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令和六年猛勇狼士考 その4 第12節から第16節までの振り返りとプレーオフに向けて

 リーグワンのレギュラーシーズンが終了しました。今回はプレーオフに先立ち第12節から第16節までを振り返ってみたいと思います。


2023-24シーズン第16節までの戦績

 2023-24シーズンのリーグ戦が終了しました。ブレイブルーパスは14勝1分1敗で2位でリーグ戦を終え、見事にプレーオフ進出を果たしました!

 ワイルドナイツに敗れ、スティーラーズとの2戦目はドローとはいえ勝ち点65はこれまでの2シーズンであれば首位に匹敵する成績です。しかし優勝・日本一という目標からするとプレーオフ進出はまだスタートラインに立つ権利を勝ち取ったという状況です。本番はこれからですね。
 今回は優勝までのあと2戦に向けて、まずレギュラーシーズン最後の5試合を振り返っていきたいと思います。

第12節 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦(2024/4/7)@秩父宮ラグビー場

 1週間のバイウィークを空けて臨んだ第12節昨季王者スピアーズ戦。結果はブレイブルーパスが22-20で勝利しました。ラストプレーでのコンバージョンが成功し、サヨナラ勝ちを納めることが出来ました。

 この試合、スピアーズは逆転プレーオフ進出に向けてほとんど後がない状況でしたが、SOフォーリー選手が復帰したことでスピアーズは輝きを取り戻し、ブレイブルーパスは非常に強いプレッシャーを受けることになりました。
 しかし結果として80分間通じて試合をマネジメントして無事に勝利することが出来ました。後半20分過ぎくらいからはスピアーズのモメンタムが落ち、ブレイブルーパスのペースで試合をコントロール出来ていたと思います。ハラハラした人も多いかもしれませんが、選手達は冷静に試合を進めてくれたと思います。
 個人的にすごいな、と思ったのは後半24分の森勇登選手のトライにつながるシーンの一連のSH杉山選手のアタックコントロールです。残り時間や点差を考慮するとどうしても前がかりになりそうなものですが、スピードを上げてトライを取り切るのではなく、急ぎ過ぎず左右にパスを散らしながら最後に森選手がいる側のエッジにスペースが空くようにデザインしてアタックを牽引していました。スピードに偏重するとそれだけミスの可能性も高まるので、正しい判断に基づいてプレーしてくれたと思います。強敵相手かつビハインドでのこのプレーは非常に頼もしく感じました。

第13節 神戸スティーラーズ戦(2024/4/14)@秩父宮ラグビー場

 プレーオフに向けて王手がかかった第13節はホームで神戸スティーラーズと対戦。この試合は40-40の引き分けとなりました。これにより得た勝ち点2により見事に2季ぶりのプレーオフを勝ち取りました🔥

 スピアーズ戦同様、スティーラーズもプレーオフ進出に向けて勝利が必要な状況でしたが、序盤はブレイブルーパスのペースで試合が進みます。しかし前半途中からスティーラーズも反撃し、最終的にはラストプレーのコンバージョンキックが外れたことで引き分けとなりました。
 この試合はモウンガ選手が家庭の事情により欠場となり、SOを松永選手が務めました。今季これまであまりSOでのプレータイムはなかったと思いますが、安定したゲームコントロールだったと思います。一方でイグジットのところでは選手達の無理が祟ってボールをロストしてしまい、なかなか試合を自分たちのペースにできませんでした。ただ、この試合の反省点は後に修正されることになるので、今となっては良い学びが出来たと考えています😊

 さてこの試合ではFBとして出場したマイケル・コリンズ選手が非常に良かったと思います。特に選手間の連携において良いサポートをしてくれたと思います。試合に出られない時期が長かったですが、良い準備をし続けていてくれたと感じました。コリンズ選手はパス、ラン、キックと言ったスキルの高さもさることながらチームワーク、戦術理解度の高さやエラーが少ない点が魅力の選手だと思うので、1ミスが命取りになるノックアウトラウンドに向けてまた1人重要な戦力が加わってくれたと思います!

第14節 三重ホンダヒート戦(2024/4/21)@三重交通Gスポーツの杜鈴鹿

 続く三重ホンダヒート戦、結果はブレイブルーパスが8-7で勝利しました。

 プレーオフ確定後かつ次の試合にショートウィークで府中ダービーが控えていたこともあり、これまでプレータイムが長かった選手を休ませフレッシュなメンバーで臨みました。一方でケガで離脱していたリーチ・マイケル主将の復帰戦にもなりました。
 雨が降る中、ホンダヒートの激しいブレイクダウンやボールが滑ることによるハンドリングエラーの多発により、両軍なかなか前に出られない状況が続きますが、後半リーチ選手の登場からモメンタムを徐々に回復させ、最終的に1点差で勝利することが出来ました。
 この試合の良かったところは失点を抑えられたことだと思います。奪われたトライも戦術で崩されて取られたというわけではないですし、スピアーズ戦同様失点が少なかったことで最後に逆転することができたと思います。
 そして何よりリーチ選手の復帰によりチームとしてよりまとまったプレーができるようになったのは良い兆しだと思いました。やはりブレイブルーパスにはこの人が欠かせないですね!

