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出雲灰についての考察


注意 この記事は、本誌(2022.08.09現在)についての考察です。
 重大なネタバレが多分に含まれますので単行本派の方はご了承ください。

 
 
 これからの話は、出雲灰が「裏切り者」になるんじゃないだろうか、という疑念を抱いた私が、出雲がどれだけ本編において、怪しい動きをしているのか、ということをつづっていきます。
 興味のない、或いは「あり得ない」と思う方は不快になるかもしれないので、ぜひ読まないことを勧めます。
 では、よろしくお願いします。


万能すぎない?

その情報源は?

 最初の違和感は「なんでそんなこと知ってるの?」でした。
 凶一郎が初代の血(現夜桜には毒になる)を浴びたため、死にかけているという事実を知らず、かつ、その解毒に万花繚乱が必要だということを、123話の時点で知っていたのはおそらく百くらいのものだったでしょう(百が知っていたかどうか、確証を得る発言はありませんが)。
 じゃあ会長はなんで知っていたの?
 実際に知っていたかどうかはわかりませんが、少なくとも、どこが情報源なのか、わかり得ない情報を持っていた、という疑問は残りました。
 123話で行われた過去回想についても思うところはあるのですが、それは後述します。

なんで今まで夜桜に話がいかなかったの?

 これは、出雲だけに限らないんですが、135話で開かれた金級の会議の議題「夜桜家の処分に関する提案」なんですが、これ、「政府、警察、協会の一部」の連名なんですよね。しかも、この議題って、百とファミレスで会う前に投稿されたものっぽい。
 おそらく夜桜家がこの動画の投稿に気付かなかったのは、百が前日に六美に連絡をすることで、その意識を自分に向けさせてたからだと思えます。
 しかし、連名に関わる組織って、全部凶一郎の同級生がいるんです。
 なんで凶一郎に夜桜家が不利になっているって誰も一報入れなかったの?という疑問が残ります。
 かつ、百がファミレスで会おうと言ったのは、動画が投稿され、夜桜家を協会から追放する会議が開かれるまでの間の時間稼ぎだったと考えると、目的の見えない(百いわく、家族に会うのに理由はいらない)接触にも合点がいきます。

話はうまくまとまったようだけど

 金級の会議で凶一郎が怒り心頭でキレ、一時騒然となった場を出雲が曲芸の様な技を披露し収めました。
 結局会議は、凶一郎が百確保に必要だと提示した「三日後」まで保留とされます。
 会議は常に荒事化し、そうならなかったのは「初めて」なんて言葉もありましたが、今回荒事化しなかったのは出雲が凶一郎を鎮めたからです。
 その理由を「凶一郎の頑張りが報われないなんていやだ」という友人としての言で説得してますが、そもそも「提案書」は「夜桜家の尻ぬぐいは夜桜家でしろ」が主題となっているっぽく、「追放」は迷惑をかけた罰か、討伐できなかった場合の罰であること(おそらく後者)が、会話からうかがえます。
 現夜桜に罪がない(なさそう)、というのが金級の共通意識としてあるっぽく(現に、夜桜追放を賛成した龍は、追放されたら面白いからという理由で賛成している)最初から、「百を討伐しなければ、夜桜追放」と課題を突き付ければよかったはずなんですよ。
 実際、凶一郎はこの会議を「歪つ」だと感じています。
 そんな歪つな会議を出雲が開いた意図はなにか、それが金級を収集し、百の動画を見ることだったら納得がいくんですよ。
 緊急性が高いとされ、金級が全員集まったにも関わらず、この場で出雲は何も決めないことを決め、問題を先送りにしてますし。
 龍にしても、話を複雑化させていることなど、怪しい点はあるんですが、金級の会議は荒事化しやすい(つまり普段からこうした状況にい陥りやすい)ようなので、逆に荒事を鎮静化(普段やらないことを)した出雲の方が怪しいわけです。
 そもそも太陽を呼び出した意図がわからないですしね。(これは後で触れます)
 つまりここまで物語が、二人で進められているんですね。
 誤解を恐れず言うのなら、百が会議が整うまでの時間を稼ぎ、百が新しい動画を撮るまで時間を出雲が稼いでいるということです。

