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令和六年猛勇狼士考 その3 第7節から第11節までの振り返り

 リーグワンもいよいよ交流戦が終了し、ラスト5連戦を迎えます。それに先立ち、今回は交流戦第7節から第11節までを振り返ってみたいと思います。


2023-24シーズン第11節までの戦績

 2024年4月4日現在、リーグ戦16試合中第11節までを消化し、勝ち点46で依然2位をキープ出来ています。決勝プレーオフの進出条件となる4位以上に向けて第11節消化時点では勝ち点37点が目安になります。そのため目安+9点かつ5位横浜キヤノンイーグルスとは勝ち点差13がついています(第11節消化時点)
 早ければあと2試合消化後にはプレーオフ進出が決まる好位置にいますが、まだまだ油断は禁物だと思います。

 レギュラーシーズン最後の5試合の対戦相手のうち東京サンゴリアス、神戸スティーラーズはプレーオフ進出圏内であり、その順位確保のために必勝の覚悟で試合に臨んでくることが予想されます。
 またクボタスピアーズ、静岡ブルーレヴズも厳しい状況ですが、プレーオフ進出の可能性が残っています。ホンダヒートも入替戦回避、仮に入替戦に臨むとしても少しでも良い順位で戦うために必死に勝ち点を取りに来ることが予想されます。そのためここからのラスト5試合は1試合も気が抜けない、これまで以上に強度が上がった試合になることが予想されます。
 一方、ブレイブルーパスも第9節でワイルドナイツに敗れはしましたが、それ以外の交流戦5試合は全勝と好調を維持しています。まずはこの交流戦の戦いを振り返り、ラスト5試合とプレーオフに向けた展望を記したいと思います。

第7節 横浜キヤノンイーグルス戦(2024/2/24)@秩父宮ラグビー場

 1ヶ月近いブレイクを空けて行われた第7節は昨シーズン3位のキヤノンイーグルスと対戦。結果はブレイブルーパスが27-7で勝利しました。強敵イーグルスを相手にBPを獲得することが出来ました。

 この試合はブレイブルーパスがほとんど全ての時間帯で試合を支配することが出来て、完勝と言って良い試合だったと思います。ATでは長めのパスを用いて素早く展開する選択肢を織り交ぜて、近場の選手に強いプレッシャーをかけるイーグルスのDFをうまくかわして大きくゲインできたことや接点・セットピースでの強度でも上回りました。
 良かった選手を挙げるとキリがないくらい全員よかったのですが、PotMを獲得した桑山淳生選手を筆頭にBK陣は本当に素晴らしかったです。
 2トライ目のマクカラン選手のトライでは、自陣中央部でパスを受けたモウンガ選手に対して大外にいた桑山淳生選手がコールしたことで、キックパスで大きく展開して相手DFを崩しましたが、モウンガ選手と桑山選手の間にいたマクカラン選手とロブ・トンプソン選手はそのコールに反応して素早くサポートに動いていたと思います。1人が仕掛けた時にすぐに周りがついてくる、さらに良いチームに仕上がってきたな、と感じました☺️

第8節 花園近鉄ライナーズ戦(2024/3/2)@花園ラグビー場

 続く第8節は敵地花園でライナーズと対戦。この試合はブレイブルーパスが50-32で勝利し、BPを含む勝ち点5を獲得しました。

 快勝の第7節とうってかわって、ホームライナーズの想像以上に激しいコリジョンに押されてブレイブルーパスは苦戦を強いられます。またメンバーを一部入れ替えて臨んだものの負傷者が続出し、これまで公式戦ではあまり経験のなかった布陣を強いられたこともあり、苦しい試合となりました。
 一方で積み重ねてきたことを着実に実行できたので、一時ライナーズに逆転を許しましたが、終盤に立て続けにトライを重ねて突き放し、無事に勝利&BPを獲得することが出来ました。

 この試合は濵田選手が本当に良いプレーをしてくれたと思います。今季ブレイブルーパスのWTBはピッチ中央部に移動してブレイクダウンに参加する機会が多い傾向がありますが、この試合の濵田選手は右に左に走り回って本当に献身的に闘ってくれていました。

