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認知症の母:遠隔介護 壊れるテレビ消えるリモコン

2022年。
夏を前にした頃、テレビが壊れた。
母が電話をかけてきて
「テレビがね、映らなくなっちゃってね、管理人さんに来てもらったの」
母の住むマンモスマンションには敷地内に大きめの管理センターがあり、何かと気軽に相談していた。

単にテレビの調子が悪いのかと聞き流していたが、またすぐに壊れたというので買い替える必要があるか確認しに行った。

テレビはまあまあ新しかった。
でも電源は入るが何かメッセージが出て映らない。
変だなとテレビの後ろを見るとケーブルが全部抜かれていた
びっくりした。
「でもなぜ?!」

まさか後ろがこうなっていたとは….

とりあえずケーブルを差し込む。
ちゃんと映った。
どこも壊れてなくてホッとした。

その様子を見た母は、
「え〜〜やだ〜知らないわ〜。そんなことあるの〜?」
とケーブルを抜いたことを覚えてない。
もちろんその理由もわからない。
対処の方法が思いつかないまま、「もう抜かないでね」と言って帰った。

でもまた数日後に「壊れた」と電話が来た。
訪問すると、今度は映像のケーブルだけでなく電源ケーブルまで抜かれていた。

なぜケーブルを抜いてしまうのだろう?


理由がわからないと繰り返してしまう。
母の気持ちを知る必要がある。
母は
「テレビが消えなくなるのよ。いくらやっても」
と言う。

母はリモコンがわからなくなってきたのか?
「リモコンのここがスイッチだよ」
「うん、そうね」

一つ考えられるのは、リモコンという機械が「わからない」。
ボタンがたくさんあることがわからないのではないか?
携帯電話の操作がわからないと言っていたいたこともある。
そういえば、家電はボタンだらけだ

思い出されることがたくさんあった。
10年以上前から
「メールアドレスが消えたのよ」
「携帯電話が壊れたのよ」
「エアコンが壊れたのよ」
「掃除機がおかしいの」
しょっちゅう携帯電話を買い替え、パソコンもテレビも買い替えが早かった。
それはきっと壊れたのではなく、母にとって操作が難しくなったのだろう。

モノのせいにすれば自分は悪くない。

数日後に弟がケーブルの一本一本に「抜かない」と書いた蛍光紙を貼った。抜いてしまうことに対応するのも一つの方法だと思う。
さらに、弟は「音を大きくする」「電源」と、目立つ色のペンでリモコンに書き足したが、この方法は違う気がした。
ボタンがわからないのにボタンの隣にまた文字を書いてもごちゃごちゃになるだけだ。

そこで、操作に最低限必要なボタンのみを見えるようにして他のボタンを隠すことにした。ボタンの数を減らす方がいいのでは?と母の家にあるもので臨時で作ってみた。

とりあえず母の家に置いてあった紙をペンを使った


すると母は大喜び!
「これならわかりやすいわ〜」

出来上がったお手製シンプルリモコンを持って
「明日、老人会の人たちに見せてやろう」と大はしゃぎする母
老人会ってそれデイサービスのことだけれども…

その後、機能を絞ったシンプルリモコンを別に購入。
おかげでテレビは壊れなくなった。

エアコンもリモコン


6月になり、真夏日が出てきた。
母はもともと水分をあまり摂らない傾向があるので、熱中症が怖い。
エアコンこそリモコン以外で操作はできない。

母自身でのエアコンの操作は事故の元と考え、エアコンは常につけたままにすることにした。ヘルパーさんにも、室温とエアコンの温度設定の確認をしてもらうことにした。

それでも母は空調が気になる。
風が強い、少し寒いと、リモコンを操作して暖房になっていたこともあった。
また、目の前にあるリモコンという物体を認識できない時も出てきたので、リモコン自体を隠すことにした。

認知機能は突然ゼロにならない

この時はリモコンのことだが、認知できないことは突然ポコっと現れる。
「え!?できないの?!」と驚くが、次に会うとできていたりする。
ホッとするものの、できない頻度は上がっていく。
母の場合、認知機能にもよるが「できないこと」が発現してから「全くできなくなる」まで、数ヶ月から半年ほどの余裕があった。
「できないこと」を見つけたら、次にできない時のための対策を考えておく。
慌てなくてもいいが早めに考えておくことがとても大切だと思う。
何より、誰の手も借りずに問題が起こらないと認知症本人が安心する。

できないことをなぜできないのかと長々と説教したり、家中にメモを貼りまくるのはほとんど効果がないと思う。少なくとも私はしなかった。一人でできる方法や仕組みを考えて用意するか、あるいはもう本人にはさせないと決めることが重要だと思う。

介護とは、何をやり、何をやらないかを決めることだと思う。

その夏、「母はエアコンの操作はしない」とスタッフと決めてリモコンを隠したが、一度、脚立を持ってきてエアコンのコンセントを壁から抜いたことがあった。「リモコンは操作しない」と一旦納得してもそれすら忘れてエアコンを消したい衝動に従ってしまう。

2年経った今、母はテレビに関心を持たなくなってテレビをつけずにいることが増えた。エアコンを理解しているかもわからない。

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