第15節 東京サンゴリアス戦(2024/4/27)@秩父宮ラグビー場

 今季府中ダービー第2戦はブレイブルーパスが36-27で勝利しました。

 終盤に失点がかさみましたが、この試合はほとんどの場面でブレイブルーパスペースで戦えたと思います。決め手は接点の強度とDFのシステムだったと思います。戦い方としては第2節の府中ダービーと同様にラック周辺の選手間のスペーシングをタイトにして固く閉ざし、外側にボールを運ばれたらスライドしながらそのスペースを閉じるように守っていました。サンゴリアスがボールを保持する時間が長かったとはいえ、あえてボールを持たされていたような印象です。
 ブレイブルーパスは自陣22mより前で戦っている間は上記のシステムを徹底していて、当然エッジではゲインされてしまいますが、すぐにDFラインが整うのでその先の攻撃を防御することが出来ていました。自陣22mに侵入されると今度はサンゴリアス側にキックの選択肢がなくなるので、さらに激しく接点で前に出ることが出来ました
 準決勝の戦いではこのDFを崩すための準備をしたサンゴリアス🦍vsその対策を上回るために準備をしたブレイブルーパス🐺という構図になる予感がします。

第16節 静岡ブルーレヴズ戦(2024/5/5)@ヤマハスタジアム

 府中ダービーの勝利により2位が確定したブレイブルーパスですがシーズン最終戦のブルーレヴズ戦は、ブレイブルーパスが59-20で勝利しました。

 この試合、ブレイブルーパスは現時点のベストメンバーで試合に臨みました。昨季以前から磨いてきた接点強度の高さでフィジカル、セットピースに強みを持っているブルーレヴズを終始上回り快勝することが出来ました。ほぼ完璧な試合運びでしたので、おそらくこの試合のメンバーがそのまま準決勝の出場選手のベースになると考えられます。

 また後述する考察以外の注目ポイントとしては、後半17分にピアス選手が交代した後に6番FLフリゼル選手がLOにポジション変更してスクラムやフィールドプレーを実施していた点です。フリゼル選手はLOではあまり出場経験がないですが、昨季SRハイランダーズで数回LOでプレーしています。ピアス選手と交代で入った伊藤選手はLO、BRどちらも出来ますが、フレッシュな分運動量が求められるBRを任せ、フリゼル選手をLOに変更したのかな、と試合中考えながら見ていました。
 フリゼル選手はセットピースでも非常に強力な選手なので、その強度が維持・向上できるチョイスなのであればLOへの変更は有効な選択肢だと思います。この試合限りのお試しの可能性もありますが、プレーオフでも注目ポイントですね👀
 ちなみにこの前の試合の府中ダービーではワーナー選手とピアス選手のスクラム時に4,5番の位置を逆転させて組んでいて、さまざまなスクラム陣形を試行錯誤している様子が見て取れました。セットピースは東芝の代名詞なので、ぜひここを磨いてプレーオフに臨んで欲しいですね🔥

レギュラーシーズンスタッツの振り返り

 振り返りの最後に今回もチームスタッツから戦いを振り返りたいと思います。昨年度スタッツで他チームを上回った項目はボールキャリー・オフロードパス・ゲインメーターになります(再掲)

そして今季スタッツ第11節までのはこちら↓

前回同様、これらを1試合平均に直して比較すると以下の数値になります
・ボールキャリー回数:昨季122.4回 今季117.0回(↓) 第11節まで121.5回
・オフロードパス回数:昨季14.6回  今季9.2回(↓) 第11節まで8.7回
・ゲインメーター  :昨季868.9m 今季505.7m(↓) 第11節まで520.7m

 今季シーズン途中までの傾向と同様にボールキャリー回数、オフロードパス回数、ゲインメーターといった各数値は昨季を下回る結果となりました。
 要因はいくつかありますが、最後の5試合はDFを軸に試合を組み立てていた試合が多かったのでATに関連する数値がさらに減少したものと考えられます。また後の考察にも繋がりますが、フェーズ数をかけずにトライを取るシーンが多かった印象です。そのため必要以上に数値が積み重ならなかったのかもしれません。いずれにせよ試合に勝利出来ているので、悲観することは全くないと思います😊