第9節 埼玉ワイルドナイツ戦(2024/3/9)@熊谷スポーツ文化公園ラグビー場

 全勝同士の対決となった熊谷でのワイルドナイツ戦ですが、結果はブレイブルーパスが24-36で敗戦となりました。

 この試合は強風による影響もあったものの、内容としては今季のリーグワンを牽引する2チームによる最高にインテンシティの高い試合となりました。
 勝敗を分けたのは、アンストラクチャーやトランジションに対してどちらのチームがいち早く同じイメージを共有して戦えるか、ということだったように感じます。
 接点はほぼ互角だったと思いますが、ルーズボールに対する反応の速さや参加選手数の多さ、選手間で共有されるイメージにギャップが少ないこと、それらが80分を通じて一貫していることなどワイルドナイツはやはり上手で、ブレイブルーパスは劣勢になった時に反則をしてしまったり、後手に回ってしまった気がします。
 一方で選手達が同じイメージを共有できればブレイブルーパスも十分に強さを発揮できていました。セタ選手のシンビンで14人になってからFWを中心に戦う戦術を一丸で実行して2トライを取ることが出来ました。選択肢が制限されることで割り切って全員の意思統一が図れたとも考えられます。
 
 敗戦は残念ですが、収穫も大きい試合だったと思いますし、プレーオフでのリベンジに期待したいです🔥

第10節 相模原ダイナボアーズ戦(2024/3/17)@秩父宮ラグビー場

 今季初の敗戦から仕切り直しとなったダイナボアーズ戦、結果はブレイブルーパスが41-19で勝利しました。

 ダイナボアーズはブルーレヴズ、スピアーズといった強敵を今季撃破している難敵でしたが、接点に連携にブレイブルーパスの強みを発揮してくれました。強い接点で相手を支配するブレイブルーパスらしい試合が出来ていたと思います。
 またこの試合に限ったことではないのですが、個人的にはワーナー・ディアンズ選手が今季に入ってさらに成長していて、この試合も彼の強いボールキャリーが光っていたように思います😊
 試合最後のラウシー選手のトライにつながるシーンでは、勝敗はすでに決していましたが、フリゼル選手・モウンガ選手・スティーンカンプ選手・ラウシー選手の4人が最後の最後まで戦い抜いて手にしたトライとなりました。トッドHCが目指す”容赦のなさ”を感じられたシーンであったと思います。

第11節 リコーブラックラムズ戦(2024/3/24)@秩父宮ラグビー場

 続くブラックラムズ戦、結果はブレイブルーパスが40-33で勝利しました。

 この試合はブラックラムズのインテンシティの高さとキープレイヤーであるヒューズ選手やルーカス選手に自由を与えてしまったことで、一進一退の展開となりました。一時シンビン2枚が出て13人になり同点に追いつかれる場面もありましたが、なんとか1トライ差で逃げ切って勝利することが出来ました。この試合の7点差は第2節サンゴリアス戦、第3節スティーラーズ戦の7点差ゲームよりもさらに肉薄された試合だったと思います。なんとか勝てたので、この試合もプレーオフに向けて良いレッスンになったのではないかと思います。

 一方で、これもこの試合に限ったことではないのですが、この試合を見ていて松永選手の攻守のサポート能力に、さらに磨きがかかってきたように感じました。足の速さや体の強さもさることながら、プレーする際の判断に迷いが少なくまた正確なので、いち早く動き出せることで幾度となく今季のブレイブルーパスを救っていると思います。まさに決断する速度に松永選手の強さを感じます。日本代表のエディー・ジョーンズHCが掲げている”超速ラグビー”を体現しているようにも感じるので、シーズン終了後の代表選手選考が待ち遠しいです😊

第11節までのスタッツの振り返り

 5試合を振り返ったところで前回・前々回同様、チームスタッツから戦いを振り返りたいと思います。昨年度スタッツで他チームを上回った項目はボールキャリー・オフロードパス・ゲインメーターになります(再掲)

