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多摩市長選挙に立候補しているジャンボ松田氏の暗号資産導入を検証してみる

2020年4月の多摩市長選挙に立候補しているジャンボ松田氏が地域通貨として暗号資産導入(サンキュートークン)を公約に掲げている。

私は学生時代に地域通貨の研究をしていたので、この取り組みには非常に興味がある。

これまで日本ではいくつもの地域通貨が生まれては消えてきた。仮にジャンボ松田氏が当選して暗号資産が導入された場合、果たして地域に根付く地域通貨となり得るのか?過去の事例なども踏まえ私なりに検証してみる。

日本の地域通貨ブームは2000年代前半。およそ5年間で600近い地域通貨が立ち上げられたと言われている。しかし、そのほとんどが活動停止に追い込まれている。主な理由は「運営側の負担(通貨発行、管理業務)」「コミュニティの性質に合わない」「補助金に依存(財政負担、経済効果なし)」あたりだろうと思う。

あれから20年以上が経過、地域通貨の数は激減したものの、2022年現在、地域通貨を採用している自治体はそれなりに存在する。

その1つが岐阜県の一部地域で使える「さるぼぼコイン」 スマホでチャージして加盟店での支払いに使えるというもの。1コイン=1円の価値があり、チャージ時に1%上乗せ(プレミアムポイント)で付与される。コインの有効期限は1年間。1500以上の店舗で利用できてそれなりに普及しているように見える。が、利用者側のメリットが全く感じられない。だって、クレジットカード決済すれば1%のポイントが付与されるし、有効期限のあるコインにわざわざ換える必要ある?と思ってしまう。中途半端にコインが余ったときは現金併用したいところだが、加盟店によって対応が異なるそうなので、それもまた面倒に感じる。1コイン=1円の地域通貨は、他のキャッシュレス決済との差別化が難しい。

もう1つの例として、最近よく目にする「まちのコイン」 こちらは「さるぼぼコイン」とは違って、地域活性化にフォーカスした地域通貨である。イベントに参加したり誰かの役に立つことをしたらコインが貰えて、そのコインを何かに使えるらしい。この「何か」が重要なわけだが、まちのコインアプリを見ると「ドリンクサービス」「100円OFFクーポン」「UFOキャッチャー1回無料券」などに利用できる。無価値コインなので店舗側もクーポン程度のサービスしか提供できていない。現状は「コインを使う」と「コインをもらう」のバランスが悪いので、コインを使える場面・店舗をいかに増やすかが今後の課題だろう。

最後にサンキュートークンについて。考え方は「まちのコイン」と似ている。まだリリースされていないので、具体的な用途は不明だが、サイトのユースケースを見ると「ボランティアや地域イベントの参加」「住民同士の助け合い」などでトークンが貰えて、「遊休資産(空き地、空き部屋)」「正規の値段で売れない商品(賞味期限切れ、売れ残り)」などに使うことが想定されている。

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サイトから引用した全体イメージ図

取引所で売買できるので金銭的価値のあるトークン、つまりビットコインのような仮想通貨を地域通貨に採用するということだと思われる。1コイン=1円ではなく1コイン=?円、その時の仮想通貨の価格によって1コインの価値が変わってくる。値動きが発生する地域通貨なんて根付くのか?と身構えそうだが、ビッグカメラでビットコインが使えるのと同じように「その時の価値で決済をする」ということであれば問題はないだろう。

私はplay to earnと言われている「遊んで稼ぐ」ゲームにハマっている。ゲーム内で仮想通貨を稼いで、それを取引所で換金してお金にするというものである。私からしたらサンキュートークンはcommunify to earnのようにも見える。つまり、コミュニティ活性化に貢献してお金を稼ぐ。もちろんサービスのコンセプトは別のところにあるが、「インセンティブ(金銭的価値)によって行動変容を促す」と書かれているので、稼ぐ目的で動く人もいることは許容しているのだと思う。まぁ手段はどうであれ、結果として活性化に繋がればwin-winだろう。

問題は仮想通貨アレルギーのある日本に浸透するかどうか。自治体に導入する場合、議会の承認が必要なのかな?もしそうだとしたら、おじちゃん議員がすんなりOKするとは思えない。「仮想通貨?そんな危険なものを地域通貨にできるわけがない、そもそも前例がない」と。この壁は是非突破してほしい。

ということで、今後もサンキュートークンの動きに注目していきます。

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