【エッセイ】これって自販機ですか?
モノの見え方はひとそれぞれだ。
よく言われる言葉である。
夕方日が暮れだしたころ、駅のホームを歩いていた時の話だ。
私は喉が渇いており、自販機を探していた。
やっと自販機を見つけて麦茶を買いにいくと、女子高生たちが自販機のまわりに集まっていた。
早く麦茶を買いたい気持ちをおさえて、女子高生が飲み物を買うのをまっていた。
しかし彼女らは、少し時間をかけて自販機の写真をとっただけで、何も買わずに乗車待ちの列に合流していった。
頭の中に「なぜ?」が浮かんだが、それを押し込めて、のどの渇きを潤すべく麦茶を買ってその場で飲んだ。
その時、目の前の自販機を見ながら「あー、そういうことか」と、やっと気が付いた。
夕方、暗くなってきた駅のホームで、彼女らは自販機の明かりを自撮り用の照明に使っていたのだ。おそらく。
誰かにとっての自販機は、誰かにとっての照明だったりするのだ
モノの見え方はひとそれぞれである。
でも、やっぱり私にとって自販機は自販機にしかみえないなーと思いながら、やってきた電車にのった。
いつもより電車の照明が明るい気がした。
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