なりゆき五行連載小説「黒猫」

歩く描写から始まる物語にうんざりしている私は、今まさに歩いている…。夏の夜長を散歩に出掛けたAは小説の書き出しを頭で反芻した。陳腐な言葉とは袂を分かったはずのAは未だに素直な表現ができないでいる。すると、公園の草むらから黒猫がやってきて、Aの五メートル前をのろい足取りで先導しだした。Aはこれは好奇だと、猫嫌いを忘れて尻尾を追いかける。

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