60歳を越えたフリーライターに仕事が無くなるのは本当なのか。水道橋博士氏と町山智浩氏の対談から考えたこと。
●コラムニスト・唐沢俊一氏死去の衝撃
コラムニスト、雑文家として一時代を築いたフリーライターの唐沢俊一氏が66歳で亡くなった。死因は心臓発作で孤独死だったそうだ。
フリーランスを仕事をしている私にとって、この報道は衝撃的だった。あれだけ連載を抱え、著作を持ち、タレント性もあった唐沢氏がなぜそのような末路を遂げてしまったのか。晩年、ライターとして盗用問題や思想の転換など、さまざまな問題を抱えていたことは知っていたが、それにしても悲しい最期と言える。
唐沢氏が世に出るきっかけとなった著作『トンデモ本の世界』(洋泉社 / 1995年)の編集を担当した、コラムニストの町山智浩氏は当時を振り返り、唐沢氏死去の報を例に取り、雑誌業界、出版文化における〝フリーライター生存の難しさ〟について言及している。
60歳をこえて、仕事があるライターなんてほんの一握りだと。
果たして、本当にそうなのだろうか。
●専門ライターで稼ぐ還暦フリーランスは確かにいる。
専門ライターというのは、製造業、製薬業、IT(システム関連)業など、テクニカルな知識に精通したライターを指す。こうした業界に関わるライターは、安定的に企業や業界紙から仕事の発注があることや、年を追うごとに知識が蓄積され、専門家となっていくため、還暦をこえたライターがゴロゴロいる。もちろん、同業他社で仕事ができないという規約がある場合もあるが、編集プロダクションのような形で複数のライターを抱え、儲けているケースも多い。
具体的なギャランティの話をすると、案件単価が多く、1本5万〜10万円前後。1ページをまるまる書いたら5万、数ページを担当すれば10万。これが、月に数本あれば、簡単に50万は越えてしまう。
とくに最近は、コピーライティングの分野にも専門ライターが起用されるケースも増え、ますますギャラはあがっているはずだ。
●Webライターは儲けられないのか。
これも具体的に言いましょう。
確かに、時事を扱うニュースサイトのギャラは確かに安い。某大手出版社が運営するメディアの相場は1万〜2万ほど。これは、取材をして、執筆して、校正までを含む。それで、2〜3日を費やすのだから食えない。
一方で、特定のジャンルを扱う情報サイトは違う。例えば、某経済メディアのギャラは1本、2万5000円。アクセス数のインセンティブにより、1万や2万が上乗せされるので、5万〜10万ぐらいのギャラになることもある。しかも、面白い情報を取材できれば、自動的に前編・後編と記事本数を分割できるため、ギャラは倍になる。
ほかにも、大手メディアが運営するサイトも比較的、高い。基本的に、活字媒体に対して敬意がなく、そもそも関心も薄いため、業界の相場を知らない。だから、見積もりの段階でそこそこ高い金額を提示しても通ってしまう。例えば、取材・執筆費の一式で4万という場合も多い。
こういう媒体で、記事本数を重ねていくことで月間の売上は高くなっていく。
ただ、この状況がいつまで続くのか。雑誌媒体が崩壊したようにWeb業界もそうなる可能性も高いため、結局、町山智浩氏が指摘するように〝フリーランス〟は末路は哀れ、なのかもしれないが。