御本拝読「小さな星の本」監修:渡部潤一
小さなシリーズ
小さな恋のうた……ではなくて、小さな本のシリーズ。モンパチも大好きだけども。こちらは、リベラル社の小さな本シリーズの中の一冊です。昨今、こういう、文庫本より一回り大きくて分厚いちょっとしたお菓子箱みたいな本のシリーズ、他からもちょいちょい出てますね。好きです。
春休み&人事異動でまた繁忙期に入る図書館ですが(また休館日以外朝から晩まで休みのないシーズンに突入……)、こういう時、変に頭を使ったり続きを気になったりする本を読むのは正直しんどい。色々とあるまじきセリフですが、本を読めるって、余裕がないと厳しいですな。そんな時、1分でも2分でも本を読もうと思ったら本書を開いてます。
小さな本のシリーズすべてに言えますが、お値段以上の装丁や絵や写真の美しさ。優しい色彩のイラストや鮮やかな写真を眺めるだけでも癒される。まあ、そもそも美しいものばかりをテーマにしていることもありますが、きょうびフルカラーでこの良い紙使ってこのお値段なのはお得です。……せこいこと言ってるぜ……私……。
絶妙のチョイス
こういう、テーマに沿った事典、図鑑、アンソロジーみたいな本は何を選ぶかどういう構成にするかが一番の肝だし難しいと思う。特に、ページ数や紙面サイズが限られていればいるだけ大変。小さな本たちは、みんなその素材のチョイスが素晴らしい。
その点で、本書は他の小さな本たちの中でも群を抜いてセンスが光った一冊。自分が好きだから注目してしまうということもあるけど、特に天体にまつわる文学や絵画の紹介。絶妙なその選択と並びに、思わず読んでいてニヤッとしてしまった。
少しネタバレすると、文学では宮沢賢治の「よだかの星」はじめ、詩や俳句・短歌で天体を扱ったものがチョイスされているのだが、単に「綺麗、神秘的」な天体を描いたものではなく、月や星を触媒にして繊細な感情の機微をあらわすものばかり。これは、日本人・日本の風土に親しんだ者にしか書けないものだと、私は思う。
まあ、ぶっちゃけてしまうと、私が子供の頃からずっと大好きな三大詩人の作品をぴたりと載せられていたから、嬉しかったのです。きっと、ご存命の作家や詩人の中でもっと有名なものもたくさんあるだろうに、この三人を選んでくれたことが。この本にかかわってくださった方が、作品にも天体にも深く静かな愛を注いでくださったことが伝わる。
絵画も、有名どころからニッチなものまで、しっかりと網羅されている。この本で知って、他の作品も知りたいと思いたいものばかりで、解説も優しい言葉が並ぶ。
天体にまつわる言葉や、絶景の写真に添えられるコラム。本書の中の言葉もどれも優しく静かで、本当にプラネタリウムにいるような気持ちになれる。
本というよりも
ここまで、本書を膝の上に置きながら(他の本のことを書く時もそうだけど)この文章を書いているが、実は購入してから結構時間が経っているのにいまだにどこに置いたらいいかで迷っている。結局、私のベッドサイドやPCの傍をうろうろし、今は食卓の隅にいることが多い。
狭いワンルームのくせして本棚はたくさんある部屋なのだから、文庫本の並びや芸術書の並びに置けばいいのだが、どこもしっくりこない。というか、本棚にしまってもすぐに取り出してぺらぺらめくるから、どこにも落ち着かないのだ。
この文章を書いていて、ふと気づいた。もういっそ、これはぬいぐるみコーナーに置くべき本なのかもしれない。恥ずかしながら、私は年甲斐もなくかわいい動物ものが好きで、我が家のCD・DVDラックの上や前はぬいぐるみコーナーと化している。愛するナマケモノ、ウォンバット、キーウィ、モラン(ムーミンのキャラクター)などのゆるくてとぼけたふわふわたちが鎮座する。
たまに撫で、見つめ、手に取ってふわふわする。きっとここは、私の何も考えなくていい癒しコーナーだ。本書は、ここに一緒にいてもらうべきなのかもしれない。
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