僕は弟を救うため、無自覚最強の幼馴染み達と旅に出た。奇跡の実を求めて。
第1話 平和な村と、死の宣告
「ねえ、アシュアス。もう少し下だってば。初めてじゃないんだし、遠慮をしなくてもいいわ。一気にやって」
ベッドの上で、絡み合う二人。
「だいじょうぶか? じゃあ、一気に行くぞ」
そう言いながら、彼は力を入れる。
「うっん。あっ。ぐえっ」
ペキッとかパキッとか音がして、彼女がのけぞる。
「大丈夫?」
「何とか」
ノックもなくドアが開き、女の子が一人入ってくる。
肩までの亜麻色をした髪の毛。目はブルー。かわいいという感じの女の子。フィアだ。
「もう。リーポスったら。また腰を痛めたの?」
「悪かったわね。お母さんの振り下ろしを、うっんっ。受け流すのに失敗したのよ」
そう、ベッドで俺にまたがられ、呻いている赤い髪の毛。瞳はブラウンの女の子。彼女はリーポス。剣士だ。
母親も冒険者時代には、剣士だった。
だが皆は、女戦士だと言っている。
剣を抜くより、殴る方が早い。
リーポスは性格も、まだ成長途中で控えめだが、爆乳の体型もお母さん譲りだろう。
すぐに手が出る。
彼女のお母さんは、昔鮮血のシルティアと呼ばれていたらしい。
アシュアスは、銀髪で目はブルー。父親が同じ特徴で剣士のヴァレン。母親が魔法使いでサローヴァ。髪の毛は灰色で、目がブラウンだ。
どちらからも、手ほどきを受けていたが、結局どっちつかず。
魔力は多いらしいのだが、なぜか上手く発動ができない。そのため補助魔法や、聖魔法を好んで使っている。
さっき入って来たフィアは、おとなしめの女の子で、弓使い。
お父さんである、ディルクさんから習っている
彼女達の父親や母親は、昔、此処が開拓されるときに護衛としてやって来て、綺麗な水や空気。雄大な景色が気に入り、そのまま居着いてしまった。
今でも、村にやって来るモンスター達を狩っている。
ここには、たまにワイバーンと呼ばれる、亜龍が現れるため。村人から頼りにされている。
もう少し奥へ行くと、ドラゴンが居るらしいが、未だに現れたことはない。
そして、幼馴染みで同じ歳の仲間がもう二人。
父親が、鉄壁と呼ばれている盾使いバスタ。
その娘でアミル。ブラウン系の髪で目もブラウン。
フィアと同じくおとなしめで、少し色々が未発達。
そのためか、力がなく。盾は諦めたようだ。
いまは、魔法師をしている。
師匠は、アシュアスのお母さんでサローヴァ。
槍使いのクノープ。盾も使う。
髪は金色。目もブルーで、仲間内で一番背が高い。
父親のセルバンが元々槍使い。
親子共にけんかっ早い。
そして、彼らが十五歳になったとき。
アシュアスの五歳になる弟。フィラデルが体調を崩す。
「二十までは、生きられないでしょう」
お医者さんの診断を受けると、自家性魔力中毒症と診断される。
フィラデルも、アシュアスと同じく魔力量が多い。
体内の魔力が乱れて、自分自身の細胞を壊してしまう。
普通でも、他人の魔力を流されると、皮膚が火傷をしたりする。
血液と同じで、少しづつ違うのだ。
「ふざけるな。何か治療をする方法はないのか?」
父親のヴァレンが吠える。
だが医師は、首を振るのみ。
結局、その日は、なにも言わず帰った医師だが、数日後に再びやって来る。
『精霊種の住まう森に、フォビドゥンフルーツなるものが存在する。これすなわち万病を癒やす霊薬なり』
こんな事を書いた、書物があったようだ。
だが、当然と言えば当然だが、親を含めて大人達はそれを信じない。
「本当にあるのかわからない。あての無い旅など、無謀だ」
そう言って。
「僕が、フィラデルを救ってみせる」
反射的に声が出た。
「なにもせずに、フィラデルを見捨てるなんて出来ない」
