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【FC東京】2022年シーズン・レビュー(3) 続いて行く旅

2022年のクラブMVPは木本だったと思っている。森重という絶対的なCBはいるものの、そのパートナーは丸山、チャン、渡辺らがいたが、森重を引き継ぐ形でクラブに残る者はいなかった。そのなかで、渡辺の海外移籍を受けて補強した1年めの木本は派手ではないがシブい働きでチームを支えた。

ポジションがら試合中に傷むことも多かったが、次の試合にはなにくわぬ顔をして出てくるタフさ、頑丈さを武器に、33試合先発とフィールド・プレイヤーとしてクラブ最長の出場時間。ゴールも2つ決めている。なにより読みのよさと対人の強さを兼ね備えた守備能力、少々プレスをかけられてもあわてない落ち着き、鋭いくさびや裏へのフィードなど自在なパス出しなど、高いレベルで代えの効かない活躍を見せてくれた。

トレヴィザンがケガで夏以降離脱しCBのバックアップが心細いなか、彼が踏んばってくれなければ今季の成績はおぼつかなかった。本人もボランチよりはCBがやりたいという希望で移籍してきたということだし、森重とのコンビで八面六臂の活躍をしてくれた存在感は大きかった。

次点には東を挙げたい。シーズン序盤こそ出場機会に恵まれなかったが、青木のサブの形でアンカーを任されるようになって持ち前のセンスを発揮、7月以降は負傷離脱した青木に代わる正アンカーとして攻守の要になった。守備でクリティカルなポジションを埋めながら、攻撃ではときとして最終ラインに落ちてボールを預かり、ここしかないというところにパスを通して攻撃のスイッチを入れた。

もともとはトップ下あたりでラスト・パスを出すのが本領だと思うが、強みを出しきれず便利に使われることがここ数年多くもどかしい思いをしていた。サポの中にも東に厳しい意見は少なくなかったが、今季の活躍を見れば、ユニの背番号を10番にしたオレが正しかったことがわかるだろう。気がつけばクラブを代表する選手のひとりになった。泣ける活躍だった。東とリーグ・タイトルを獲りたい。

新人賞は文句なく松木だろう。高卒新人としては異例のレギュラーとしてシーズンを戦い、そのなかでさらに成長した。ゴールは2つ決めたが本人としてはまだまだ足りないだろう。身体の強さ、年上ばかりのなかでもいっさい物おじせずむしろ先導して行く鋼のメンタリティ、戦術理解、ボール扱いなど規格外の新人であることは間違いない。近い将来に海外に挑戦することになるのだろうが、背番号を一けたにしたからにはせめて2023年は最後までタイトル争いに貢献してもらわなければならない。

その他に印象に残ったのは渡邊だ。もともと技術には定評のあるクレバーな選手だが、今季はアルベル監督のもとで高い戦術理解を示し、ポイントになる選手として右SBをはじめとしてさまざまなポジションで使われた。YouTubeの配信でもポジショナル・プレーをしっかり実戦に落としこんでいることがわかった。

5月の鹿島戦(H)で2得点、10月のC大阪戦でハットトリックと、乗ってくると気持ちよくゴールを決める面があり、シーズンで6ゴールは使われ方やポジションからしても悪くない数字。2023年は背番号を11に変えて勝負の年になるだろう。

一方で期待していたのに大きな活躍ができなかったのが鈴木だ。2021年にSBが軒並みケガで緊急事態となったときに補強し、正確なキックと手堅いプレーでチームに貢献したが、長友の復帰もあって今季はリーグ戦は途中出場の4試合のみと出番を失った。

器用なタイプではないかもしれないが、正確なアーリー・クロスを持ち、使い方で光る選手だと思っている。もしかしたら移籍かとなかばあきらめていたが、本人もおそらくは悩んだ末に残留を決断してくれた。残ってくれたのは本当にうれしい。2023年への期待をこめて名前を挙げておきたい。

僕は2002年から東京に住むようになり、それからずっと東京を応援してきた。2003年からはシーズン・チケット・ホルダーにもなった。その間、リーグ・カップを三度、天皇杯を一度獲得したものの、二部降格を一度経験し、なによりもまだリーグ・タイトルを獲っていない。

2019年に長谷川監督のもとで最終節まで優勝の可能性を残し首位横浜と直接対決するところまで行ったが、あれが今のところ最もリーグ・タイトルに近づいた瞬間だった。そしてその記憶を更新できずに2020年、2021年は不本意な結果に終わり、長谷川監督は東京を去った。

2022年、出直し初年はタイトルには届かなかったが、アルベル監督のもとで確実にチームの成長と戦術の浸透を感じた一年だった。しかしその間に森重をはじめとするベテランは確実にひとつ年をとり(もちろん若手もひとつ年はとった)、髙萩ら何人かの重要な選手がクラブを去った。石川とも梶山ともリーグ・タイトルを獲ることができなかったことを思えば、是が非でも森重にシャーレを掲げさせたいが、そのために残された時間はわずかしかない。

2022年はその布石として我々が費やした貴重な一年であった。この一年をどう評価するか、それは結局のところ2023年シーズンにどんな果実が得られるのかで決まると言っていいかもしれない。我々の旅はまだ始まったばかりで我々はなにも手にしていない。そして旅は終わることなく続いて行くのだ。

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