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「自治体様のお困り事を解決する」水道管の漏水リスク管理業務システム『天地人コンパス 宇宙水道局』の開発者たちをCEOの櫻庭がインタビュー

JAXAベンチャーの天地人で動いているさまざまなプロジェクトについて、その経緯や背景を社長の櫻庭がスタッフに訊くインタビュー企画です。第1弾となる今回は、全国の自治体に採用されている、宇宙ビッグデータを活用した水道管の漏水リスク管理業務システム「天地人コンパス 宇宙水道局」を特集します。集まったのは、宇宙水道局の開発に携わったエンジニアメンバーです。


登場メンバー

櫻庭 康人
青森県出身。多数のスタートアップの設立・事業拡大を経験後、天地人を創業。天地人CEO。

相原 悠平
広島県出身。新卒で石油会社へ入社し、ジオサイエンティストとして経験を積んだ。天地人では、事業開発とデータ分析に携わる。

中村 勇士
京都府出身。医療系でエンジニアとしてのキャリアをスタート。天地人では、フロントエンドエンジニアとして、天地人コンパスに関わる。


柴田 優斗
埼玉県出身。大学では、音響データと深層学習に関する研究を行う。天地人では、インターンとしてデータ分析業務に携わる。

漏水リスクを判定できる天地人コンパス宇宙水道局

櫻庭
本日は、宇宙水道局に関係するエンジニアの皆さんに色々と話を聞いていきたいと思います。よろしくお願いします。まず、「天地人コンパス 宇宙水道局」(以下、宇宙水道局)が、どんなサービスなのかを教えてください。

中村
宇宙水道局は、衛星データと、自治体様(水道事業者様)が保有する水道管路情報などを組み合わせて、AIで解析することで、漏水リスクを評価するシステムです。

「天地人コンパス 宇宙水道局」のサンプル。色のついている場所は水道管の漏水リスクの恐れのある場所を指しています。漏水リスクの高低差を5段階に分けており、赤色は漏水リスクの最も高い場所を指しています。

櫻庭
宇宙水道局を導入すると、どんなメリットがあるのでしょうか?

相原
現状の漏水調査は、自治体の職員さんが漏水している付近に足を運んで調査をしています。漏水箇所を探すのは大変な作業で、漏水箇所を見つけるのに1日がかりになることもあるそうです。

音聴棒を使った漏水調査のイメージ(神奈川県水道記念館の漏水体験コーナーで撮影)

もともと漏水の調査って、音聴棒という機材を使って漏水箇所を見つけるんですね。聴診器的なものなので、水道管から聞こえるわずかな音を頼りに漏水を見つけます。ですので、地下水位が高かったり、金属ではなく樹脂製の水道管だったり、騒がしい場所では調査が難しいんです。

そういった背景もあり、調査には膨大な時間やコストなどが掛かります。宇宙水道局は、漏水するリスクの高い場所を明らかにできるので、漏水調査の省力化に繋がります。

柴田
手前味噌ですが、宇宙水道局を使うと、漏水リスクが高い場所に集中して調査を行うことができるので、効率がいいと思います。

相原
自治体様によりますが、各事業者がメンテナンスを担う水道管の長さは1,000キロ以上に及ぶことも少なくありません。宇宙水道局は約100メートル四方でリスク評価ができるので、現地調査の優先順位付けに役立つというフィードバックをお客様からも伺っています。

中村
私は、宇宙水道局は自治体様のDXにも貢献していると思います。自治体様のお話を伺っていると、水道管の設置年や、修繕歴などの管理に紙を使っているところもあります。それに、データで管理をしている自治体様でも、使っているシステムがバラバラのため使いにくいと言ったお話もありました。

宇宙水道局を使うと、水道に関する業務を一元化できるので作業が楽になります。そして、一つのデータベースにまとまると、それぞれのデータを掛け合わせてリスク評価に使うことができるので、より精度があがったり、便利になったりするメリットもあります。

1年以上かけて基礎を構築。通信環境にも配慮をした設計

櫻庭
宇宙水道局は、2023年4月にサービス提供を開始しました。自分たちのつくったプロダクトが世の中に出ていくことに対する率直な気持ちを教えてください。

相原
私はプロダクトマネージャーとして、宇宙水道局の開発から営業チームとの橋渡しまで広く関わっています。これまで、ゼロから立ち上げたサービスをリリースするという経験がなかったので、大変でしたが充実していました。

中村
私は「人の役に立つこと」、いわゆる社会貢献がしたくて天地人に入ったのですが、宇宙水道局は社会貢献の意味でもいいプロダクトをつくれている実感があります。

櫻庭
インターン生の柴田さんはいかがでしょう?

