回ってまわって私のもとに

また原田マハさんの本を読んだ。
今回読んだのは『楽園のカンヴァス』だ。
例のごとくBOOK・OFFに行き、少しの時間悩みに悩んで、選んだ。


高校生の時、同じ原田マハさんの『暗幕のゲルニカ』を読んだ。この作品はピカソと『ゲルニカ』にまつわるフィクションだったが、今回私が読んだ『楽園のカンヴァス』はアンリ・ルソーの『夢』にまつわるアートミステリーだ。
西洋美術には疎いため、恥ずかしながらルソーについて知ってるような知らないような感じだったのだが、作品を調べて見たら「見たことある!」と、ピンとくるくらいには特徴的な作品を描く芸術家だった。
ルソーは生前あまり評価されなかったが、彼を見いだしたのがピカソだったという。
ピカソもルソーも想像もできないくらい前の時代の人というイメージがあるが、調べてみると意外と100年くらい前に生きていた人だったりする。調べると、ピカソの没年は1973年だった。ほんの50年前。時間というのはなんとも不思議なものである。

私はこういう、物語の全体像が見えないが、色んなところに謎が張り巡らされ、それが一つ一つ解き明かされていく、そして最後には全てのピースがガチっとはまる、そんな物語が好きだ。
謎が何なのかを考えられるほど頭は良くないので「なんだろう??」とワクワクしながら読んでいく。その過程が本当に楽しい。胸がドキドキする。物語にどんどんのめり込んでしまう。
本作を読んでいる時も、最初は章ごとに読み進めていたのだが、気づいたら全部読んでしまっていた。そういうことがよくある。

惜しむべくはこの物語があくまでも「フィクション」なことだ。こんなにワクワクするストーリーがフィクションなのだ。ルソーもピカソも『夢』もMoMAも実在するが、ルソーの『夢をみた』もそれを巡るティム・ブラウンと早川織絵の対決も何もかも原田マハさんの頭の中で生み出されたものに過ぎないのだ。
もちろん史実と物語の区別はつけているつもりだ。史実という実際に起きた出来事、人物、そこから生まれた現象は存在するが、分からないことも多い。その分からないという余白があるからこそ生まれる物語があると思う。それを私たちは楽しんでいるに過ぎない。
でもたまに「本当にこんなことがあったらいいなあ」と思ったりする。
そう思うくらい、いいでしょう?

あれ、なんの話ししてたんだっけ。

とにかく『楽園のカンヴァス』はめちゃくちゃ面白い。これが本当だったらなあ、なんて思うくらいに。
一つ一つの作品に、まず作者の想いがあり、それを残そうとしてくれた人がいて、その想いが何世代にも渡って紡がれて、現在まで残っている。
そして私たちはその作品をこの目で見ることができる。当時の人々と同じように。
そしてこういう物語から新しい作品を知ることができる。
そうやってどんどんグルグル回っていくんだろうなあ、なんて思った。

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