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割と若くして乳がんになった話⑤ 〜CTとMRIとセカンドオピニオン〜

CTもMRIも「造影剤」というものを点滴で投与しておこなう。
これによって体内の様子がより鮮明に写るとのことだ。

CTでは身体のほかの部位にがん転移がないか、何かしら異常がないかを調べる(のかな?)。
造影剤を身体に入れると温かいものが一気に全身の血管に行き渡り、なんともいえない感覚になる。
特にお尻のあたりにジュワーッと温かい感覚があるため、「おもらしをしてしまった」と思う人もいるそうだ。

撮影自体はすんなり終わったのだが、アレルギー体質の私は造影剤の副作用でちょっとした発疹が出てしまった。
摩擦や汗、金属などの刺激ですぐにじんましんが出てしまうため、自分的にはいつものことくらいに思ったのだが、看護師さんたちは大慌て。
副作用で一番怖いのはアナフィラキシーショックによって呼吸ができなくなることだそうで、リスク回避のため造影剤を早く身体から出すための生理食塩水および抗アレルギー剤の点滴が投与された。

CTを撮り終えたらとっとと帰るつもりだったのに、そんなわけで結局そのあと1時間も点滴処置を受けることとなった。
ほどなくして発疹は治まり、無事に帰宅。

MRIは別日に受けた。
MRIでは胸の腫瘍の状態をより詳しく調べる(のかな?)。
CTとはまた違う造影剤を使うのだが、こちらのほうが副作用は起きにくいということだった。

実際なんの副作用も出なかったので良かったが、撮影自体が大変だったので疲れてしまった。
なにせ40〜50分の間、ずっとうつ伏せの姿勢のまま一切動いてはならないのだ。
ガッコンガッコンと大きな音が鳴り響く中、ひたすら静止している。
ヘッドホンからおしゃれなジャズが流れていたので、とにかく集中して音楽に耳を傾けていた。

そして数日後、CTとMRIの結果を聞きに行った。
右胸のがん細胞が乳管を通って乳輪のほうに侵食していっているため、右胸の全摘をしたほうが良いとのことだった。
モニターでMRI画像を見せてくれたのだが、360度くるくる回転させながら腫瘍の全体像を見ることができて興味深かった。

手術前に抗がん剤をやって腫瘍が小さくなれば部分切除でいける可能性もあるそうだが、抗がん剤が効くかどうかは分からないとのこと。
また、乳管に侵食していっている部分には効かない可能性が高いということだった。
手術で体力が落ちることを懸念していた私は、効くかどうか分からない抗がん剤をやって不要に体力を消耗したくないなと思った。
何よりもとっとと腫瘍を取ってしまいたいという気持ちが強かった。

乳房再建についても聞いてみた。
手術と同時に再建したい場合、がんの手術と再建の手術は執刀医が違うため、両者のスケジュールを合わせないといけないとのことだった。
そうすると手術自体が後ろ倒しになってしまうため、早く腫瘍を取りたいなら先にがんの手術を受け、落ち着いてから再建するということになる。
がんの手術だけならすぐにできるが、同時再建するなら最短でも1ヶ月以上先になりそうとのことだった。

事前にネットで再建手術をした人たちの写真を見ていたのだが、自家組織を使った人のお腹には大きな傷が付いていた。
時間が経てばその傷跡も目立たなくなるのだろうが、率直に怖いなと思ってしまった。

一方、人工物を使った再建の場合はメンテナンスが大変そうだなと思った。
定期検診はもちろん、10年以上経ったら入れ替える必要があるかもしれないとか、悪性リンパ腫になるリスクがあるため過去にリコールされたとか、考えなきゃいけないことがいろいろある。

それに年を取ったら自分の左胸は垂れていくのに、人口の右胸だけいつまでもプルンとしてるのも変かなと思った(修正できるのかもしれないけど)。
あとから再建するためには皮膚を一年くらいかけて伸ばすみたいなことも書いてあって、それも煩わしいと思った。

そんなわけで再建にはあまり前向きではなかったのだが、同時再建できるのであれば検討してみたい気持ちも少しはあった。
しかし手術が1ヶ月以上も先になるのは嫌だなぁ。
とにかく悪いものは早く身体から取ってしまいたい。
そう思った私は、「とりあえず今は再建は考えていません」とS先生に伝えた。

それからセカンドオピニオンを受けたい旨も伝えた。
S先生には「先生のことはもちろん信頼しています。でも、今の100%の信頼を120%にするためにもセカンドオピニオンを受けたいです。」と伝えた。
それから「受けなくてもいいかなという気持ちもあるのですが、あとから『やっぱり受けておけば良かった』とか『もしあの時受けていたら判断が変わったのかもしれない』とか思っちゃう気がするんです。」とも伝えた。
S先生は「もちろんです。ご自分が納得するためにも受けたほうがいいと思いますよ。」と言ってくれた。

セカンドオピニオンは自分で病院を指定して、今の病院から予約を入れてくれた。
第一希望の病院は予約がいっぱいで1ヶ月以上先となってしまったため断念したが、今の病院がお勧めしてくれた別の病院が幸いにもすぐに予約が取れた。
乳がんの実績が高い大学病院で、むしろここで正解だった。

セカンドオピニオンの先生の見解は、S先生とまるっきり同じだった。
がん細胞が乳管に侵食しているので全摘したほうがいいだろう。
先に手術をして、そのあと必要に応じて抗がん剤、それからホルモン療法をするのがいいだろう。
抗がん剤の必要性はまだ何とも言えないが、若いからやったほうがいいだろう。オンコタイプDXをやってから決めてもいいだろう。
術前の抗がん剤をやってもいいが、乳管に侵食した部分には恐らく効果がないため、まずは手術をやったほうがいいだろう。
年齢的に遺伝子検査をしたほうがいいだろう。

この先生も非常に丁寧な対応で、こちらの病院もなかなかいいなと思った。
乳がんの症例数も多いので技術的にも信頼できる。
しかし大きな病院のため患者数が多く、あちこちに行列ができている。
利用システムも複雑で分かりにくく、スタッフ間でいまいち連携が取れてないと感じることがこの日だけでも3度ほどあった。
今の病院はそこまで大きくないからか、医師や看護師の目が患者に行き届いている気がする。
なにより医師も看護師も優しい。本当に優しい。
スタッフがみんなフレンドリーで、患者の気持ちにすごく寄り添ってくれていると感じる。

そして私はS先生のことをとても信頼している。
初めて受診した時にすぐさま乳がんを疑ってくれたこと。
検査結果が出る前から、次の検査や手術など先々の予約まで早めに入れておいてくれたこと。
初めて私に病気を伝える時にとても気を遣っている様子だったこともありがたかった。
それから針生検の結果を聞いた時、私が「これまで本当にいい加減な食生活を送っていたので、この2週間気をつけてみたらすごく快便になったんです!」と話したら、「それはいいですね! でも病気になったのはあなたが原因じゃないのでご自分を責めないでくださいね。」と言ってくれたことが本当に嬉しかった。

大きな大学病院は先端医療をやっていたり設備が整っているなど安心感はあるけど、今の病院にめちゃくちゃ満足してることが再認識できたので、そういう意味でもセカンドオピニオンを受けて良かったなと思っている。

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