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ビギナーズラック

 4月になり新生活が始まった人も多いかと。

 自分は春になると、先輩に連れられて初めてパチンコ屋に足を踏み入れたときのことを思い出します。
 自動ドアが開いた瞬間の頭がおかしくなる程の騒音とたばこの臭い。その中で虚ろな目をしてハンドルを握りしめているお爺さん。ケツを浮かして前のめりになりながら必死でボタンを連打するお婆さん。天井間近のおじさんの後ろでベガ立ちしているDQNたち。そして帰り際の先輩の顔。

 あの時の先輩の顔は今でも思い出します。

 新たな出会いがある分、ギャンブルとの出会いも避けては通れません。そこで今回の記事は、初めてギャンブルと出会ってしまった人が絶対に耳にする言葉『ビギナーズラック』についてです。

先輩(養分):君ギャンブルやったことある?

 新卒くん :ないです。

先輩(養分):じゃあビギナーズラックで勝てるよ。みんな最初は勝てるよ。 大事なのはそこでやめれるかどうかだよ。

  新卒くん:そうなんですか?でもお金ないのでやめときます。

先輩(養分):パチンコ、スロットなら低貸も選べるよ。  競艇と競馬なら100円から遊べるよ。

 新卒くん :え?100円からですか?

先輩(養分):そうだよ。競艇なんか1レース6人だから簡単に当たるよ。

 新卒くん :競艇ってCMで田中圭が出てたやつですよね? 100円からだったら暇つぶしにでも遊べそう。  しかも簡単に当たるなら面白いかも。

先輩(養分):そうだよ。競艇の予想なんて5分もあればできるし、  当たれば100円が1万円以上になることだってあるよ。 俺が初めて競艇やったときは2万円以上勝ったよ。まじでビギナーズラックだけどw最初は勝てるんだよ。

 新卒くん :まじですか?一緒に行きます、行かして下さい!

先輩(養分):よし、じゃあ明日住之江の準優日だから住之江に行こう。

 新卒くん :分かりました!3,000円あれば十分ですよね?

先輩(養分):十分十分。足りなかった貸してあげるよ。

 養分くん :ありがとうございます!初めての競艇楽しみだな~。

 以上、新卒くんが養分くんに変わる瞬間でした。


 ここからは本題のビギナーズラックの話です。ビギナーズラックはあるのか、ないのか?

答え:ない

 当たり前ですがただのオカルトです。初めてだからと言って的中する確率が上がるわけがないです。では、なぜビギナーズラックという言葉を耳にするのか。
 初めてのギャンブルなんてものはただの運ゲーです。何も分からずお金を賭けて運に任せて祈っているだけです。運がいい人は勝って運が悪い人は負ける、ただそれだけのこと。それにギャンブルは負ける人の方が圧倒的に多いのだから、実際はビギナーズラックで勝っている人の方が圧倒的に少数派です。
 ここからがポイント。最初に運悪く負けてしまった人は、大概そこでやめます。そしてギャンブルやったことある?と聞かれると、1回やったことあるけど負けたからそれ以来やってないです。で話が終わります。
 逆に、運よく勝ってしまった人は、いつまでたってもその時のことを鮮明に覚えていて、何度も同じ話をしてきます。養分たちは『負けたことはすぐ忘れるけど、勝ったときのことはいつまでも覚えている』という特徴があります。
 ビギナーズラックとは、最初に運よく勝ってしまってギャンブルから抜け出せなくなった人たちが、昔の忘れられない思い出を語るために必要な言葉なのです。

 パチンコの大当たり確率は、打ち手のパチンコ歴によって変動しません。常に完全確率で平等に抽選してくれています。ちなみに、石井の初パチンコは5万円ストレート負け。先輩から回ってるから打ち続けた方がいいよ、とアドバイスされて気が付いたら1,000回転嵌っていました。目は虚ろになりながらも右手でしっかりとハンドルを握り、必死にボタンを叩きましたが、自分の台で大当たりを拝むことは出来ませんでした。最後のリーチを外した後に背後から声を掛けられました。「そろそろ帰ろか?」振り返ると申し訳なさそうな顔をした先輩でした。せめてもの救いは自分たちの後ろにベガがいなかったこと。

ビギナーズラックなんてありません。


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