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その決意が揺らぐまえに…

還暦を迎えると、しわやシミが出てきたり、白髪染めをしたり、若い頃は出来ていたことが出来なくなったり、身体に不調がでてきたりする。そんな現実から目を背けようと、若かった過去を懐かしんだり、老いていく将来に不安を積もらせたり、今を生きることが疎かになっていた。
 
50歳を過ぎた頃、近くの字が見えにくくなってきた。黒く小さな文字は、まるで蟻が行列しているように見えてきた。
幼い頃、祖母が新聞を読む時にいつも虫メガネを使っているのを不思議に思い、
「なんで、こんなに近い字が見えないの?」
って、聞いたことがあった。
祖母は、
「あなたも、おばあちゃんの年になったらわかるわよ」
と、笑いながら答えてくれた。その祖母の顔が、ちょっと誇らしく感じた。
祖母の生き方は、『年をとる』ではなく、『年を重ねていく』なのだと思った。同じ事柄でも、『年をとる』と聞くと、身体の不調などのネガティブなイメージが思い浮かぶ。しかし、『年を重ねる』と聞くと、今までに得た経験や知識など、ポジティブなイメージを感じるのは、私だけだろうか?
シミやしわも、『今まで歩んできた人生の年輪』なんて考えたら、ちょっとカッコいいんじゃないかと思えてきた。

還暦は、干支を一周して第二の人生のスタートと言われている。
第二の人生のスタートを機に『もっと自分の心の声を聞いてあげよう』と思った。産まれたばかりの赤ちゃんも、老いとは無縁と思っている若者も、偉いといわれている人達も、お金をたくさん持っている人達も、どんな人も年をとっていく。私達は、平等に老いを与えられているのだ。
ならば、他の人や周りの様子を頭であーだこーだ考えて、自分の気持ちに蓋をするのではなく、まずは、『やりたいか、やりたくないか』をシンプルに自分の心に問いかけてみよう。そしてこれからは、良い意味で開き直り、自分を楽しませてあげようと思った。

幼い頃から、自分の感情を言葉で伝えるのが苦手だった私は、日記を書くことで、気持ちの整理をしていた。
『いつかエッセイを書いてみたい』と思いつつ雑務に追われ、気が付いたらこの年になっていた。この年になったら、『もう年だから…』など、自分で言い訳を考えて躊躇している。
なので…
『やりたい』その決意が揺らぐ前にエッセイを書いて投稿してみた。

#創作大賞2024 #エッセイ部門 #還暦 #エッセイを書いてみた



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