都市生活者の系譜 ―佐野元春私論(7) 言葉とビートの相克
エレクトリック・ガーデンアルバム「VISITORS」で、佐野がそれまでの語彙に従来とは異質な文学性、抽象性を持ちこみ、結果としてその表現の領域を押し広げたことは第5回で既に見た。それは佐野がニューヨークという国際都市、無国籍都市の緊張感、スピード感の中で、日常の中からリアルに立ち上がってくる意識の奔流を、「歌の言葉」に翻訳している暇がなかったことによるものだと分析した。換言すれば、それは、リアルなイメージの断片を「歌詞」に翻訳することによってそこに必然的に生じるギャップやロス