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樹堂骨董店へようこそ⑨

「やっぱ、パパはあやしい仕事してるよね」
「イツキおじさんは仕事で関わった人とすぐに仲良くなっちゃうからなぁ」
「でもさ、なんで絵に描かれてるのかな。パパがね、部屋に入らないでって言ってたし」
「それね。わかんないな」
「ね、いまからうちに来てよ」
「ええ?今から?私車運転できないよ?」
「大丈夫。送迎してくれるから」
こうして七緒は那胡の家に行くことになった。

「ほうづき屋の送迎すごすぎる」
七緒は驚愕している。
「呼んだら五分でくるし、もののけ道を活用してるし」
「でしょ?私もびっくりなんだ」
「さすがイツキおじさんの人脈だわ。あやしすぎる」
門を閉めてポーチまでの石畳を歩く。辺りはすっかり暗くなっていた。ところどころにぼんやり灯るガーデンライトが庭をぼんやりと浮かび上がらせていた。枯れかけた芝生には紅葉した落葉樹の葉がたくさん降り積もっている。
まだイツキは帰っていないようだ。玄関に入るとリビングが暗かった。
「おしゃれな家…おじゃまします…」
玄関に入る前から七緒はきょろきょろと見まわしている。
「これって洋館てやつね…」
「海外の人たちがもともと住んでたんだって」
「ふうん…いいなぁ。ていうか、イツキおじさんの気配がめっちゃ強い。魔除け的なことでもしてるのかなぁ」
「そんなに?臭い?」
「いや、ニオイじゃなくて気配ね」
「気配か」
リビングのカーテンを閉めると那胡はストーブをつけた。まもなく、ガラスの内側に炎が見えた。
「暖炉なの?」
「それっぽいストーブ…みたいな感じかな」
那胡の説明はよくわからなかったが、七緒は気にしない。那胡は昔からこんなかんじなのだ。
「ねぇ、夕飯作るから食べてかない?」
「うん…ありがと。それより先に例の部屋見るよ。遅い時間になるほど私たち不利になる」
夜は目に見えないものたちが活発になる時間なのだ。
「そうだね、じゃ来て。こっち…」
ふたりはリビングを出る二階へあがる階段を昇る。照明が明るいので今のところ怖くない。
「ここ那胡の部屋だね」
七緒はすぐ近くのドアを指さした。
「うん当たり。私のニオイする?」
「違う。気配だってば。それよりこの奥やばいね。昼間に来ればよかった…」
「うん…ねえ泊ってかない?」
「うーん、その話はあとにしようよ…」
廊下の奥を見つめる七緒の瞳はすでに緊張モードになっていた。それを見て那胡は悟る。

…やっぱヤバい場所なんだ…もうひとりじゃ寝れないよう…

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