「それは、父さんだって同じだ。だが、外にはモンスターもわんさか居るし、泊まるところや金はどうする。目的地がわかっているわけじゃないし、精霊種の住まう森は…… 確かに昔、聞いたことはある。だが、その場所は何処なのか。どうやって探すんだ?」
父さんの言うことは理解できる。
「それでも……。それでも僕は……」
そう言うと、父さんは首を振る。
「それに。――間に合うのか? そんな保証は…… どこにも……」
そこまで父さんが言ったところで、母さんが動いた。
「すこし、お父さんとお話をしてくるわ。アシュアス。本当に良い子に育ってくれて。お母さん嬉しいわ。大丈夫よ」
優しい顔で、そっと頭をなでると、お父さんを片手で引きずっていった。
お母さんは魔法師で、どちらかというと華奢な体。
「身体強化?」
それにしては、魔力の流れはふつうだし。
「おい。サローヴァ。やめろ。よくわからんが俺が悪かった。わかったから」
引きずられながら、一瞬で父さんの顔が泣きそうになる。
「あら? 何がわかったのかしら? あなたを捧げれば、アシュアスの進む道も、すこしは困難さが減るかしら?」
「待て…… 何に捧げるって」
「まったくもう。息子の命が掛かっているのに。いつまでもグチグチと。あなたには、そうね。きっと世界に対して、目覚めが必要なのね。教えるから理解をしなさい」
それから少し…… 父さんの悲鳴が聞こえたり、色々あったようだ。
きっと、お母さんがいつもの様に、背中に闇の何かを纏い、お父さんを説得をしてくれたのだろう。
「私も自身を見つめるために。そう、旅に出たのは十五歳の時だったわ。外界に降り立ち理の深淵を覗きたかったのよ。ふっ。あの頃は、私も若かったわね」
そう言って、遠い目をしていたお母さん。
その時、父さんは、足を抱えて泣いていた。
そして僕は、奇跡の実を求めて旅に出る事になった。
説得により潰された、足の小指。
泣いている父さんが、かわいそうだから治療してあげた。
「フィラデル。大丈夫か?」
体調が悪いのだろう。ベッドでおとなしく寝ていた。
「うん。元気。ちょっと目眩がするけど」
アシュアスは、乱れているフィラデルの魔力を感じて、流れを整えていく。
だが根本的に治さないと、すぐに魔力は乱れ、体を内側から壊し始める。
「お兄ちゃん達は、お前においしい果物を取ってきてやるから、お父さん達の言うことを聞いて元気にしてろ」
少し表情が明るくなる。
「美味しいもの? ハチミツより?」
小さな子にハチミツは毒だが、この年なら大丈夫と言って、この前食べたからだ。
「多分な。ただ少し遠いから…… しばらくは会えない」
「えー。とおいの?」
「少しな」
淋しいのか、フィラデルの顔が曇り、むーと変な顔をする。
「じゃあ、要らないのか?」
ぶんぶんと、首を振る。
「じゃあ、まってろよ」
そう言いながら、アシュアスは帰ってくるまで元気でいろよと、心の中で願う。
頭をなでて、部屋を後にする。
そして、どちらが言い出すと言うこともなく。
当然だろうという感じで、幼馴染み達は、村を出るときに付いてきた。
アシュアスと、友人達。今五人の冒険が始まった。
「とりあえず、何処に行くの?」
フィアが、村の外へ出たのが嬉しいのか、クルクルと回りながら聞いてくる。
「ヘルキニアの町だって。母さんが手紙を書いてくれた。昔世話をしていた冒険者がいて。どうせまだ町に居るだろうからって。ギルド? そこで登録をするときに、ついでに見せて探せって。いれば、すぐ見つかるらしいよ」
「へー。家の母さんも同じようなことを言っていたわ。私も手紙を持っているの。相手は。えーと、クレッグって言う人みたい」
シルティアさんも同じ人を探せって、チームだったから。当然か。
「同じ人だね」
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