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ドラマ感想散文 エルピス-希望あるいは災い-

 ゾクゾクしました。全10回を見終わって、映画一本見終わった充実感がありました。美しいCG映像を見たとかいう充実感ではなく、内容と構成の緻密さと製作者のパッションを目の当たりにした充実感でした。最終回に向けて最後どうなるんだきっとこうなるだろう誰々がこうなるんじゃないか。様々な憶測を呼ばせた仕掛けにもうお手上げでした。
満足じゃ!

 眞栄田郷敦演じる岸本拓郎の家。西日差し込む拓郎の部屋で、長澤まさみ演じる浅川恵那のセリフが、迫ってくる!「負けながら生きていけない」「一人の人間としてまともに生きていたいだけじゃん」「希望って誰かを信じられるってこと」かあ。渡辺あやさんは死ぬ気でこの脚本を書いたんじゃないのか。
 録音したレコーダーの音声をきっかけに浅川恵那の感情が動きました。岸本君の過去の打ち明けを偶然、そして初めて耳にする。(視聴者にとってはやっと耳にしてくれました)そんな上手いことタイミングよく行かないよ普通~。雰囲気、勢いって大事だな。しかしこれは自然な流れで書けた脚本なのか?うんうん悩まれたのか?
 極端に書きますけど、二つの自殺が主人公の一筋の光。感情の起伏を長澤まさみとナレーションと眞栄田郷敦の表情とセリフで伝えてしまった!でも以外と一番大きいのは照明による画面の色味と音楽なんじゃないか?結局それって総合力じゃないのよぉ。スタンディングオベーションです。

 鈴木亮平演じる斎藤さん。斎藤さんは9話目では悪顔してましたが、最終回での決意表明も希望でした。「より建設的でより有効な方法を見出してみ見せる」「膨大な全体に対して一人が一日で出来ることは限られている。一つ一つやっていくしかない。末期がん患者の免疫細胞だってそう思いながら仕事していると思う」ドラマを通して浅川恵那を見上げて話すのは初めてでしょう。斎藤さんには斎藤さんの夢の実現の仕方がありました。このシーンでもちゃんと話を展開させています。浅川恵那は斎藤さんに「叶わない」とナレーションで言っていた。しかし最終回はちゃんと決別しているぜ!こんな成長ポイントは序の口でそんなのがいくつか積み重なって、斎藤さんへの交換条件が出てきたんだ。

 最終回が終わった今、全体を振り返って浅川恵那の葛藤を嘔吐で表現していましたし、岸本拓郎の葛藤はひげ面で。村井さんの表に出さない葛藤も話が進んでいくことで明らかになっていくし。大門副総理は失脚には至らず、これが斎藤さんの言う末期がん患者の象徴なんでしょう。それに対して一個人ができること。…うー限られてるわ~。しかしそんなできない理由を話すんじゃなく、出来る方法を見出していきたい。この文章を書いている私も、ドラマの登場人物も最後それぞれの行動を起こした!

 間違いなく今季のドラマで一番面白かったです。イケメンの胸キュンに頼るのではなく、若手女優のコスプレめいた衣装、CGでファンタジーの世界を作るのもいいけど、現実離れしない人間ドラマの王道がいろんな世代の興味を引き付けるのかもしれません。

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