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アルトラ(2023週刊少年マガジン原作大賞[企画書部門]ボツ)

【キャッチコピー】
冴えない少年の父親は伝説の死刑囚だった。“影の政府”との暗闘を描くSFスパイ・アクション

【あらすじ】
 憲政史上ただ一人、刑法第77条・内乱罪が適用された死刑囚、伝説のテロリスト・禊授太郎の脱獄が、冴えない高校生ミコトの人生を一変させた。
 母親は、彼こそがミコトの父であると告げ、“パートのおばさん”の仮面を脱ぎ捨てて、武装する。
 憧れの美少女・菜々。その正体は政府の情報機関員で、ミコトはハニートラップの対象者だった。
 そして、初めての父子の対面で禊がミコトに明かしたテロ事件の“真相”。
 日本は影の政府、「アルトラ・ステイト」に支配されようとしており、禊は「アルトラ」と闘ってきたと言うのだ。

【第1話のストーリー】
 極右テロ組織「リーダーズ」による米軍横須賀基地占拠事件から17年が経った。
 テロ組織の指導者、禊授太郎(本名・吉田緑)は内乱罪で死刑判決を受けたが、未決拘禁が続いた。歴代の法務大臣は「リーダーズ」残党による報復テロを恐れたのだ。
 だが、17年振りの政権交代で法務大臣に就任した革新党の具足仙太郎は違った。速やかな死刑執行を命じた。
 東京拘置所のハイテク管理された独房の中、禊授太郎が呟く。
「待ってたぜ」
 呼応するように、脱獄計画が実行に移された。拘置所の職員にも「リーダーズ」の協力者が浸透していたのだ。
 一方、父親は病死したと教えられ、高校生になった吉田ミコト(主人公)は、冴えない高校生活を送っていた。唯一の楽しみは、テーブルゲーム部の活動だ。
 スマホすら使わないローテクな活動内容に加え、部長は丹波菜々という陰気なメガネ少女。部員は実質二人のみで、廃部寸前だった。
 しかし、菜々には、ミコトだけが知る秘密があった。性的虐待のトラウマで、“実は美少女”ということを変装で隠しているのだ。ミコトは、「特別な関係」を信じ、部活動にのめり込んでいた。
 最近の活動内容は、“超・人狼ゲーム”。ノート1冊分の詳細かつ緻密な身分設定を暗記し、騙し合い、お互いから情報収集し、人狼を推理する。菜々の“兄弟や従兄弟”と称する若者も参加し、ミコトを鍛えた。
 ミコトは、ゲームに興じる中で、スパイに必須な身分偽装の技術を叩き込まれていた。
 禊授太郎が脱獄した日、いつものように、とぼとぼ自宅に向かうミコト。上空をヘリコプターが飛び交い、パトカーが何台も緊急走行していることに違和感を感じる。
 リビングでテレビを付けると、各局は死刑囚の逃走を報じていた。
 そこに、母親の栄美子が「えらいこっちゃ~!」と叫びながら駆け込んできた。“亡夫”の仏壇に飛びつき乱暴に解体すると、大型の自動拳銃数丁を回収し、冷蔵庫や押入れから爆発物を引っ張り出し、驚くミコトの前で武器の整備を始めた。
 同じ頃、ミコトが通う高校に潜入していた公安調査官の丹波菜々は、法務大臣直属の「テロ対策ユニット」に招集された。

【第2話以降のストーリー】

1.スパイ養成篇
 栄美子は、「テレビ観たやろ?お父さん帰ってくるんよ」と言う。そこに、酔ってご機嫌になった禊授太郎が「エミちゃん、ただいま。久しぶりやな〜」と帰ってくる。
 テロ組織の指導者であり、父親でもある男は、みすぼらしい身なりの豪放磊落なオッサンだった。
 家族を捨て、テロを起こしたことについて、禊は信じがたい言い訳をした。
 20年前頃から、日本の政財界に「アルトラ・ステイト」のエージェントが浸透してきた。「アルトラ」には、未来予知能力があり、様々な情報をエサに要人を籠絡し、日本を影で支配しようとしている。
 父親がテロを計画した当時は、革新党が政権を握り、「アルトラ」の差し金で日本を非武装化しようとしていた。
 そこで、警視庁で特科中隊(現SAT)の隊長だった禊は、CIAや在日米軍、さらには防衛省特殊作戦群の一部と連携し、時の総理大臣だった革新党党首・三船虎次を暗殺しようとした。
 これが父親が語る“真相”だった。
 ミコトは、荒唐無稽な陰謀論に絶望し、両親と逃亡生活を共にする勇気もなく、その夜、家を飛び出した。
 行き場をなくしたミコトを保護したのは、丹波菜々が加わった「テロ対策ユニット」だった。
 「ユニット」は、ミコトを協力者に仕立てた上で「リーダーズ」に接触させ、組織に送り込みたいという思惑を持っていた。
 菜々が身分を偽っていたことに一時は憤ったものの、彼女の情と理性に訴える説得にほだされ、ミコトはスパイになる覚悟を決めた。
 菜々は、「二人で一つ。もうゲームじゃないよ」と抱きしめ、ミコトを有頂天にさせるのだった。
 ミコトは、「ユニット」の指導の下、偽装に加え、暗号や秘密通信の技術を学び、監視・尾行や盗聴を見破る訓練を受けた。

