見出し画像

第一  事実とされているイギリスの3枚舌外交⑴フサイン:マクマホン密約について そのⅲ

【フサイン:イブン:アリーとパレスチナ人について】

フサイン:イブン:アリーは,マクマホン英国エジプト大使より,前項の回答を受けてどうしたか?

マクマホンの回答がフサインの要望・危惧・信用に満たないなら,彼はオスマン帝国に対する叛旗を翻さなかっただろう。現実には,この回答を受けてフサインは,自身の3王子とヒジャーズ領在住アラブ人を率いて,オスマン帝国に対する独立戦争を選択している。

これは,マクマホンが提示した建国国家の領域として,フサインの領有するヒジャーズに加えて,現ヨルダン・現シリア・現イラクを加えた領域を建国の範囲と納得し,現イスラエル・パレスチナの地は領有しないことを承諾していない限り,その行為には及んでないだろう。

同時に,今パレスチナ人と自称する人々が仮にアラブ人だとして,フサインに従う領民は,はっきりマクマホンより「 イスラエル・パレスチナの地に住んでいないから 」という理由で,ヨルダン川より西を領有圏として付与しないと言われて反抗していないのだから,まず間違いなくイスラエル・パレスチナの地に,現パレスチナ人であるはずの人々は暮らしていなかったのだ。

本タイトルに使用したイラストをご覧いただきたい。

フサインの建国するアラブ人国家名はヒジャーズ王国,そのシンボルたるヒジャーズ鉄道とは,このイラストのように走っている。

"アラビアのロレンス“の主要活躍現場,ロレンスがアラブ人の独立のため献身した,アラブ人の建国地として約束されたヒジャーズ鉄道沿線とは,ヨルダン川東岸を南北に走っている鉄道で,そのマクマホンによって「アラブ人国家の建国を保証する」と回答されている地には,ちゃんとアラブ人国家として現ヨルダンが建国されている。

一方,マクマホンが「そこはアラブ人が暮らしていない」という理由で建国地と認められなかったヨルダン川西岸,いま「マクマホンによって認められた地」と主張されている領域が,それを理由に多くの人命を奪い続けているエルサレムを含むイスラエル・パレスチナである。

ちなみに『パレスチナ』という呼称は,アラビア語の言葉ではない。「パレスチナ」とは「ペリシテ人」という意味を持つ聖書に登場してくる異教徒フェニキア人を指す名称なので,「パレスチナ人」と言ってしまうと「ペリシテ人人」になってしまうわけで,つい「パレスチナ人」と言ってしまうが,「人」と付けて呼ぶなら「ペリシテ人」と呼ぶのが正しい。ヨーロッパのキリスト教徒たちは,現イスラエルの地を指して,これを「ペリシテ人の住む地」という意味で「パレスチナ」と呼んだ。

アラビア語圏がイスラエル・パレスチナの地に与えた呼び名は「シャム」であり,オスマン帝国時代のイスラエル・パレスチナを指した行政区画は「クドス自治区」である。「クドス」とは,「エルサレム」と同じ語彙を有するトルコ語であって,クドス自治区として境界を定められた領域とは,ヨルダン川を挟んで東の現ヨルダンと西のイスラエル・パレスチナであった。

クドス自治区における行政機関名は,「イシューブ」と命名されたユダヤ人(これもそう言ってしまうと“ユダ人人“になってしまうが)政府が自治を認められていて,一般平民はシリア語を話す人々が暮らしていた。そしてオスマン帝国から「自治」を認められていた人々とは,フサインがヒジャーズの保安官を拝命しようとも自治を認められないイスラム教徒であったように,イスラム教徒であれば自治区になっていないわけである。驚く勿れ,ユダヤ人は,WW1ののち,バルフォア宣言によって彼の地を与えられるまでイスラエル・パレスチナの地に存在しなかったとは真っ赤な嘘,ユダヤ人は,すでにオスマン帝国に金銭を支払って,WW1のはるか以前よりユダヤ人の行政区画をイスラエル・パレスチナの地にすでに展開していた。

そしてその地に暮らす非支配層・被支配される者とは,アラビア語でしか布教を認められないイスラム教徒🟰だからアラビア語を話す人という呼び名のアラブ人ではなく,キリスト教徒であるのでアラビア語を使用せず,トルコ語のシリア方言🟰シリア語を使う人々🟰シリア人が,その地において本当の一般人・平民として暮らす者だったのだ。

筆者を含み,その真実に遭遇した者たちは,ここで決定的な疑問を抱くだろう。
今,パレスチナ人と自称する者たちは,本当は何者なのか?

おそらく,その答えが,(他の部分は騙しているものの)パレスチナ地域に関する限りフサインを騙していないはずの英国が,「パレスチナ地域においてフサインを騙したのですよ」という,謂れのない汚名に反論しない理由であり,また,侵略に当たらないイスラエルの建国を実行しているユダヤ人が,自らの潔白を主張しない理由でもあるのだろう。イスラエルとイギリスは,何らかの形でフサインとその民たちが,彼らの得るべき権益を受けられない境遇に追い込まれ,もしかしたらそのまま命を紡ぐことを叶えられなかった真実について,その理由を知っているはずである。

そして,フサイン:マクマホン密約とダブルスタンダード関係にあると言われる2つのイギリスの締約。

次回は,その2つの締約のうち,⑵バルフォア宣言の内容について掘り下げてゆく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?