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第二回 赤田あつきのかんたんアルバムレビュー ごあいさつ前編

おはこんばんにちは 赤田あつきです。
シンガーソングライターとバンドをやっています。僕の活動の紹介はめんどくさいのでまたのちほど。
曽我部恵一さん主宰のROSE RECORDSより1stアルバムやEPをリリースさせて頂いています。

かんたんレビューとは

わーっとか すご...とかあーとか好きな音楽を聴いたときに、つい漏れてしまう個人的な「感嘆」を、つれづれなるままに。

あと、僕は確かに音楽は好きなんですけど、その音楽の背景情報とか、(例えばその作品の歴史的意義は!とか、アーティストの人生において!みたいなことについては) 正直詳しくなく、そしてあまり興味もないのです。

これについて、音楽をやっている人間がそんな態度でどうすんだ!というのもよくわかるのですが、僕はただの、この広い世界の片隅を歩くいちリスナーとしてこのレビューを書いてみたいなと思ってます。だから、個人的な感想ばかりが並ぶと思います。それは「簡単」に!


第二回 赤田あつきかんたんレビューで取り上げるのは…

高田渡 ごあいさつ(1971)

言わずと知れた日本のフォーク名盤ですね。
(なかなか中古CDが売ってない…。)
高田渡さんは、山之口貘の「生活の柄」をはじめとした、詩の引用から曲を作る独特の作風でもおなじみです。でも今回のレビューでは、そういった詩の引用についての解説はしません。たぶんネット調べればたくさん解説あると思いますので!

ちなみに、自分が一昨年に1stアルバム「うまくいえないけど」を作ったとき、ローズレコーズで曽我部恵一さんに、「このアルバム高田渡ぽいね!」と言ってもらったことをよく覚えています。あまり意識してなかったのですが、強いて言えば僕も、アルバム最後の曲で詩人 高村光太郎の詩に曲をつけたりしました。

僕は正直、君フォークぽいねと言われるのはあまり好きではないのですが、高田渡ぽいねと言われるのはちょっと嬉しかったりします。
なぜだろう、あの気の抜けた風貌や優しそうな雰囲気にすごく惹かれちゃう。でも彼に惹かれるのは僕だけじゃないでしょう。たくさんの人の心の片隅に、今でも高田渡さんの声が無邪気にしみついているのではないでしょうか。あんなおじいさんになりたいな。

人の触れにくいような気持ちに、あっけらかんと隣にいてくれる。そんな人間の、ちょっと良いところを見せてくれるようなアルバムです。
改めて聴き返してみると、いろんなことを考えてしまって、とても長い文章になってしまいました。それも16曲とかなり長編なので、まずは前編としてはじめ7曲の話をします。8曲目ブルース以降は、また後ほど!
ぜひ曲聴きながら、読んでみてください。

1. ごあいさつ

思わず苦笑いしてしまうのは、自分もたまにこんな返事してしまうときあるなー…と思うからです。たぶん彼は、急いでいるっていうわけではないけれど、今は話し込むっていう気分でもなくて、でも相手に嫌な印象を与えたくないなー…という 気遣い笑 から、精緻な表向きのご挨拶をしてるのでしょうね。
今だったら、
「お疲れ!この前まじで助かった!お前も今日来てたのかー言えよー笑 あ、この前メール送っといた!あれにいろいろ書いといたからさ、また今度ゆっくり話そうよ!うん!おっけー了解!じゃまた!」
といったとこだろうか。この、なんともいえない気まずさってありますよね。相手に返事する隙を与えない笑 現代語訳してみて、これってなんかもしかして、主人公てデート中だったりするんじゃないか…?と思えてきた。恋人との空気を壊さない程度に、あまり時間をかけずに、ばったり会ってしまった知り合い(同僚?)とちょっと話すみたいな。恋人を退屈させないために、さらっとやり過ごすためのセリフなのでは…?と考えると、少しこの曲のきこえ方も変わってくる。まあ自分もいつか恋人ができた時には、この曲を思い出して、めんどくさい会話をサラッとやり過ごしてみたいものです。

