未来 2024.2月号より
金木犀の香はたおやかに十月のヒューマンエラーの多かりしこと
壁にリトグラフわずかに傾きて西の窓より薄ら陽の射す
キッチンへ水捨てにゆく夕さりの肩には二羽の鳥がたわむれて
四間飛車に右四間飛車にらみ合う烏丸通は夕明かりして
パウル・クレー的輪郭を秋風のなかにほどきてあなたは来たり
小糠雨は薄くエタノールの匂いして水族館の横を過ぎたり
雨が重くシティ・ポップが軽やかな窓辺にカポーティを読みおり
かなしみは秋の終わりを告げてゆく移動遊園地の黄のピエロ
木星と月近き夜 互いに素といううつくしき数は戦ぎぬ
くるぶしのあたりへ落とす視線あり 風 ことばから秋が零れる
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