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秋葉街道の宿場町、水窪

 飯田線、愛知県の豊橋から長野県の辰野までを結ぶ路線だ。山を縫うようにして進むこの路線には、秘境駅が点在している。そんな飯田線のうち、今回は水窪を訪れたのだった。

 旅の始まりは、湯谷温泉。昨日はここで一泊していた。大きい温泉街ではないものの、湯に浸かり、川を眺めると心地よい安堵感があった。
 宿をあとにして湯谷温泉駅へ。自分の他に一人いるだけで、静かな無人駅だった。7時台の列車に乗ると、ちらほらと乗車されている方の姿が。一体どこへ向かうんだろう?

湯谷温泉の前で1枚

 車窓からの景色を見ていると、車掌さんがこちらへ向かってきた。そういえば、無人駅だった。「水窪までお願いします」実は、初めてのやりとりだった。お金を渡して、電車内で切符を買う。旅の始まりを実感するには十分すぎる瞬間だった。 
 電車に揺られること約1時間。目的地の水窪に到着。降りたのは自分だけ。電車を見送り、辺りを見渡すと山。突然山に放り出された不安と、これから始まる町歩きへの期待が入り混じった不思議な気分だった。  

 駅の近くに急な階段を発見。これを降りていくと、町へと向かう橋が見える。これを渡れば水窪…。はやる気持ちをおさえて、朝ご飯。手頃なベンチがあったので、買ったおにぎりをここでいただくことに。 

橋の先に見える水窪の町並み

 元気も出たところで水窪へ足を進める。目的地のみさくぼ商店街へと到着。圧巻、ただその一言だった。どこまで道が続くのかわからないほど、町並みが長い。まずは、町並みの一番北にあたりそうな大原集会場へ向けて歩くことにした。高低差があって向こうまで見通せる道、カーブが続いてうねるような道が出現してきて、もう楽しい。    

 途中、住民の方と顔を合わせると、「何かお探しですか?」と声をかけてくださった。自分があちこちに視線を動かしていることに気づいたのだろう。そのお気遣いに感謝の言葉を伝えて、町並みを見に来たんですと一言。すると、ゆっくりしていってくださいねと暖かい言葉を頂いた。

 最初に来た道まで戻ってくると、今度は水窪大橋の方へ。文具店、スーパー、金物屋、和菓子店など様々な店が並んでいるのがわかる。1つの通りにぎゅっと詰まったこの感じが好きだ。


 途中ストリートビューがなさそうな階段付近も散策。階段から街道を見下ろすこの道も好きだ。途中に訪れた塩の道休憩所は、町並みを見下ろせる絶景スポットだった。

階段付近を散策
休憩所からの景色

 そういえば、と思い出して時計を見る。あと45分程度で電車の時間だ。町を歩いていると、驚くほどのスピードで時間が過ぎてゆく。このときもそうだった。
 町を歩いて小腹がすいてきたので、和菓子屋さんで栃餅を購入。水窪の名物らしく、せっかくなので買うことに。結局時間ギリギリまで歩いてしまった。ホームの待合場所に着いて、ふぅと一息。間に合った。ちょっと時間があったので、購入した栃餅を開封。控えめな甘さながら、歩いたあとにはよく効く。

名残惜しいけど出発。また来るね。

 列車が近づく音を聞いて、栃餅を飲み込む。最高に楽しい旅だ、そう実感しながら次の町へと向かっていくのだった。

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