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【米国株】マイクロンが決算後一時+18%。「買い」か。

昨日3月20日、メモリ大手のマイクロン社が2024年度第2四半期(2023年12月〜2024年2月)の決算を発表しました。既存製品の値上がりが業績をけん引し、同社の戦略の柱である、HBM(高帯域幅メモリ)への期待も高まる内容でした。
株価は21日市場オープン前プレマーケットで一時+18%と大幅高になっています。

まず、基礎知識のおさらいです。

  • HBMはデータセンターAI半導体向けメモリ製品で、マイクロンの提供する最先端HBMはNVIDIAを顧客として持つ

  • 既存製品であるDRAMの生産能力をHBMに転用可能。しかし、同じ容量のHBMを生産するのに、従来のDRAMの3倍の生産能力が必要

  • マイクロンは競合する韓国企業(SKハイニックス、サムスン電子)と共に、生産を既存のDRAMからHBMにシフトさせている

ここから株価を追う形で買っていいのか。
検討するうえで、下記が重要な要素になると考えます。

  • ポジティブ要素

    • HBMが新たなドライバーとして成長をドライブする

    • 各社がHBMにシフトするので、従来のDRAMの供給が細り、既に進む既存メモリ製品の需要回復と相まって、DRAMが高騰する可能性

    • 既に2024年は完売、2025年もほぼ割り当て済みとのことで、将来の見通しが良い。嫌気されていた、従来のメモリビジネスに付き物のボラティリティが構造的に低下し、高いバリュエーションが許容される可能性

  • ネガティブ要素

    • 契約済みかつ供給制約があることから、HBMの短期的なアップサイドは限定的

業績は堅調。HBMの貢献はこれから

第2四半期の売上高・利益、そして次四半期の予想も、全て市場予想を大きく上回りました。

販売価格の上昇が業績拡大を牽引した格好です。

一方、販売数量の伸びは緩やかで、HBMの本格的な貢献はこれからと言えそうです。

背景として、メモリ市場では、PCとスマートフォンの在庫調整が進み、需給が改善しつつあります。2023年に懸念された景気後退への警戒感も和らぎ、企業のIT投資マインドも上向いてきました。データセンターを中心に、非AI向けの需要も回復の兆しが見られます。

HBMへのシフトがもたらす効果

マイクロンは業界をリードするHBM 3Eの開発に成功。2024年は既に完売、2025年も大部分が割り当て済みという異例の状況にあり、今後の業績拡大への確かな足がかりを得ています。

マイクロンはHBMへの生産シフトを加速させています。HBMは主にデータセンターのAI向け半導体に使用される高性能・低消費電力のDRAMで、大量のデータを高速処理するのに最適です。需要が急増する一方、技術的に高度で製造コストも高いことから供給は限られてています。下記の理由から、特に短期的な供給は制約されいるようです。

2025までほぼ完売、といった将来の見通しの良さは、従来メモリ業界の低評価につながっていた、景気サイクルに業績が大きく左右される不確実性が低下し、バリュエーションがアップサイドに見直される可能性があります。
一方、供給制約もある、ということは短期的なアップサイドも限定的であると考えられます。まだ契約条件が明らかになっていないので、そのガイダンスが与えられた際に株価は大きく動くと考えられますが、長期のドライバーというよりは一時のお変動になる可能性があります。
もう一つ重要なのは、HBMへのシフトは、従来のDRAMの供給を絞ることにもつながる、ということです。DRAMの需給が改善に向かう中、既存製品の価格上昇が加速する可能性があります。

HBMシェア拡大への自信

HBM市場では、韓国勢が先行しています。マイクロンは現時点ではシェアで見劣りします。

しかし、2025年にはHBMのシェアがDRAM全体と同等になる見通しを示しています。見通しの良い事業とのことなので、相当な確度で達成可能な自信があるのでしょう。

株価を考える

下の図の黄色の線がマイクロンのPER(12ヶ月予想利益ベース)の推移です。
足元メモリ不況からの回復中で利益が低いためPERは高騰していますが(43.9xは20日終値ベース)、プレマーケットでの+18%を反映した株価112ドルはFY25年度利益ベースで16.4x、FY26年ベースで13.6xと、過去19-21年のレンジの8~22xの中では割高ではありません。

株価を考える上では、HBMの見通しの良さゆえに短期の業績へのアップサイドは限定的で、織り込みは早く、株価をドライブする重要な要素としては、実は下記2つの要素をどう考えるかが、より重要かもしれません。

  • HBM生産シフトで既存DRAM不足による価格高騰の業績貢献

  • HBMによる事業構造の安定化によるバリュエーション(PER)レンジの切り上がり


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