御本拝読「ラーメン赤猫」アンギャマン

 久しぶりの御本拝読。私は現在、絶賛体調不良で朝から病院行脚をしております。来週まで検査や健康診断が重なり、職場と同じ頻度で各種病院に行く予定。いや、仕事休めよって話なんですが、非正規時給勤務のため休むと生活が成り立たなくなるので。それに、そもそも立ち上がれないくらいのめまいで欠勤したのが体調不良の最初だったんでこれ以上休むわけにも。
 ……体調崩したのも仕事のせいだとは思ってるんですがね。職場で言いはしませんが。私生活のことは今回あまり関係ない。仕事での体力的な面でも精神的な面でも、ストレスが。とにかく8・9月が忙しくて本当に心身ともに休めてなかった→睡眠うまくとれない→頭痛・めまいが朝起床時にひどくなる→寝るのが怖くなる→睡眠とれなくなる→吐くわ下すわ何しても洗濯機に放り込まれたぐらいにぐるぐるするめまいに襲われる→寝るのが怖く……というドツボ・オブ・ドツボ。一応薬はもらいましたが、私は果たしてちゃんと明日から勤務できるのだろうか。
 そんな時、ちょっと前のめちゃくちゃ疲れてた深夜にたまたま観た「ラーメン赤猫」(アニメ)。もちろん、これは漫画で創作のお話というのは分かっていますが、今の自分が架空世界で救われた気がしました。アニメが終わってしまってから既刊のコミックスを買うという……ええ、ゴールデンカムイと同じパターンですよ……。今ちょっと小難しい本読めない(文字が目を滑っていく……)ので、毎晩ゴールデンカムイとラーメン赤猫を読むという日々。

※以下、できるだけネタバレしないようには書きます

 二足歩行・人間の言語を解し話すことができる猫たち(ネコ科の動物たち)が、ラーメン屋さんを経営する話。って、一言で終わらせちゃうとこうなんですが、こちらの作品、ゆるゆるギャグとかほんわか癒しとはちょっと違います。猫が飲食業や経営を、真面目にヒトに混じってやっている。だから、法律や経営や接客の話もやけにリアルだし、すごく一生懸命に生きてるのがかっこいい。個人的に太く強いタッチの線が好きなので、この絵も猫たちの生き生きとした力強さを感じていいなあと思います。
 特に自分がずっと接客業をやってるから沁みるのかもしれませんが、迷惑なお客さんや接客技術についての話は毎回深く頷くことが多いです。そうそう、こういう客いるいる……なんだけど、この漫画の中では理不尽や礼を失した客はちゃんと制裁されるし、おそらく考えられる中で最も穏便で有効な対応がとられています。猫好きが集まる店だからこそ起こる暴走ファンに対しても猫たち自身が非常にクールに見つめていて、そこも好き。そう、何かを好きになって暴走してしまうって、はたから見るとこういう風に見えるよねっていう……この観察眼、多分、もとが暴走気味の猫好きでは描けない視点。作者・アンギャマン先生の情熱と冷静の配分というか、まさに味のバランスが非常に良い
 すみません、実は私も珠子さんと一緒で犬派のため、それぞれのキャラ萌えはあまりしていなくて、みんな好きです。ねこちゃんかわいい、じゃなくて、みんな個性的で一生懸命働いて、かっこよくて。
 今、自分が仕事や職場について悶々としているから余計に考えてしまうのは、ラーメン赤猫の職場環境のすばらしさ。アニメ一期(あれは続編あるというエンディングでしたよね?)がブラックな前職を病んで辞めてしまった珠子さんのホワイト企業での正社員登用というゴールであまりにもきれいにまとまっていますが、漫画の方では過去編含めてさらに深い所まで話が進んでいき、職場としてのラーメン赤猫に注目して読んでしまいます。
 まずパートタイムで社会復帰、半年以上真面目に働き正社員登用、という流れがこれほどきちんと描かれることがいい。いや、非正規で正規登用試験落ちたり試用期間で切られたりな経験のある私は羨むべきところかもしれんが、みんなと一緒に拍手したほどに嬉しかった。真面目で仕事に手を抜かず、周りの観察もできてヒトにも猫にも親切なまっとうな社会人が、きちんと報われる話がどれだけ心の救いになるか。そんなの現実世界で稀だって知っている落ちこぼれ社会人は、羨ましいというかこれはもう究極の理想郷の話だと思って読んでます。
 ポスター制作という個人の特殊技能を生かした業務も、ちゃんと料金を払おうとする経営者。多くの仕事でこんなの料金払ってもらうどころか「得意でしょ、ちゃちゃっとやってよ」って無茶振りされて無料働きさせられる案件。誰かが急病になっても、残ったみんなが上手に仕事を分担してちゃんとまわせる現場。休むなら代わり探せ、誰かがいないとちゃんと仕事まわらないから休めない、が当たり前に跋扈しているところで働いてますと、そうだよしっかりしてくれよ経営者及び管理職、と天を仰ぐところ。
 何より個人的に刺さったのは、絡まれる店員(珠子さんやハナちゃん、時々サブちゃん)を、他のメンバーやお客さんがちゃんと助けて守ってくれるところ。そんな職場、ないですよ現実に。でも、そうでなきゃいけないんですよ、現実も。まあ、お客さんが店員を守るべき(他の客に絡まれてる時に助けに入るべき)とは思いませんが、最低限経営者や責任者やその場の管理者は従業員を守ってくれよ!(切実)種類を問わず、接客・サービス業って、勘違いしたお客が一定数は来ますからね。
 
 体調悪い癖に何を長々と語ってんるんだと、今ちょっと我に返りました。明日から仕事……合間に病院と検査……飛んでいくお金……休めない仕事……。ぐるぐる考えても仕方ないこういうのを忘れる、というか、一時的な心の避難所として、今の私にはラーメン赤猫
 あと、最後に。作中で、割と自然に猫たちも珠子さんも「ありがとう」「ごめん」を言い合ってます。言い方は違っても、ちゃんと感謝も謝罪も伝わるセリフやコマが多い。それが一番印象深いかもしれない。働くって本来こうというか、感情も意思もある者同士が同じ場所で働くならこうあるべきだなあと思う。こうやって書いてても、ファンタジーなんだけどリアルで、リアルだけどファンタジーな不思議な漫画です。

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