2. 失業手当

「一晩中、まんじりともせず(落ち着かず)、愛のことで、愛のことで」
そういう日ってあるよね。と思わず頷いてしまう。うん。ユタユタしながら、変なところで力みながら、やる気のないブルース調を続ける。この曲の彼は、頑張って今すぐに立ち直る!つもりはなさそうである。この曲のようなユタユタしたオーラを放っている人とは(お互いのために)あまり無理に話をしてやらないほうがいいと思う。浸らせてあげて。
ところでこの、やる気のなさ、をヒシヒシと伝えてくる演奏はすごいなと思う。ちゃんと聴けばきくほどなんかイライラしてくるような、つまらなさと、仕方がない感。そんな日常があったのだなと、まるで風景が見えてくるようです。

3 年輪・歯車

人生について、ふと考えるときがある。
ほんとうに人生を生きている時間というのは、実はそんな、たまにふと訪れる、とても少ないすき間の時間くらいなのではないかと思う。
この曲は、嘆いていているのではなくて、話しているのではないかと思う。相手は自分で。
誰に対して打ち明けているのではなくて、ただただ、そうだったね そうだったねと自分を撫でてあげること。そうやって少しずつ、慎重に、自らを受容していく。それをなくして、前を向くことはできないものです。
この曲を歌い終わったら、さっきまで震えていた肩も段々緩やかに呼吸をはじめて、眠れなかった日々の末に、眠る準備ができるような気がします。



4. 鮪に鰯

この曲を聞いて最初僕の頭に浮かんだのは、恥ずかしながら、ぎこちなく椅子の上でバランスをとり食卓に向き合っているマグロさんとマグロ子さんの、極めてシュールな風景…。マグロさんとマグロ子さん夫婦は一体どんな会話をしているのだろうと耳をそばだてていると、マグロの刺身を食べたいとか言い出しているから、なんだか切ない気持ちになる。切ない曲だ。
マグロは人間になんかなりたくないだろう。
人間なんて、どこかの食卓で「そういえばあれ嫌だねー」と話す程度にちっぽけで、しょうもなく、愚かな存在なんだよねと、ついマグロに共感したくもなってきてしまう。

5. 結婚

なかなか難解な曲だなと思ってしまった。ストレートに、「うた」が結婚お相手の名前なら、とてもわかりやすい曲なのだけど、なにしろ「うた」である。泣き続けて、結婚したくて、死にたくなっても、そこに僕がいれば、「歌」は僕につきまとい、鳴き続ける。早川義夫さんの歌が大好きな僕は、ついこの曲もこのように解釈してみたくなってしまう。
売れない音楽家にとって、結婚という言葉がかなり重たーく痛みを伴って響いてくるのは、今も昔も変わらないだろうか。好きな人のためのお金か、自分のための音楽か、という選択、まさに究極なのではないだろうか。
コミカルに歌いあげてくれて、ありがたい。

6. アイスクリーム

夏の日の決して短くない時間、日差しの下で汗をたらたらさせている時には、こんなパタパタした感じのギターが頭で鳴っていると気が紛れていいですよね。

7 . 自転車に乗って

「自転車に乗って!ちょいとそこまで歩きたいから」いやどっちやねん。それはさておき
自転車に乗って、野球の続きをしに行く、足を洗って帰る。ちょいとね。ベルを鳴らしながら隣町までお使いに行く。ちょいとね。
初めて自転車を手に入れて、もうその感動を抑えきれない小2の吹聴顔が浮かんでくる。
自分の自転車を初めて手に入れた時の、溢れ出す万能感てありますよね。どこまでも行けるような気がする。大人でも、ロードバイクとか手に入れたら、周りに「すげーっ、かっけーっ」とか言われて、「いや、全っ然 ちょっとそこまで行くのに使うだけだからさ〜(満面の笑み)」みたいに小2のようにウキウキが隠せなくなってしまうのではないでしょうか。

どれも良い味がする。

7曲、いかがでしたでしょうか!
人の浮き沈み、ためらいやおどけ、悩みや諦め、でもそれもアリだよねと、まあそういうもんだよと、話しかけてくれるようです。
中編、後編まだまだ続きます!
いま真夜中にam4時過ぎに書いていて、眠たすぎて頭が回らなくなってきました。
歩きー疲れてはー夜空と陸との
ではまた今度!💤

2024 1. 26 赤田あつき

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