その情報の根拠って、君に依存するよね

 食堂ですでに倒されていた百の弟たち。その光景を見て出雲は「痕跡を消すのがうますぎてわからないが、強い憎しみを感じる」と言ってます。
 でも、その痕跡の有無って出雲が無いと言えば無いってことになってしまうんですよ。出雲以上に高い観察力を持つ存在がいないので。
 つまり現段階で、出雲の情報の真偽を確かめる術はなく、出雲は自分が与えたい情報だけ与えることができるんですよね。そんなキャラ他にいないんですよ。(龍の子供に対する情報や修羅の過去とかは、調べればわかることなので)
 ちなみに出雲は137話で、管制室が乗っ取られたことに気づいてるっぽいんですが、それを味方に伝えていません。個人で情報を出し入れする奴、怪しくないですか?

自己投影してない?

 図書館で凶一郎と本の結末で言い争う出雲。凶一郎はロマンチスト(ハッピーエンド)、出雲はリアリスト(バッドエンド)のように描かれていますが、これこそ出雲の裏切りフラグだと思っていて、
 待ち売りの少女は自分の所属する場(街)を売り渡すわけですが、それはスパイ協会、ないしは夜桜家長男の友人の場を売り渡す未来(あるいは現在)の自分を投影し、裏切者の自分はそんな存在に幸福な結末は用意されていない。と、物語に没入してしまったゆえの結論なのでは?と

最初から?

 では出雲が裏切りものであるならその目的は?と疑問は沸くんですが、それはわかりません。しかし、その辺りに太陽が関わってきそう、という仮説は立てられます。
 以前出雲は、太陽に対し「ずっと君には親しみを感じてた」という言葉を向けています。
 これは家族ぐるみで交通事故に遭い、かつ一人生存してしまった存在同士だからシンパシーを感じていた。という様に読み解けます。
 しかし、太陽の事故にフォーカスを合わせると、それだけではないのではないのでは、とも思えます。
 太陽の事故は組織的に仕組まれたものです。また、太陽が一人生き残っていることも仕組まれたものだったことは、黒顔の発言(3巻23話)から判明しています。
 それらの情報を、出雲が知らないならそれまでですが、さすがにそれは楽観的な解釈になるかなと。
 なぜならスパイ協会協賛の故人図書館に所蔵された資料では、太陽は家族共々死亡していることになっており、そこになにかしらの陰謀があったことを示唆しているからです。
 陰謀に関りがなかったとしても、それらの情報を凶一郎から得ていないと考える方が不自然なように思えます。ですがこれらはつじつま合わせであり、あくまで主観です。
 しかし、太陽の事故に「陰謀」が絡んでいることを、出雲が知っていた上で共感をしたというのであれば、彼もまた何かしらの「陰謀」によって事故に遭ったという可能性が浮かび上がります。
 太陽はほぼ確実に、太陽を六美の旦那にさせるために仕組まれたものですが、では出雲が事故に遭ったのはなにを目的にしたのか。
 目的はわかりませんが、それによって出雲が得たものは「夜桜凶一郎の友人」という立場、と「スパイ協会会長」の立場です。
 どちらも、凶一郎が声をかけ、凶一郎に押し付けられたものであり、彼が自身で選んだものは無いように思えますが、そもそも彼が不自然に凶一郎をかばったことが発端です。
 凶一郎は偽皮膚のほつれを他人にばれないよう修復しようとし、実際それを可能にする力を持っていたと思います。実際のところ、それは大した窮地ではなかったでしょう。しかし、(珍しく?)彼は予想外の出来事にあわてた。
 出雲がそれ以前から凶一郎を見ていたようなので、凶一郎ならそのくらいのことはどうとでもできることを知っていてもおかしくないんですが、この時出雲は庇うことを選択してます。
 そして、「運悪く」ほつれていた偽皮膚をあわてて直そうとした凶一郎を「運良く」出雲が遮って隠してくれた。シチュエーションが生まれました。
 この「運良く」が偶然ではないことに気付いた凶一郎は出雲に接触しましたが、「運悪く」も偶然ではなかったとしたら?
 出雲の目の観察力は鋼蜘蛛の繊維をカッターナイフ一刺しでほぐすことができるほどです。勿論その技術などは後から身に着いたものかもしれませんが、彼が観察によってスキを見つけることができる存在だということを示唆しています。
 二人の出会いが、偶然ではなかったら。
「夜桜」に近づくために出雲が凶一郎と接触したのであれば、出雲が裏切り者であっても、不自然さはありません。
 最初から裏切るつもりで接触しているわけですから。

