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令和六年猛勇狼士考 その5 ファイナル・セミファイナルの振り返り

 リーグワン2023-24シーズンの全日程が終了しました。ブレイブルーパスは見事に14季ぶりの日本一に輝きました‼️🥹
 この優勝は一朝一夕で成し遂げたものではなく、本当に長年にわたる多くの努力の結晶が積み重なってようやくこの高い頂に届いたものだと思います。
 決勝も準決勝も本当によく準備し、また設計されたゲームプランで見事に勝ち抜くことが出来ました。今回はそのプレーオフ2戦を振り返りたいと思います。


準決勝 東京サンゴリアス戦(2024/5/20)@秩父宮ラグビー場

 準決勝、今季3度目となった府中ダービーは東芝ブレイブルーパス東京が28-20で勝利しました。まずはこの準決勝について振り返ります。

①サンゴリアスが準備した対ブレイブルーパス戦術

 この試合、まず特筆すべき点はサンゴリアスのメンバーです。前回の記事では「準決勝の戦いではこのDFを崩すための準備をしたサンゴリアス🦍vsその対策を上回るために準備をしたブレイブルーパス🐺という構図になる予感がします。」と書きました。
 実際にサンゴリアスはリザーブメンバーにFW6人、BK2人の構成にしてまずFW戦で優位に立つフォーメーションを採用しました。また肉弾戦になった場合にキックによってラインを押し下げられることを考慮して、キック戦の攻防に負けないように2人のBKにはバックスリーを入れてSHのリザーブ無しで臨んできました。対ブレイブルーパスに特化したフォーメーションであったと言えます。

 そしてまたメンバーだけでなく、戦い方もブレイブルーパスの戦い方をよく分析していました。ATを展開する時にバックドアのパスを織り込んで深く早く展開することで、ボールを持つ選手に対するプレッシャーを軽減させ、サンゴリアスが得意とするアグレッシブな速攻を組み立てられるように設計されていました。これにより試合開始早々から大幅にゲインされて試合がスタートします。そしてサンゴリアスが連続で得点し10点のリードを得ることになります。

②大崩れしなかったブレイブルーパスのDF

 サンゴリアスの戦術に受け気味になったブレイブルーパスですが、一方でゴールラインを死守し大きく点差が広がることはないまま前半の終盤へ入っていきます。
 徐々にサンゴリアスのインテンシティに慣れてきたブレイブルーパスはDFからリズムを作り前半終了間際トライを奪うことに成功し、7-10で前半を折り返します。
 おそらくサンゴリアスとしては早々に仕掛けて点差を広げてブレイブルーパスに心理的にもプレッシャーを与えたかったと思うのですが、それをさせなかったのが今季のブレイブルーパスの強さでもあります。

③準備してきたATで仕留めた後半

 後半戦は前半戦終盤の流れに乗ってブレイブルーパスが攻勢に出ます。
まず後半早々に、これまでリーグ戦で準備してきたサインプレーがハマり、ラインアウト時にトランジションギャップを作り出してジョネ選手が大きくゲインし、佐々木選手がトライをとって逆転します。
 このプレーは前回記事の考察②で考えていたことがドンピシャにハマっていたので、決まった時とても嬉しかったです😊

 続いて3トライ目、今度は眞野選手がステップで抜け出し、最後はフリゼル選手がトライを決めます。このプレーでは眞野選手の抜け出しに反応した松永選手やフリゼル選手、コリンズ選手のサポートも見事でした。眞野選手が抜け出す前には小鍛治選手もゲインしていたので、サンゴリアスは前後左右に揺さぶられる結果となりました。
 この後の4トライ目もラインアウトでWTBを中央に位置させる形から大きく展開して得点しました。ラインアウトから、2トライ目と似たような陣形だったのですが、ATのベクトルが異なりワイドに展開したこととサンゴリアスDFの陣形を見て柔軟に変化するATで見事に崩し切りました。

 安全圏の点差15点をつけたブレイブルーパスはその後失点したものの、逃げ切って見事に決勝進出を果たしました。
 この試合、サンゴリアスの準備もプレーもいずれも見事でさすが強豪サンゴリアスと思いました。ただブレイブルーパスはそれを上回るくらい強かった。素晴らしい府中ダービーだったと思います😊

決勝 埼玉ワイルドナイツ戦(2024/5/26)@国立競技場

 8年ぶりにたどり着いた決勝戦。試合は東芝ブレイブルーパス東京が24-20で勝利し、見事に14季ぶりの優勝を果たしました。

 この試合の前にショートプレビューを書いたので、それに基づいて振り返っていきたいと思います。

①ワイルドナイツの序盤の猛攻を凌いだブレイブルーパスDF

 王座奪還に燃えるワイルドナイツは試合開始から攻勢に出ます。ブレイブルーパスは防戦一方になりますが、リーチ主将の渾身のタックルなどでギリギリのところでトライセーブすることが出来たことで、前半は失点を6点に抑えることが出来ました。1トライで逆転できる点差でついていけたことで、ブレイブルーパスはよりまとまってチームとして戦うことが出来たと思います。準決勝同様にDFからリズムを作ることに成功したブレイブルーパスは逆転して前半を折り返すことが出来ました。

