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$黒と誠 ~本の雑誌を創った男たち~(1) 単行本(ソフトカバー) カミムラ 晋作 (著)

$黒と誠 ~本の雑誌を創った男たち~(1)
単行本(ソフトカバー)
カミムラ 晋作 (著)

$解説
書評誌として、現在も根強い人気を誇っている『本の雑誌』。その後、作家や映画監督として活躍する椎名誠、書評家・北上次郎名義でも知られる目黒考二の二人を中心に創刊された雑誌で、その創刊秘話は椎名誠『本の雑誌血風録』、>

>@https://www.amazon.co.jp/%E6%9C%AC%E3%81%AE%E9%9B%91%E8%AA%8C%E8%A1%80%E9%A2%A8%E9%8C%B2-%E6%A4%8E%E5%90%8D-%E8%AA%A0/dp/4022571519/ref=sr_1_1?adgrpid=52983509413&gclid=Cj0KCQiAh8OtBhCQARIsAIkWb69fyzgK5etI5AiVrBckb7Egyk8VfScMPLnO3GZgZYHIEVmjLWCJCt4aAp6pEALw_wcB&hvadid=679072181429&hvdev=c&hvlocphy=1009343&hvnetw=g&hvqmt=e&hvrand=219930269743697950&hvtargid=kwd-332236003582&hydadcr=16998_13608835&jp-ad-ap=0&keywords=%E6%9C%AC%E3%81%AE%E9%9B%91%E8%AA%8C%E8%A1%80%E9%A2%A8%E9%8C%B2&qid=1706088582&sr=8-1

>目黒考二『本の雑誌風雲録』

https://www.amazon.co.jp/%E6%9C%AC%E3%81%AE%E9%9B%91%E8%AA%8C%E9%A2%A8%E9%9B%B2%E9%8C%B2-%E8%A7%92%E5%B7%9D%E6%96%87%E5%BA%AB-%E7%9B%AE%E9%BB%92-%E8%80%83%E4%BA%8C/dp/4041974038

>に詳しく描かれている。
今回は、その二冊を底本に、関係者への取材をもとに『本の雑誌』創刊時を、こちらも読書界を震撼させた『どくヤン!』の作画担当であるカミムラ晋作が完全漫画化。
70年代、もっとも出版と雑誌が熱かった時代が、ここにある!

$読者レビューより引用・編集
本作はそんな熱い雑誌を産み出した「味噌蔵コンビ」椎名誠と目黒孝二の若き日の物語である。
物語の方はデパート業界の業界紙で26歳という若さながら編集長を務めていた椎名誠が部下である菊池仁の紹介で彼の大学の後輩であり、就職はしたものの「働いていると本が読めないから」という理由で三日で辞めてしまった奇妙な青年・目黒孝二と引き合わされる場面から始まる。
目黒のただならぬ雰囲気に「こいつには何かある」と感じ取った椎名は自分の部下として働かせるべく勤め先に引っ張り込むのだが、目黒の読書欲は抑えきれずに一年を経ずして退職されてしまう羽目に。「あいつはどうしているか」と目黒の事を気に掛けつつも編集業に追われていた椎名だったが、彼の元に目黒から送られてきた「最近読んだ本の感想をまとめたレポート」は椎名だけにとどまらず周りの読書家たちも巻き込み読者数を増やしていく。
その熱情はいつしか目黒のレポートを雑誌の形にしてみたいという形で椎名を突き動かす様になり……
自分はそこまで椎名誠の熱心なファンという訳では無いのだけれども画面のあちこちに椎名ファンを喜ばせるネタを撒いているな、というのが一読しての感想。椎名の高校時代からの悪友であり、彼の作品に必ずと言っていいぐらい挿絵を寄せていた沢野ひとしが椎名の16ミリ映画への情熱に対抗して作りまくっていた家具の話なんかをネタに用いていたのはちょっと驚き、同時に「おぬし、分かっておるのう」とニヤリとさせられた。
その上で「本の雑誌」を産み出した二人の関係をバディとして描こうという作者の想いがしっかりと伝わってくる。
そもそも椎名誠を取り巻く人々は本作に登場する範囲だけでも異常画家に弁護士、昼飯の注文を決められない優柔不断男、「ケッ」と舌打ちばかりしている陰気野郎……実にキャラが濃い連中が多いのだけど、その中でも目黒孝二の「濃さ」は飛びぬけていたのだなと改めて思い知らされた。
とにかくこの一巻では御しようにも一筋縄ではいかない青年である目黒孝二に振り回される椎名の姿が徹底的に強調されている。最初は椎名自身がハマっていたSFで話が盛り上がっただけと思わせておきながら、部下として勤め先に引っ張り込み、上層部に根回しをして教育実習に向かわせてでも手元に目黒を置こうとするなど尽力したにも関わらず最後には裏切られて自分の元を去られてしまうのである。
普通であれば「ふざけるな」と怒り狂い、絶縁してもおかしくない状況であるにも関わらず、退職した目黒に折に触れては会って話を聞こうとする椎名の目黒に対するちょっと尋常でない執着はいったいどこから来るのかという疑問が読者の胸の内に湧いてくるのは当然の事であろう。
あとがきでも触れられている様にどこか友情を超えた思い入れはブロマンスという言葉を思い起こさせるに十分かと。そう思えば椎名と目黒のキャラデザもブロマンスを特に好まれる女性読者なんかを狙っているのではと思えて来る(自分は椎名誠と言えば日焼けした肌にチリチリヘアの作家というより漁師を思わせる風貌をしたおっさんを思い出すのだが……)
この一巻では「本の雑誌」第一号が刊行されるまでが収録されているのだが、振り回し・振り回されるというだけの、そのままでは先に進めなかった二人の関係が当時「嗚呼、花の応援団」などで隆盛を極めていた「漫画アクション」の編集者・本多健治の登場により一気に肩を組んで前に進もうとする関係へと変化するダイナミックな展開は見事。実録モノでありながら、いや実録モノであるからこそ「時代は人と人の出会いによって動くのだ」という事実を思い知らされたような気がした。
物語はバディとなった椎名と目黒が新しく生み出してしまった「本の雑誌」という読書家の読書家による読書家の為の雑誌を産み出してしまった二人が勢いに任せて刷ってしまった500部の本の雑誌第一号を抱えて途方に暮れる場面で一旦幕を下ろすのだが、これはこれで次の巻に対する「いったいどうなってしまうのか」という期待を持たせるには十分な「引き」であろう。
それまで一部の書評家に独占されていた「読んだ本の感想を不特定多数に向かって語る楽しみ」を勢いに任せて産み出してしまった雑誌を通じて日本全国の名も無き本読みたちに向けて解放するに至った若き椎名誠と目黒孝二の名コンビが送った日々を若い世代にも知ってもらいたい、そんな事を願わずにいられない一冊。

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 双葉社 (2022/11/10)

  • 発売日 ‏ : ‎ 2022/11/10

  • 言語 ‏ : ‎ 日本語

  • 単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 192ページ

  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4575317535

  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4575317534

  • 寸法 ‏ : ‎ 18.8 x 12.8 x 2 cm

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カミムラ 晋作

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