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地方自治とシステム標準化は共存できるのか~ 標準化と地方自治の自主性・多様性~

前回記事で、GPTから、地方自治とシステム標準化は4つの意味で相反するのではないかと出力されたもののうち、①について検討したいと思います。

標準化と地方自治の自主性・多様性:
地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化は、効率性と一体性の向上を目的としています​​。
しかし、地方自治の基本は、各地方公共団体がその地域の実情に応じて自主的に行政を行うことです。標準化により、地方公共団体の独自性や特色が失われる恐れがあり、これは地方自治の多様性と自主性の原則に反する可能性があります。

前回記事より

まず前提として、地方公共団体情報シス テムの標準化に関する法律(いわゆる「標準化法」)は、第 32 次地方制度調査会において、地方公共団体間で共通する一定の事務を処理する情報システムの標準化を進める法制が提言されたことから実現したものです。
参考リンク:総務省|地方制度調査会 (soumu.go.jp)

第 32 次地方制度調査会では、システム標準化の取り組みの方向性に関し次のように提言していました。

基幹系システムについては、個々の地方公共団体でのカスタマイズや共同利用 に関する団体間の調整を原則不要とするとともに、ベンダロックインを防ぎ、事業者間の システム更改を円滑にするため、システムの機能要件やシステムに関係する様式等につい て、法令に根拠を持つ標準を設け、各事業者は当該標準に則ったシステムを開発して全国 的に利用可能な形で提供することとし、地方公共団体は原則としてこれらの標準準拠シス テムのいずれかを利用することとすべきである。
具体的には、
・標準の設定に当たっては、国は、地方公共団体間の調整の負担を軽減するため、地方公共団体や事業者の意見を踏まえた標準を設定し、地方公共団体は、システムや業務処理の実態を標準に反映させるとともに、一部の団体の創意工夫によるシステム機能改善等を他の団体にフィードバックできるようなプロセスを設けること
・ 標準を設定する対象事務の範囲については、標準化の目的や様々な類型の事務がシステム上一体的に処理されている実態を踏まえ、標準化の効果が見込め、地方公共団体に標準化のニーズがある事務を対象とすること
・ 対象事務の所管府省が複数にまたがる場合、分野横断的な事項をはじめとする府省間の調整が適切に行われること
・ システムの標準化に伴う業務プロセスの標準化に当たっては、団体規模による差異とともに、業務の内容や組織のあり方について地方公共団体が有する自主性に配慮すること
・ 標準を設定する主たる目的が、住民等の利便性向上や地方公共団体の負担軽減であることを踏まえ、地方公共団体が、合理的な理由がある範囲内で、説明責任を果たした上で標準によらないことも可能とすること
が必要である。

2040 年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申8ページ目

なお、地方制度調査会は、日本国憲法の基本理念を踏まえて現行の地方制度の検討を行うために設置されている会議体です。

地方制度調査会設置法
この法律は、日本国憲法の基本理念を十分に具現するように現行地方制度に全般的な検討を加えることを目的とする。

この提言を受けて成立した標準化法の概要は以下です。

総務省ホームページより

ここで、先ほどの提言の一部が分かりにくくなっていることが分かります。

・ システムの標準化に伴う業務プロセスの標準化に当たっては、団体規模による差異とともに、業務の内容や組織のあり方について地方公共団体が有する自主性に配慮すること

再掲

一方、地方公共団体情報システム標準化基本方針(令和5年9月)では以下の方針が示されています。

○ デジタル3原則に基づく業務改革(BPR)やデジタル処理を前提とした地方公共団体のベストプラクティスについて、その内容を反映した業務フローを基に標準化基準を策定又は変更することで、地方公共団体におけるデジタル化の基盤を整備する。

地方公共団体情報システム標準化基本方針抜粋

実務では、各標準対象業務システムについて、標準仕様書案に対して全国意見照会(照会期間は2週間から1か月程度)が行われ、各地方公共団体が意見する形を取っています。
参考リンク:住民記録システム標準仕様書 全国意見照会結果(詳細)

結論から言うと、現時点で「地方公共団体のベストプラクティスについて、その内容を反映した業務フローを基に標準化基準を策定」はできていません。

各標準対象業務の検討会には市町村・システム事業者の方が構成員として参加していますが、人口規模等で大きくシステム機能が異なることから、新たに標準仕様の指定都市における課題等検討会が立ち上がる等、やや迷走している感が否めません。

そのため、少なくとも令和7年度末時点では地方公共団体のベストプラクティスが反映されたシステムは運用開始できないと思われます。
地方公共団体のベストプラクティスを反映するための改定スケジュールが示されていますが、今のところいつから実施されるかは示されていません。

デジタル庁資料:地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化のために検討すべき点について抜粋

地方制度調査会の提言をそのまま受け取れば、「全ての市町村が同じ標準仕様を満たす」のではなく、少なくとも当初は人口規模ごとに機能要件を整理することが望ましかったのではないかと思います。(結果論であることは理解しています。)
そのため、多くの業務で手戻りが生じている感が否めません。
また、提言が求めていた地方公共団体の自主性は、残念ながら標準仕様システム運用時点では見込めないと思われます。

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