じゃあ結局なにがしたいの?

 金級会議が開かれ、議題は先延ばしされたところ、百の爆破予告をされ、そのたくらみを止めるためスパイ協会に乗り出したら二刃と辛三が百の傀儡と化し敵に回りました(一息に並べてすみません)。
 百の目的はこの辺りの「自分に都合のいい家族をつくる」ことっぽいので、目的を果たしているように思えます。
 じゃあ出雲の目的は、百の望みを叶えることなのか。多分ですが違うと思います。そもそも、出雲と百は連携しているように見えて、その目的や勢力が違うのではないかと見ています。
 百と協力関係ではないなら出雲はどこに所属しているか。
 愚問です。第三勢力です。
 さてここで、先にあげた太陽を呼び出したことに触れていきます。
 太陽をなぜ金級の会議に呼んだのか。それは六美の護衛を減らすためじゃないかと睨んでいます。
 今、夜桜の荒事向きの主要な戦力は全員スパイ協会に集まっています。荒事担当が揃って金級だから仕方ないですが、その三人を覗いた前衛担当である太陽を呼び出す理由は、
いてもらった方が都合がいいからでしょう。
 スパイ協会内で起きている「家族の傀儡化」に太陽の存在が都合がいいとは考えづらく、では何に都合がいいのか。
 それは、
いてもらいたくない場所にいないことです。
 六美の元には非戦闘の四怨、嫌五、一番戦えて七悪、後はゴリアテしかいません。葉桜使用者による襲撃と同程度の襲撃をされたら、守り切るのはかなり難しいでしょう(初手冬ごもりでなんとかなるかな、くらいで撃退はできなさそう)。(そこまで状況は悪化しませんでした。22.08.31追記)
 まあこの辺りはかなり曖昧な憶測なので(一応根拠はあるのですが、出雲そこまで関係ないうえ長くなるので書きません)外れの見込みの方が高いですが(大的外れです)、少なくとも、出雲の目的に太陽が絡んでいるというのは真に近いのかなと思っています。(じゃないと呼び出した意味ないし)(意味は明かされませんでした。22.08.31追記)



 
 「初めて僕を見てくれる人が現れたたんだ」という会長の言葉がその言葉以外の意味を持っていないことを祈っています。


おわりに


「なんだか食えない優しそうな人がでてきたな〜。しかも凶一郎と同級生か〜これっはまたまた厄介そうなキャラだ…」
 私の最初の印象はそんな感じでした。
 しかし、話を追うごとにきな臭くなり、今ではもう、凶一郎を傷つけないで上げて…と願うような気持で本誌を追っています。
 どうしてこうなった…。
 この記事を公開するのは出雲が単行本に収録されてからにしようと思っていますが、それまでにどう話が進むのか、楽しみにしています。



オマケ

 ちなみになんですが、太陽の事故が陰謀によるものだったことを知るきっかけの仕事を与えたのはヒナギク(りん)、タンポポに接触し、百によって殺されかけたきっかけとなるホテルの情報を与えた囚人を探すよう依頼したのは警察(仏山)という、序盤に百が絡む事件は凶一郎の同級生が話を持ってきている事実がある。ということを最後に添えておきます。
 私はすべてが偶然であることを祈っています。
(ただ偶然で無いならすごく大きな力を感じる物語になるので個人的に死ぬほど好きな展開になる…)

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