柴田
私の大学での研究テーマは「音響信号を用いた人物センシング」です。宇宙水道局では機械学習の部分を担当しています。初めてサービスを社会実装するという経験ができたので、このプロジェクトに関わることができて非常に良かったです。

それと、リスク評価の精度を今以上に上げるために、新しいデータや、使ってくださっている自治体さんからのフィードバックなどをもとにサービスを改善していきたいと思います。

櫻庭
柴田さんが毎日データを使って、実証結果を報告してくれていましたね。

柴田
あれ、実はけっこう大変でした(笑)。というのも、というのも、機械学習を使うことで扱うデータの種類と規模を増やすことができますが、その分だけデータの前処理や可視化プロセスは複雑になります。Pythonを使って集計をしながら、頑張りました。

櫻庭
他にも大変だった点はありますか?

相原
水道管のデータや、複数の漏水データ、他にも細かいところまで合わせると数十種になるさまざまなデータを、漏水リスクを評価するために整備することが大変でした。

あとは、分析に使うデータを選ぶところも大変でしたね。使えるデータをすべて機械学習に入れ込むのではなく、データの有用性をしっかり検証して組み込んでいます。手当たり次第にデータを使うと、逆に精度が下がってしまうこともあります。このデータを選ぶために、1年以上かけて基礎の部分を構築したので、時間もかなりかかりました。

中村
大変というより常に神経を尖らせている、という話なのですが。工夫をしないと、扱うデータの数が膨大なので、システムの動きが鈍くなってしまいます。サクサクと動くように管理を怠らないようにしています。

例えば、自治体様はインターネットの通信環境が良くないところもあるので、通信量にも気を遣いながらシステムを設計しています。将来的にはオフラインでも使えるサービスにしたいです。

エンジニアも現場に出ることで調査実態の解像度を上げていく

櫻庭
宇宙水道局に限らず、生活に欠かせないインフラに対する衛星データの可能性について、皆さんの率直な考えを教えてください。

柴田
「広範囲のデータを継続的に収集できる」という衛星データのポテンシャルは非常に高いと思います。データを解析するときには、膨大なデータがあると信頼できるのですが、実際に人間が移動せずとも大量のデータを収集することができることに可能性を感じています。

相原
近年の大きな気候変動によって、何十年も前に設置されたインフラも大きなダメージを受けています。そもそも、その設備が開発・製造された時と今の気候は大きく違うためです。衛星データは、長期間継続的に蓄積されているので、経年変化を予測するなど、可能性がたくさんあると感じます。

中村
水道インフラでいうと、人口減少する地域でも水は止められないので、管理する水道管の量を減らすことはできません。今後は、いかに効率化できるかが重要になってくると思います。

櫻庭
最後に今後の意気込みをどうぞ!

柴田
まだ使っていない衛星データもあるので、活用するデータの数を増やしながら、漏水リスク評価の精度をもっと上げていきたいです。

相原
現在は日本での展開が主ですが、世界中で使ってもらえるサービスにしていきたいです。また、水道管だけでなく、水質管理や凍結対策など「水」を起点とした取り組みをもっと増やしていきたいと思います。

中村
まだサービスを提供したばかりにも関わらず、ありがたいことに宇宙水道局の導入数はどんどん増えています。今後も、自治体様のお困り事を解決するために、私たちも現場に行って、話を聞きながら、泥くさく仕事を続けていきたいと思います。

相原
これからも、開発チームが現場に足を運ぶ機会は大事にしたいですね。自治体様の職員さんから現場の様子を直接聞きながら、調査実態の解像度を上げていきたいです。

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