2.潜入篇
 ミコトは「リーダーズ」の末端メンバーに接触した。
「もう一度、父親に会って、しっかり話し合いたい」というのが口実だった。
 だが、地下に潜った禊は、面会を許さなかった。組織の活動に参加し、実績を積むことが条件だという。
 ミコトが所属を許されたのは、主に刑務所に収監中のメンバーを脱獄させるための救出チームの一つ「マルボロ」だった。
 救出計画を事前にうまく聞き出し、菜々に伝えることが任務になった。
 情報漏えいを疑われては、最終的なターゲットである禊授太郎に近づけない。ミコトは菜々と相談しながら、「テロ対策ユニット」の動きをコントロールした。あえて刑務所内の協力者を泳がせたり、自作自演で警務隊にミコトを狙撃させたり、欺瞞で予防線を張った。
 ミコトは、スパイゲームの深みにはまっていく。
 救出してみると、「リーダーズ」は愛国心が強く、仲間想いで個性的な面々だった。陰謀論さえ狂信しなければ、とミコトは思うのだった。

3.転向篇
 ミコトが所属するチーム「マルボロ」に新たな救出命令が下りた。サクヤという名の少年を鑑別所から逃走させるという指示だった。
 「マルボロ」は、救出したメンバーを拉致したり、何かを強制することはない。組織に復帰するか否か、本人の意志に任せてきた。
 そこで、ミコトと菜々は、ミコトの潜入工作の深化を優先し、逃走を見逃すことにした。
 だが、いざ「マルボロ」が計画を実施すると、「テロ対策ユニット」は、逃走を妨害した上でサクヤを殺害した。ミコトも銃撃戦に巻き込まれそうになった。
 実は、サクヤは、禊の息子の一人であり、ミコトの異母兄弟だった。調べてみると、収監されたのはごく最近だった。理由は喧嘩沙汰で、テロ事件や「リーダーズ」と無関係だった。
「禊の息子という理由だけで殺したのか?」
 ミコトの中で、菜々や「ユニット」に対する不信感が芽生えた。
 菜々も、「ユニット」の活動目的に疑念を持ち始めていた。調査官魂を発揮し、具足大臣の懐に入り込んで革新党の背後にある「アルトラ」の正体を、おぼろげながらも掴むに至った。
 「アルトラ」は300年後の未来、独裁化した日本政府の対外工作機関のコードネームだった。時間を超えたワープ通信で傀儡化のターゲットに働きかけていたのだ。
 革新党の執行部は、日本の非武装化と「アジア中心の世界平和」という理想を「アルトラ」と共有しつつ、世論操作のための予知情報を受け取り、「アルトラ」の政敵となる禊の血筋を断つための謀略に協力していた。
 政権交代を機に、革新党は「アルトラ」と癒着を深め、一体化しつつあった。
 具足法務大臣直属の「テロ対策ユニット」は、その実動部隊の一つだった。
 菜々は、真相に迫ったことで裏切り者と決めつけられ、「ユニット」の仲間に襲われ瀕死の重傷を負う。その間際、「アルトラ」の正体を、暗号化したメッセージでミコトに伝えた。

4.決起篇
 「アルトラ」はミコトに接触を図った。
 時間の亀裂から語りかけ、「秩序ある未来。AIでコントロールされた経済や文化・社会、人口管理、環境保護」の優位性を説いた。
 日本の非軍事化によってこそ、アジア中心の世界平和が訪れる。その実現に協力するよう求めた。
「禊授太郎は末期癌だ。間もなく死ぬ。君がその後継者になれば、日本を混乱させるだけだ」と。
 だが、ミコトは喝破する。
「“300年後の日本政府”というのは嘘だろ?せいぜい数十年先。しかも、他所の国。おそらく、“超大国”の工作機関だ。日本を侵略して植民地にしたのか?だが、うまくいってないんだろ?だから、歴史を修正しようとしている」
 「アルトラ」は通信を絶った。
 ミコトは「親父、話をしよう」と呟く。
 覚悟をあらため、武装したミコトは、「マルボロ」の生き残ったメンバーや、負傷から回復した菜々と合流した。
 父・禊授太郎との和解に向けて旅立つのだった。

#近未来SF小説  
#スパイ  
#公安  

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