②安定したセットピース

 ブレイブルーパスのセットピースですが、スクラム・ラインアウト共にとても安定したことも勝因の一つだと考えています。どちらも1回しか失敗していません。スクラムの失敗はラストプレーのスクラムで、全身全霊をかけてきたワイルドナイツに押されてしまいましたがそれ以外はキープすることが出来ました。セットピースを互角以上に戦えて本当によかったです。ハードワークし続けたFWの努力の賜物だと思います😊

③ワイルドナイツDFをこじ開けたブレイブルーパスの連携

 うまく守りながら戦うことができたブレイブルーパスですが、得点も効率的に重ねることが出来ました。ATについて振り返りたいと思います。

 1トライで逆転可能な6点差で迎えた前半27分、ジョネ選手がコロインベテ選手、ライリー選手、山沢選手といった各国の代表クラスに囲まれながらも見事な身のこなしでゴールラインにグラウンディングしトライ。モウンガ選手のゴールも成功し逆転に成功します。
 ジョネ選手もさることながら、決めてほしい時に難しい角度からゴールを決めてくれるモウンガ選手も見事です👏

 続いて、点差を4点に広げた後半45分、再びジョネ選手がトライを取ります。
 ラインアウトのボールがきれいに収まらず、原田選手がモールのケアに入ったことでエッジ側にいた小山選手もモールに寄ってきて、結果としてエッジ側にスペースが空きました。
 今季、ラインアウトから投げ入れたボールをすぐに折り返して原田選手のランでゲインするATを幾度となく仕掛けてきたブレイブルーパスなので、ワイルドナイツ側もそれをケアしていたと思います。おそらく原田選手に折り返すATの可能性がなくなったために小山選手が移動して結果としてスペースが生まれました。
 そして空いたスペースを見ていたジョネ選手の目や体の動きから杉山選手が咄嗟の判断でジョネ選手へパスし、空いたランコースにジョネ選手がミサイルのように走り込んでトライを取ることが出来ました。ブレイブルーパスとしては準備していた通りのATではないと思うのですが、一瞬の機転でトライを取り切ったシーンだと思います😊

 最後に逆転されて迎えた後半74分の再逆転トライです。今季ブレイブルーパスのATには、ブラインドサイドに1人を残して(主にフリゼル選手)、残りの選手が全員でオープンサイドにATするシーンが何度かありましたが、このトライに繋がったATはブラインドサイド側に誰も残さない渾身のATとなりました。(このAT の前にブラインドサイドにいたリーチ主将がオープン側へ移動していました)

このAT、流れとしては以下のような感じです。
①最後の最後までブラインドサイドに残っていた眞野選手が見事なステップで前に出てフリゼル選手、コリンズ選手がサポート
②杉山選手からオープン側に移動している11人に向けてパスを展開
③先に9sで三上選手がパスを受けて、スイベルパスでモウンガ選手へ。
④モウンガ選手はさらに後ろに位置する森勇登選手へパスすることでワイルドナイツDFを前に引き寄せ、森選手がロングパスで大外にいる松永選手へパス
⑤松永選手のラインブレイクによるゲインに反応し、大外からの折り返しのサポートのために森選手がエッジ側へ移動。
⑥松永選手のパスを受けたジョネ選手が相手に捕まりながらもパスを繋いで森選手がトライ

 ①の眞野選手のゲインの前にも良いゲインをしていてそこでワイルドナイツDFを下げることが出来たので、ブレイブルーパスのリズムで準備してATすることが出来ました。そして④で外側にいたワイルドナイツDFはジョネ選手と德永選手をノミネート(マーク)していたので結果として松永選手が空くことになりました。松永選手が空いていることを把握できていてドンピシャのスピード・コースでパスをした森選手もさすがのプレーです🔥
 試合開始から70分過ぎ、かつ10フェーズ以上を重ねてからこのATができるブレイブルーパスは日本一にふさわしいチームだと思います😊
 同様に、TMO判定によるスローフォワードで取り消しになりましたが長田選手のトライに繋がった最終盤のワイルドナイツのアタックも見事でした。最高の2チームが戦った決勝戦であったと思います。

来季に向けて

 先日のショートプレビューでは「20点程度得点し、それ以下に失点を抑えられれば勝利できる気がします🔥」と書きましたが、結構いい予測ができたのではないかと自画自賛しています😊笑
 ワイルドナイツのラグビーが日本最高峰のものであることは疑いようがありませんが、それに並び、さらにそれを上回るラグビーを展開した今季のブレイブルーパスをとても誇らしく思いますし、応援することができて本当にありがたく思います🐺

 さて、優勝・日本一という目標を達成したとはいえ、すぐにまた来シーズンが始まります。来季はディフェンディングチャンピオンとして戦うブレイブルーパスですが、他チームもリベンジに燃えて準備し始めていますし、2連覇というのは決して簡単なことではありません。
 リーグワンのフォーマットも変更になりますし、どのようなスカッドでどのような準備をしてシーズンに臨むかということを考えると今からワクワクが止まりません😊

 これまでnoteをお読みいただいた皆様には、この場をお借りしてあらためて御礼申し上げます。このシリーズがこの先どうなるかは未定ですが、これからしばらくはテストマッチを楽しみ、また次のシーズンに臨みたいと思います🔥

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