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FC東京エンブレム変更問題についての意見

僕は2002年シーズンに初めてFC東京の試合を味スタ(当時はまだ東スタ)に見に行き、そのままサポーターになって2003年シーズンから現在までシーズンチケットホルダー(SOCIO)であり続けている者です。今回、クラブ(東京フットボール株式会社)からエンブレム変更の提案があり、それについてサポーターのあいだでも議論が活発になっていることから、自分としても意見を表明しておきたいと考えました。

エンブレムのデザインについて

まず結論からいえば、エンブレムを変更することには僕は賛成です。なぜなら今のエンブレムのデザインがはっきりいって気に入っていないからです(実際のエンブレムはFC東京の公式サイトで)。

上記のとおり20年以上にわたってFC東京を応援しつづけている者として、現在のエンブレムをずっと見慣れてきたのは事実です。しかし「うちのエンブレムってデザイン的に今イチじゃね?」というのはずっと思っていたことであり、もちろんどんなデザインに変更になるかという留保はあるにせよ、「もうちょっとカッコいいデザインにならないの?」というのが率直な気持ちです。

形はJリーグのクラブのエンブレムにありがちな盾形でそれ自体はしかたないとも思うものの、てっぺんのトンガリ方はダサいし、その中を四分割して縦じまと横じまに塗り分けている意味がわかりません。「ESTD」という文字の意味が不明だし(「Established」だと推測はしますがわざわざ書くことかと思います)、「1999」という数字の配置はムリっぽい。

なにより中央に配された「燃えるT」のマーク(これが単独で使われることも多い)がまるで素人が定規をあてて描いたようなやっつけ感の強い代物で、アクセントが右上に寄ってしまい上下、左右のバランスが悪い。「T」の縦棒にムリヤリ押しこまれた「F.C.TOKYO」の文字も唐突感があります。

僕はデザインの専門家ではないですが、素人としてこのエンブレムをみて「カッコええ」とは思えないし、仮に美大のグラフィックデザインの授業でFC東京のクラブ・プロファイルを示されてエンブレムをデザインしろという課題が出たときに、これを提出したら先生に「おまえさぁ…」と言われるレベルのつたないデザインではないかと思います。

僕は20年以上このエンブレムを見慣れてきたうえでも格別の「愛着」まではわかないし、むしろ「さすがにそろそろ変えましょうよ」というのが本音です。それは親会社がどうとかクラブビジョンがこうとかいう以前に、そもそもエンブレムとして、FC東京のステークホルダー統合の象徴として、戦う旗印として、その重みを受け止めるだけのデザイン上の力が今のエンブレムにはないと思うからです。

合意形成の進め方について

それでももちろん、エンブレムの変更はクラブに対するサポーターの「思い」に関わる大きなテーマです。デザインがどうであれ25年間慣れ親しんできたこのエンブレムに愛着を持ち、簡単に(あるいは絶対に)変えてほしくないという人がいることは理解はできます。したがって、その変更については「できる限り」広くサポーターなどのステークホルダーの声を聞き、そのなかでも取り入れるべきものは取り入れながら丁寧に進めて行く必要があります。

その意味で、クラブが、一方で株主からエンブレム変更への同意をとりつけながらも、他方でサポーターから意見を聞く機会を作り、そこで寄せられた声を公開しさらに議論を深めようとしているのは手順として妥当だと感じます。結論ありきで意見を聞くふりをしているだけという批判もあり得るところでしょうが僕はそうは思いません。もし意見を聞いた結果圧倒的多数がエンブレム変更に「No」であったなら、変更はおそらくいったん棚上げになっていたのではないでしょうか。

エンブレムの変更などのブランディングは経営上の問題であり、それに責任をもつべきなのはクラブですから、さまざまな声に耳を傾けながらも最後になんらかの判断を下さなければならないのは当然のことです。ステークホルダーの声を聞くとしても、まったくのスクラッチからオープンな議論だけで合意を積み重ねて行くことはできません。

クラブとして、業務を執行する立場からの戦略や方針があり、それを形にしたたたき台があって、それに対するステークホルダーの意見を取り入れて修正も行いながら同意をとりつけて行くというのはビジネスとしてごくあたりまえのプロセスであり、今回のエンブレム変更はまさにその手順にのっとって進められていると僕は感じています。それを「結論ありき」と感じてしまう人はビジネスの現場で合意形成をやったことのない人なのではないかと思います。

サポーターとクラブの信頼関係について

サポーターにはこれまでFC東京を応援し、J1昇格、ナビスコカップ優勝、J2降格、震災による日程変更、天皇杯優勝、再昇格、最終節で優勝を逃したシーズン、コロナによる規制観戦など、さまざまな苦楽をクラブとともにしながら積み上げてきたそれぞれの歴史、思い、誇りがあり、このクラブに何物にも代えがたい価値を見出しているサポーターも少なくありません。

そこにおけるクラブへの熱量は、たんなる「商品のヘヴィユーザー」のそれではないし、クラブ経営はたんなるビジネスの枠におさまらないある種の独自の社会性があります。少なからぬサポーターが今回のエンブレム変更についてモヤっているように見えるのは、クラブが、あるいはその支配株主(親会社=株式会社MIXI)がそれをわかってくれているのか、サポーターをクラブの不可欠なステークホルダーとして位置づけ、尊重してくれているのかということについて、疑心暗鬼も含めそこまでの信頼関係がクラブやその親会社とのあいだにまだ構築されていないと感じているからではないでしょうか。

僕自身としてはその気持ちもわかるし、このシーズンの終わりまで待っても遅くなかった、少しばかり変革を急ぎ過ぎた面はあるとも思う一方で、ビジネスとしてそこまで悠長に時間をかけている余裕はなく、目に見えるかたちでFC東京というブランドの価値を上げる取り組みを進めて行く必要があるというクラブの事情も理解でき、このタイミングでのエンブレム変更の提案は実際センシティブな判断の結果だったのだろうと思います。

しかし、2021年のMIXIによる経営権獲得以降にクラブが積み重ねてきた(チームの強化も含む)ブランド価値向上の取り組みが概ね納得できるものであったこと、つまりフットボールクラブ経営に付随する独自の社会性を理解し尊重したものであったこと、さらにはサポーターとの対話をないがしろにはしないという基本的な姿勢であることは十分窺えるし、そのことはサポーターにも好意的に受け止められてきたのではないでしょうか。

なんであれ変化を嫌う人はいて、だれが何を言ってもこれまでのような日々がこれまでのようにこれからも続いて行くこと以外望まない声は必ずある程度出てきます。それは別とすれば、変化自体は悪いことではなくむしろ必要なこと。我々サポーターが、どうやってFC東京を強くするかということについて聞くに値する意見をクラブに届け、議論に参加して行くことは必要なことだし、エンブレムの変更もそのなかでテーマの一つとして「Yes」であれ「No」であれ伝えて行くべきだと思っています。

最後に

今回のエンブレムに関し困ったのは、議論が動画を介して行われ、文書として事後的に確認できるものがほぼないこと。探し方が甘いのかもしれませんが、クラブの姿勢や考えを確認し、引用できるドキュメントがないのはとても不自由だし、議論を深める障害になっていると感じました。

コミュニケーションの手段として動画を活用するのはありだと思いますが、クラブがサポーターを重要なステークホルダーとして尊重し、サポーターからオープンな意見を聞きたいのであれば、そのプロセスをいつでも利用可能な形で文書による記録としてパブリックに残して行くことを要望します。

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