夜桜さんちの大作戦151「辛三の記憶」感想


前回感想



 記憶を覗くことができる嫌五が見たのは、記憶が黒く塗りつぶされた辛三の頭の中。
 自分に都合のよくなるように、辛三の記憶を塗りつぶし、「父親思いの息子」を作ろうとした百だったが、辛三の「一番消したい記憶」は消せず、辛三は頭の中で、楽しかった日々の記憶と、一番消したい記憶に挟まれていた。

 



次回は過去回想ですかね、二人の幼少期か、両親との思い出か、六美への想いか…。いっつも予想がかすりもしないので色々並べてみました。
 辛三がどう、認知がゆがめられていたのかが視覚的にわかるような描写があったらいいな~。

夜桜さんちの大作戦150「触れる」感想より

 いや、まさか過去回想全部踏んで来るとは思わなかったですね…しかも、視覚的にどう洗脳されているかもわかったし…。欲しいもの全部盛だった。
 そして辛三の開花がまさか嫌五由来のものだとは思わず。びっくりしました。しかも、これ9巻72話の感じだと凶一郎ですら知らない可能性ありますよね。…と、まあその辺りについての考察は妄想の域に入るので、別のnoteでやります(本当は書くつもりだったけど膨らみすぎて止めた)。ちなみに私は、凶一郎は知っていて隠している派閥に入ります。よろしくお願いします。

閑話休題

 さて、嫌五を守るために開花した辛三だったけど、死傷者なりを出したことがトラウマになり記憶に蓋をしたことが判明しましたね。
「忘れるほど最悪」な記憶は、父親でも消すことはかなわなかったらしいんですが、忘れた記憶に対する対話が父を擁護する強みになっているあたりわざとじゃないかなあと。
 まあ、百が意図的に選んだというより、辛三をあの状態にするのに都合がいいから残ったと考える方が妥当ですかね。
 百は回想からしてつぼみが「作った」で確定ぽいですね。まあ、弟が根の時点でだよね、という感じではあったんで驚きはないです。結構ツイッターとかで後天的だったら、みたいな話を引きずっていたのは、それだと百を倒しても、これからの太陽の未来に不穏な影が…みたいな展開になるから面白いなあと思っていた程度の動機でした。
 まあ、百の正体が輪郭を持ってきた…というのも今回の話では大きいのかな、とは思いつつ、私としては長く疑問だった「家訓」と「家族愛」に、ついにメスがはいるのでは!!!という期待の方が高まりましたので、今回はその話をしようかなと。
 なので、今回は感想というより、夜桜の「家訓」と「家族愛」についての考察が主です。

夜桜一家の「家訓」と「家族愛」は対立し得るのか

 ご存じの通り、夜桜一家には唯一の家訓「家族不殺生」があり、百はその家訓を破ったため家族一同に憎まれています。
 しかし、夜桜家は家訓以前に、家族愛が非常に深い。そんな兄妹たちが、母を殺したから父に対する愛は忘れる。とそう簡単に割り切れるものだろうか、という疑問がずっとありました。
「家族愛」が深いゆえに「家訓」を守る夜桜一家だけど、もし「家訓」のために「家族愛」を殺さなければならなくなったら?
 答えは「家訓」を選ぶことだと彼らは本編で身をもって実行しているわけですが、心のほうはどうだろうか。
 それについての葛藤を六美がずっとしていたわけですが、六美が「母の死が父によるものだった」ことを知ったのは、太陽と皮下が接触した12巻101話なわけです。時間にして長くて数か月。勿論時間の大小が苦しみに比例するとは限りませんが、太陽への仕打ち、屋敷への襲撃、タンポポとの協力、極めつけに以前にはなかった醜悪な父の姿を六美は順に見ることで、父への想いを断ち切っています。
 けれど、他の兄妹は六美が12歳だったあの日から「母を殺した人物」を知っているわけです。兄妹が父に対してぶれずに敵意を見せるのも、家訓を破った父を許さない覚悟をその時から決めていたからだと考えることができます。
 ですが、全員が全員凶一郎のように、「家族を殺した父を殺す」と明確な殺意を向けることは難しいのかなと、せいぜい割り切るのが精いっぱいかなと。凶一郎にしても、六美に対する「家族愛」と百を殺す「家訓」が合致しているだけで、やっぱり、「家族愛」と「家訓」は対立してないんですよね。
 六美が代弁者として矢面に立たされているけど、六美と兄妹じゃちょっと立場が違うから苦しみの種類が違うんだよな、どうするんだろう、とそんな疑問というか、違和感というかを抱えながら夜桜さんを読んでいたんですけど、権平先生描いてくれそうですね!

 なんで、凶一郎は無事で二人が洗脳されたのか。
 今回洗脳された二人は、特に優しいと評される二人なわけです。洗脳された回ですら、率先して他人を守る二人だから、的な説明をわざわざ入れてるくらいだし。
 そんな他人にやさしい二人が、家族に対してはもっと優しい二人が、「母を殺したから父を憎む」なん単純な方程式を作れるわけがないんですよ。他人を憎む前に自責するに決まってる(?)んですよ。そして、そういう罪悪感に付け込まれちゃったのかなと。
 辛三の様子を見ていると、あの洗脳は父に対する愛情の肥大化ではなく、父の変質に気付くことも止めることもできなかった二人の贖罪なのかなと。
 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…。
 二刃回楽しみすぎる。
 二刃は以前百に対し、六美を苦しめたことへの怒りをぶつけ、修羅の「百に割く」発言も肯定的だったわけですが、父に全力で怒りをぶつけるほど妹を愛している二刃が、父を愛していないわけがないんですよ。
 それというのも、二刃って一話で太陽に結婚を提案する理由が、六美を束縛の苦しみから解放するためではなく、凶一郎の目を覚まさせるためなんですよね。
 自分を追い込んでしまう四怨にはめちゃめちゃ優しくて、楽に走ろうとする嫌五には三徹で組手をさせる一方、苦しんでるときは支えてあげる。兄妹それぞれに対して深い愛情を持ってる二刃が、両親に対して偏った愛情を持っていたとは考え辛い。
 愛しているからこそ家族を裏切った父親を憎んでいるんでしょうが、葛藤がないわけがないんですよね。何より、すべてを「受け入れる」覚悟を決めた二刃が「受け入れられ」ず、「憎んで」いる時点でなにも割り切れていないんですよ。
 その葛藤が、凶一郎との戦いでどう昇華されるのか、死ぬほど楽しみにしすぎて文字数がすごい。これは今週の感想では無い。

 本当は嫌五が死にかけたことを凶一郎が隠ぺいしたんではとかそういった妄想を書こうかなと思っていたんですけど、膨らみすぎたのでそれは別noteでまとめることにしました。


今週の一枚は長男女幼少期ケンカ後
「組み手を逃れるため腕を折らざる得なかった凶一郎と、負けじと足を折り返した二刃」みたいなイメージ


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