舞台ウマ娘-Sprinter's Story-に初日と千秋楽に行った話
スポットライトを浴びるということとスタンディングオベーション
スポットライトを一身に浴び、その瞬間の煌めきを全身で体現する。
板の上に立つとは何と苛烈なのだろうか。
今日の光源はダイタクヘリオス(山根綺)。
舞台ウマ娘スプリンターズストーリーを観た。
ウマ娘はレースに生きるアスリートである。
ウマ娘は歌い踊るエンターテイナーである。
競走馬の魂を引き継いだがゆえの運命がある。
アスリートとしてレースを走る。競争者の本能は勝つこと。
競技者は競技自体が持つ魅力に魅せられる。
走るのが好き、レースが何より楽しい。
それを曇りのないまっすぐな言葉と態度でヘリオスは生きている。
華麗なる一族。偉大な功績を残してきた母、祖母。自身も続けとレースにひたむきなダイイチルビー(礒部花凜)
周囲も期待を寄せる。分かっている。結果を残すことだけが期待に応えることであり、出来なければ賞賛の反対側に追いやられる。
故に勝つしかない。生まれつき走るのにそれほど向いていない足をしていたとしても。
生まれながらに脚部不安。まともには走ることもできなかった。暖かい周りのサポートでレースデビューまで漕ぎ着けた。それすらも奇跡なのだと言うケイエスミラクル(佐藤日向)。
走ること、結果を見せることが何よりの恩返しであると硬く誓う。
風は自由。気ままさが故か他者の運命はよく読めるヤマニンゼファー(今泉りおな)。
ウマ娘のなんたるかを直感している。
「レースで伝えられるものがある、レースでしか伝えられないものがある。」
一瞬の煌めき、そこにかける情熱。それぞれがそれぞれにとってのレースと向き合っている。痛々しいほどに。
この物語は気付きを得る物語だ。
楽しいことが好き。一族のために。支えてくれたみんなのために。
真摯であるが故、気がつくことなく傷つけている。レースを一緒に走るウマ娘を、自分を。
これに気がつけるのは楽しいことに忠実で常に今を生きる太陽だ。
ウマ娘同士言葉で、レースで語り合う。
気付きを得ることで世界は変わる。解釈は変わる。
自己中心性の偏りを利他性へ引き戻したくれるのは焦がれてくれた他者。
その連環と連続によって、運命は書き換えられる。
観劇者としてウマ娘のストーリーを見ると共に、あの舞台をつくりあげてくれた人々を観た。
目の前に魅せられているフィクションの世界。同時に演者は一人の人間として板の上に存在し、浴びるライトよりも眩しい生がそこにある。
ウマ娘に惹かれるのは、実際の競走馬競馬関係者のドラマがあるだけでなく、エンタテイメントの世界をエンターテイナーが実際にやっている二重性に感じる。
作り手の魂
ウマ娘たちはあの世界で生きる。ウマ娘を作り上げている人たちの、それぞれのレイヤーで仕事をしている人たちの魂の賛歌をウマ娘を通して見て取れる。
これからも観る側として楽しんでいきたい。演者、制作関係者の方々に深い感謝を。
ゴールインは次のスターティングゲート。次走を期待して。
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