プレーオフに向けて

 さていよいよプレーオフの勝利に向けて考察を書いていきたいと思います。すでに様々なメディアやイベントでリーチ・マイケル主将がコメントしているように大切なことは自分たちにフォーカスをすること。これを私はブレイブルーパスの強みや得意なことを集中して磨き込むことだと考えています。 
 ブレイブルーパスといえば強みはやっぱり接点無双、猛攻猛守のラグビー。激しいコリジョンやブレイクダウン、セットピースにその魂が宿るチームだと思います。そしてそれらを磨くことはプレーオフの戦いにとって具体的には何を意味するか?ということを今回は考察しました。

考察①DF:スペーシングとリスクの最小化

 まず一つ目はDF。選手間の密度に関わるスペーシングについて考えたいと思います。
 スペーシングについてはこれまでの記事や本稿のサンゴリアス戦のところでも触れましたが、強みである接点の強さをさらに上げるためにスペーシングをやや絞ってDFを実行することで、相手のATを封じ込めて今季は数々の強敵に勝利することが出来ました。
 またこのスペーシングについて直近の試合では新たな方向性が加わっているように感じています。手前味噌で恐縮ですが、再度同じことを書くのも変な気がしたので自分のXでのポストから引用します↓

 これは第15節サンゴリアス戦のマイケル・コリンズ選手のトライにつながる一連のATに対する引用ポストです。このポストの前、第13節神戸スティーラーズ戦を引き分けた際にトッドHCやゲームキャプテンの原田選手は口を揃えてオフロードパスで無理をしてしまったことを反省していました。そしてこのコメント以降、ブレイブルーパスはリスクがある場面では極力無理をしないように、孤立しないようお互いをケアするような戦術に修正した気がします。
 引用したポストはATの場面ではありますが、ATで前がかりになった時に途中でインターセプトやターンオーバーされてもすぐに周囲の選手がネガティブ・トランジション(守備への切り替え)に反応できるように、AT時にも選手間のスペーシングを少しタイトにしているように感じました。コリンズ選手のトライは、DF面での学びが活かされたシーンだと感じました。

 またリーチ主将が言うようにブレイブルーパスはどちらかといえば守備のチームです。簡単に失点しないように注意し、守備からリズムを作っていくブレイブルーパスの戦い方はプレーオフでも重要だと思います。
 プレーオフに参加している他の3チームはインターセプトやターンオーバー後のポジティブ・トランジション(攻撃への切り替え)が非常に巧いチームばかりなので、ATでミスしないことはDFにおいて重要だと思います。ロースコアゲームになればブレイブルーパス優位の試合展開になると予想しています。

考察②AT:DFギャップと少人数アタック

 考察①のDFの話に続けて次はATに目を向けたいと思います。DFを軸に試合を作るブレイブルーパスですが、今季は短時間でスコアするシーンも多く、それが試合を優勢に進められるキーになっていると思います。
 攻撃のタクトを振るい、チームのパフォーマンスを向上させているのはSOモウンガ選手ですが、モウンガ選手がいない時も様々なATの選択肢が準備されています。

 最近の試合におけるATで興味深いシーンは最終節ブルーレヴズ戦の2トライ目と3トライ目の起点となったラインアウトからのプレーです。

 いずれもラインアウトからそのサイドのWTBが後ろから走り込むこととパスを組み合わせて、相手のDFに生じるギャップを突いて大きくゲインすることに成功しています。
 セットピースは参加する選手と参加しない選手の間にどうしてもスペースが生じるため、セットピース後、DFラインを整えようとする時の動きを逆手に取ってそのギャップにATを仕掛けるのは理にかなっていると思います。
 特にブレイブルーパスは接点勝負に自信があるフィジカルの強い選手や爆発力のあるランナーが揃っているので、セットピースのみならずこう言った少人数の局地戦で仕掛けて崩す戦術は合っている気がします。
 またモウンガ選手はDFラインにギャップを生み出すことやそれを活かす技術は抜群に上手ですし、走力のあるフロントローや強いボールキャリーができるLO、BR、BK陣が揃っているのでプレーオフ進出チームといえど簡単には止められないと思います。

 以上、考察①②を合わせると、全員で守って少しのチャンスでもしっかりものにしてスコアを重ねることが出来るとブレイブルーパスの勝利が近付いてくると予想しています😊
 相手チームはブレイブルーパスの圧力を抑えるためにキックを使って背走させたり、あるいはブレイブルーパス以上の接点強度でぶつかってくるか、またはそのどちらも準備してくる可能性があるので、どちらが上回るか楽しみですね🔥

最後に

 本シリーズは年初めに思いつきで初めて見たのですが、なんとかレギュラーシーズンを通して記事にすることが出来ました。お読みいただき本当にありがとうございます。
 今季最後の猛勇狼士考は決勝戦が終わった後に記したいと思います。引き続きお付き合いいただければ幸いです🙇

 泣いても笑ってもラスト2試合、全力で応援していきましょう!!!


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