そして今季スタッツ第11節までのはこちら↓

前回同様、これらを1試合平均に直して比較すると以下の数値になります
・ボールキャリー回数:昨季122.4回 今季121.5回(↓) 6節まで129.7回
・オフロードパス回数:昨季14.6回  今季8.7回(↓) 6節まで9.3回
・ゲインメーター  :昨季868.9m 今季520.7m(↓) 6節まで506.7m
 ※数値を昨季16試合、今季11試合で平均化しています

 第11節まで消化してボールキャリー回数の1試合平均値は昨季を下回る数値となりました。また第6節までの平均値からはボールキャリー回数、オフロードパスは減少、一方でゲインメーターは増加しています。
 
 ただ直近5試合は、いずれも強敵・難敵と言えるチームが揃っていてブレイブルーパスが良い準備をして臨めた試合では優勢に試合を運べましたが、決して楽な試合は1試合もなかったと思います。そのため今回の各スタッツの変化というのはあくまでそういう側面があるということで、それそのものを競うものではないので、勝利できている以上はそんなに悲観するものではないかな、と考えています。

 そんな中で気になったのは6節まで比べた時とのゲインメーターの増加です。前半戦と比較して至近5試合ではパスを用いたATのバリエーションが増えていた印象なので、今季志向してきたキックによるゲイン・テリトリー獲得に加えて昨季まで磨いてきたパス中心のATと強みが加わってくると、これまで以上に強いブレイブルーパスを見せてくれるのではないか、と期待しています👀

考察:デスゾーンについて

 さて今回の考察です。今回はリーグ戦も残り5試合となり、1試合1試合が命懸けのチームも多くなってくるので「デスゾーン」について考えてみたいと思います。

 デスゾーンとは、ラグビーワールドカップ2023で日本代表キャプテンの姫野選手がW杯の戦いを例えて使った表現です。
 決勝トーナメント行きを賭けたアルゼンチン戦について姫野選手はそれを「死闘」と表現し、稲垣選手は「相手を殺すか、自分が死ぬかの2択だ」と口にしました。一つのミスが命取りとなるのがデスゾーンでの戦いです。

(参考)

 おそらくリーグワンのタイトルを賭けた戦いもここからデスゾーンに突入します。ここまで10勝1敗のブレイブルーパスと言えど、決死の覚悟をしている相手から勝利するのは簡単な話ではないと思います。今まで以上の強さが求められる戦いがここからの5戦になります。トッドHCがチームに容赦の無さを求めるのもこういう強度の高い試合に臨むことになるからではないかと考えています。

 さて一方で、今季これまでのブレイブルーパスの戦いの中でもデスゾーンに突入したと感じたシーンが3つほどあります。
①まずは第3節スティーラーズ戦、ラスト数分。7点差となり引き分けを目指してホームの大声援を受けるスティーラーズによる猛攻を凌いだシーン
②次に第4節クボタスピアーズ戦、ラスト5分弱4点差でボールをキープし続けて勝利したシーン
③最後が第9節ワイルドナイツ戦で14人になってから79分にトライを奪われるまでのシーンです

 勝った試合も負けた試合もありますが、前半戦・中盤戦で高いプレッシャーのかかる場面を経験できて、かつ良いパフォーマンスを発揮出来たことはプラスなのではないかなと考えています。(こういうシーンがあまりに多すぎてもレギュラーシーズン最後の最後まで持たない気もします)

 今季これまでPO進出に必要な勝ち点を獲得できていることはとても意味があることですが、優勝を目指すにあたってはここからのデスゾーンの戦いを勝ち切る経験ということがプレーオフでの戦いにとって意味を持ってくると思います。
 PO進出が確定しても、さらに上を目指すために戦うブレイブルーパスが見たいですね🔥

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 さて今回の記事はこの辺りにしたいと思います。次はレギュラーシーズン終了の頃に更新したいと思います。
 今回も最後までお読みいただきどうもありがとうございました!

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