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ハラキリ手術の記憶2

手術から5日、私とほぼ同時、あるいは翌日以降に同室へ入院してきた方々は既に全員退院された。
改めて、ハラキリってでかい手術なんだなと思った次第である。

さて、手術当日の話。


1、断食断水


手術は夕方からで、当日の日付が変わった瞬間から絶食となる。
つまり前日の夕食が最後の晩餐となるわけだ。

怒りの北大路魯山人

鮭って、美味しいね!(やけくそ)

ちなみに手術前日の午後に下剤を飲まされていた。普段からお通じ良好ならいらんのだろうけども。
…寝る前にぜんぶでた(言い方よ)

手術当日は昼12時以降絶飲食、つまり水分もアウトになる。
朝からだらだら茶を飲み続けた。コーヒーが飲みたかったな…

朝食も昼食もないが、歯は磨いておけとのこと。
入院前の歯科健診、手術当日の歯科健診と、全身麻酔の場合非常に口腔内の状態に注意する必要があるそうな。
意識がない時にそこそこ太い管を口から挿入するので、口腔内への負担は大きいらしい。意識もないから無防備なまま口腔内の菌が体内に入ったり、ぐらついてる歯が折れたりといったこともあるとか。


2、(補足)麻酔の説明


麻酔については専用の冊子に加え、問診票をもとに麻酔科医から直接説明があった。
全身麻酔は、人工呼吸器から流し込まれてすぐに意識がなくなる。「だからここから先は意識がない状態で進むんですけど」と、口から挿管する写真を指して言う。

で、この全身麻酔の前に、硬膜外麻酔というのをする。
背中から、脊髄を覆う硬膜の外側にカテーテルを入れ、それを使って施術部位の痛みをおさえるのだそうな。

管の入り方がよろしくないと、足が熱くなったり、背中ではなく腰や足が痛くなったりする。そういう症状が出たら即言え、と。
正しく入っているかを確認するために、意識がある時にやるのだそうな。

正直、意識がとぶ全身麻酔より、こっちのが絵的に怖かった。

この姿勢で背中に管入れるのだぜ…

①まず痛み止めの注射を打ち、②管を入れる

手術後も管は残され、「ボタンを押すと背中から痛み止めが注入される」という謎装置。
これ入れたまま仰向けで寝てもいいらしい。どういう仕組みなんだ。


3、ハラキリ執行


手術までに、血栓予防の靴下をはいておく。
買い取りになるので、退院後家でもむくみ防止に使ってくださいね、だそうだ。
手術後の着替え(前開きの浴衣っぽい病院着とオムツ)は看護師さんに渡し、さらにその翌日の着替え(甚平とショーツと夜用ナプキン)は病室ですぐ取れる位置に用意。
手術翌朝用の歯ブラシ、歯磨き粉、コップ、ストローの一式をまとめておく。家族の差し入れのミネラルウォーターも一緒に。
絶飲食のため脱水予防の点滴をさす管が手首に入れられる。これは手術後も2日間ついてて、適宜点滴に使われる。

(ちなみに、所謂毛剃りについては、入院前日に自分でやっといた…ひとさまにやってもらうの、気まずいじゃん…)
(前日看護師さんに確認される)

その日4つある手術の最後で、たぶん時間は押すと言われていた。
で、だいたい予定30分過ぎに病室へ看護師さんが呼びにくる。普通に自分で歩いて移動でいいそうな。
病室出たとこで家族と合流…するんだけども、手術室の前ですぐ別れる。家族は術後に別室で説明を聞くことになるんだと。

ここの病院は「第五類以降?知ったことではない」と、新型コロナ感染症対策が従来通りで、家族の面会は、入院日・手術当日・退院日に限定される。
荷物の受け渡しもナースステーション経由且つ時間も決められているという厳戒っぷり。
そりゃ地域連携の中枢だもんな、院内感染絶対出せないよな。

家族と特に話す間もなく別れ、手術室への自動ドアをくぐると、意外とまだまだ奥があった。
部屋もだけど、機械類だったり手洗い場だったり、廊下は広くてもふと横見るとスタッフさんたちがなにやら作業をしていた。
なんとなく、工場っぽさがあった。

看護師さん「手術初めてなんです?落ち着いてますねえ」
蛙「いやまあ、なるようになれという感じでして…」

ここでジタバタしたって腹は切られるわけだし、その間は麻酔で寝とるしな……

自分が切られる()手術室に着いたら、手術の担当スタッフさんたちが自己紹介してくれた。雰囲気やさしい。

眼鏡も外して、手術台の上に乗る。
手術台って思ったより横幅ないのな…患者に合わせるんかな…

(そういえば、手術の時は身体についてる金属類アウトらしい。私はメガネしかないけど、ネックレスやネイル、ピアスみたいにはまってるやつも駄目。歯の矯正もチェック項目にあったけどはずすんだろうか?)
(あと手術当日は化粧禁止。ベタつく乳液やクリーム類も禁止。人工呼吸器が固定しづらくなるからだそうな)

上半身全部脱いで仰向けになると、首から下にシートがかけられ、電極ぽいものをぺたぺたとつけられる。
おお!ドラマで良く見る、血圧とか心拍数とか出るモニターに繋がってるやつかな!
…メガネ外してて詳細はわからんかった。

さて、ちょっと怖かった硬膜外麻酔である。
横向きで背中をやや丸めた姿勢をとらされ、シートがめくられて透明なビニールっぽいのがかぶせられる。
この間にまず腕から痛み止めが打たれて、次に背中から痛み止めを打たれる。で、管が入ってく。
身体のどこにも痛みはなく、足が熱を持つこともなかった。
痛みないですと伝えたら、全身麻酔へ。
仰向けに戻され、人工呼吸器が当てられる。

「深呼吸してくださーい」

いよいよ…いよいよ…

そう、フォロワーさんに言われていたのだ…
「何秒で寝たか教えてください」と。

覚悟を決め、深呼吸を続ける。

「眠くなる薬いれまーす、そのまま深呼吸してー」

呼吸でカウントを開始。

いーち、

にーい、

さーん、



「落ち着いて聞いてください」


家族「筋腫全部とれたって」

蛙「……………あ、そう」

キング・クリムゾンであった。




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