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Starshipが3回目の試験飛行を実施。SpaceXがStarshipで目指すところとは!?

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今回の記事では、3月14日にSpaceX社が行なった大型ロケットStarshipの第3回の打ち上げについて、宇宙に詳しい天地人のメンバーがその凄さを解説します。今SpaceXがやろうとしていることは何なのか、 Starshipとは何がそんなにすごいのか、そしてこれからどんなことが期待できるのかをインタビュー形式で紹介していきます。

ニュース概要

2024年3月14日、SpaceX社は超大型ロケット「Starship」の3回目の試験飛行を行いました。今回の試験飛行では、長期の宇宙ミッションに不可欠な軌道上での極低温推進剤の移送、第一弾ブースターの燃焼・分離、宇宙空間でのペイロードのドアの開閉などがテストされました。最終的には、機体は大気圏に突入した後に通信が途絶え、着陸予定地に到着せず喪失したと見られています。
NASAは「アルテミス計画」という2025年以降に月面に人類を送り、最終的には月面で人類の持続的な活動を目指す計画において、SpaceXと協力関係にあります。そんな中、今回のSpaceXのStarshipの打ち上げに関して「この進歩は、人類を月に帰還させ、より深く宇宙を探査するというNASAの取り組みにおいて、特筆すべき進歩である」と述べていますが、具体的にどのような点がすごいのでしょうか。

今回のStarshipの試験飛行の様子はSpaceX社が動画を出していますので、こちらの動画を見てイメージを膨らませていただけたらと思います。

参考


話を聞いたメンバー

木村 紋子(きむらあやこ):研究開発プロジェクトリーダー
天地人では、主に官学と共同で衛星通信向けの機械学習を活用した予測システムの開発を管掌。

渡邊光祐(わたなべこうすけ):事業開発インターン
天地人以前に不登校解決、モビリティ、医療、ロケットといった幅広い領域の4社で合計2年ほど長期インターンを経験。宇宙からの視点で事業開発に取り組めることに魅力を感じ天地人にジョイン。


そもそもSpaceXが打ち上げたStarshipって何?

渡邊
木村さん、改めて本日はよろしくお願いします! さっそくですが、今回のニュースの主役であるSpaceXについて、ズバリ、今の宇宙輸送業界においての立ち位置とはどのようなものでしょうか?

木村
ロケットの開発・製造には巨額の投資が必要なことから、従来は政府主導でのロケット製造が一般的でした。米国では1998年の商業宇宙活動法(Commertial Space Act)を皮切りに、連邦政府が輸送機を製造・運用する代わりに、民間から宇宙輸送サービスを購入することが推奨されるようになりました。このような規制緩和を背景に、民間企業が宇宙輸送サービスへ進出していきます。

SpaceXは2002年にイーロン・マスクが創業しましたが、当初は政府との契約、現在は民間からの投資を背景に、ロケット開発に取り組み、世界で最も成功している民間企業です。例えば2023年のSpaceXによるFalcon9ロケットの打ち上げ回数は、96回で年間ロケット打ち上げ回数が最も多い民間企業となっています。

そういった観点では、宇宙輸送サービスのトップランナーといえる存在です。

渡邊
今までは政府が中心となっていたロケット開発が民間に移行していく中で、中心的な存在である会社がSpaceXということですね。年間96回のロケット打ち上げとなると、1週間に2回も打ち上げていることになりますね・・・・・・。とてつもない数だと思いました。

2023年世界の型式別ロケット打ち上げ回数 出典:https://space.skyrocket.de/doc_chr/lau2023.htm

渡邊
今回のニュースでSpaceXが打ち上げたのは「Falcon9」ではなく「Starship」だと思うのですが、現在たくさん打ち上げられているFalcon9との違いはどんなところにあるのでしょうか。

木村
Falcon 9は、SpaceXの主力ロケットであり2010年の初打ち上げ成功以降、最も打ち上げ回数が多いロケットです。

最大の特徴は、第1段ブースターの回収・再利用が可能なことで、これによりFalcon 9の打ち上げコストが同型のロケットよりも安く済むことが知られています。具体的には、第1段ブースターの回収と改修にかかるコストは、新たに第1段ブースターを製造するコストの10%以下と言われています。

打ち上げコストの安さから、多くの人工衛星・宇宙船の打ち上げ契約を集め、打ち上げ回数も多くなっています。例えば、第1段ブースターのB1062は、これまで20回再利用されており、最短21日で再使用された実績があります。

Falcon 9は、地球周回軌道のうち低軌道に最大で22.8トンのペイロード(ロケットの先端に搭載する人工衛星や宇宙船等)を打ち上げる能力をもっています。

渡邊
ロケットが再利用可能であるため、打ち上げコストも安くなり、マネタイズもできているということですね。これは他社にはすぐに真似できなそうですね・・・・・

木村
そうなんです。一方で、Starshipは正確にはロケットにおける第2段で、第1段ブースターはSuper Heavyと呼ばれます。Super HeavyとStarshipを合わせて1つのロケットを構成しています。

Starshipは低軌道に最大で250トンのペイロードを打ち上げる能力を持つと言われており、Falcon9の打ち上げ能力の10倍以上のパワーを持つロケットです。

https://humans-in-space.jaxa.jp/iss/launch/falcon-9/
https://nextspaceflight.com/launches/reuse/75

渡邊
Falcon9の10倍の打ち上げ能力、、見た目がかなり違うと思っていましたが、ペイロードの重さもとてつもないのですね。より大きく重いものを運ぶことができるようになることは理解できたのですが、具体的にStarshipが成功するとどんな未来が待っているのでしょうか。

木村
Starshipはロケットの第2段であり、燃料を搭載して飛行することが可能です。さらに、ペイロード(ロケットから見ると貨物)を輸送するだけではありません。航空機のように貨物と乗客を乗せることができる宇宙船となっています。Starshipに人が乗り、地球周回軌道に長期滞在したり、月や火星等地球外への輸送・帰還も可能な設計となっています。

もちろん、ペイロード(貨物)だけ、あるいは燃料だけを搭載する柔軟性も兼ね備えています。Starshipでは他のStarshipと地球周回軌道上でドッキングして、燃料を補給し、更なる飛行を続けることも想定されています。

渡邊
なんと! 人も乗れるようになるのですね。宇宙船というとSFの世界だと思っていましたが、まさに今それが現実になってきているということでしょうか。

木村
実際にStarshipの計画を見ると、数年先の未来から十年先の未来までも想像することができワクワクします。
・数年先の未来
        ・従来のロケットのように人工衛星を打ち上げるものとして利用
        ・ISS国際宇宙ステーションの代替として利用
        ・月への有人飛行
・十年先の未来
        ・地球周回旅行、月旅行
        ・火星への移住

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