている気がしますね。[注2]

はたして、どちらの説が正しいのでしょうか。「名前で運命は変わらない」のか、それとも本当に「吉名は幸運を招く(名前が幸運や不運の原因)」なのか。

ただ、もし名前に魔力(呪力)があるとすれば、どちらの説も名前が運勢に影響する可能性はあります。

とはいえ、「幸運」の意味は両者で大きく異なってきます。前者では名前の影響力がだいぶ限定されますが、後者では運命の大転換(不老長生、巨富と名声の獲得など)も思いのままになるのです。[注3]

●「途方とほうもない主張には強力●●な証拠が必要だ」

ところで、仮に「吉名は幸運を招く」としても、ひとつ困った問題があります。「吉名」とはいったい何なのか、という問題です。

姓名判断にはたくさんの流派があり、流派が違うと吉名が凶名に、凶名が吉名になります。すべての流派に共通する絶対的「吉名」なんて存在しないのです。

そこで、この問題に決着をつける良い方法があります。「吉名は幸運を招く」と主張するすべての占い師に、自分自身で証明してもらうのです。ピロリ菌を自分で飲んで、胃潰瘍の原因を証明した医学者バリー・マーシャルのようにです。

さあ、ボールは占い師側の手に渡りました。以下の二点のどちらかについて、強力な証拠、もしくは強力な反論を期待しましょう。[注4]

① 自分自身や子孫の運命を改善して、どれほどの成果を上げたか?
② 人にはアドバイスするのに、自分自身に適用しないのは何故か?

==========<注記>===========
[注1] 本項で参照した当ブログの記事
赤ちゃんの名づけ本は魔術書だった!
「改名で運命転換なんてインチキだ!」と断言する占い師
運命転換に失敗した占い師たち
名前で運勢が変わるか?(3):名前の呪力<上>
名前で運勢が変わるか?(4):名前の呪力<下>

[注2] 「名前で運命は変わらない」とする説
 この説の基本的な考え方は、「人は運命にしたがって、その運命を暗示するタイミング(年・月・日・時)に出生し、その運命を暗示する様相(人相・手相・名相 etc)をもつ」である。その真偽はともかく、時系列的な因果論(原因⇒結果)に矛盾しないという意味で、筋が通っているように思える。

[注3] 「名前で運命は変わらない」説でも運命に多少の影響を与えることはできる
 この説に従いつつ、「吉名は幸運を招く」という命題が真であるためには、名前が魔力(呪力)を持つ必要がある。ただし、その効力は運命の範囲内に限定されている。なぜなら、自由に選べる名前の影響力が、どうすることもできない運命のそれより、レベルが上のはずはないから。
 こう考えるならば、「運命は決まっているが、そこから逸脱しない限り、開運の余地がある」とする占星術との整合性もとれる。

[注4]「途方もない主張には強力な証拠が必要だ」
 「こと知識に関する限り、どんな主張も同じだけの重みをもつというわけにはいかないのだ。」これは宇宙物理学者カール・セーガンの指摘である。

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