見出し画像

2024.09.29 ダヌビアナ美術館

天気がいい時に行かなきゃ!と、冬に近づいてきた証拠である、曇天が増えてきた今日この頃、焦りを感じていた。

久しぶりに綺麗な青空が部屋に差し込む。今日がチャンスなのに、なぜか体が重い。このままベッドの上で一日過ごしたい。だが、後悔するのも嫌なので、重たい腰を持ち上げてバスに乗り込む。

行き先は、ダヌビアナ美術館。
まっすぐ車で行くと20分ほどの距離だが、路線バスを乗り継ぐと1時間かかる。
車内からは、オーストリアとの国境沿いに立ち並ぶ、風力発電機が遠くに見える。しかし地図上では、ダヌビアナはハンガリーとの国境近くに位置しているのを示している。いかにブラチスラバが両国の入り口近くにあるのか実感した。

バスを降りると、強風が吹き荒れる。
天気はいいが、風は冬の冷たさだ。この日は15度。生脚でワンピースは選択ミスだった。だが、ドナウ川でウィンドサーフィンをしている人の姿が見えた。その様子を少しだけ見て、すぐさま館内に避難した。

ダヌビアナはモダンアートの美術館である。最初に迎え入れてくれたのは、20㎠ほどのキャンバスに、イラストが描かれたものが、複数枚敷き詰められた作品だった。カラフルで独特な一枚一枚に目をやる。

少し歩くと、ヴィクトル・フレショのニエマンド(Niemand)の作品が出てきた。この美術館の目玉作品の一つである。三頭身の大きな頭と怒った顔が印象的な像が、鏡張りの部屋に整列している。説明書きを翻訳機にかけて読むと、作品は傲慢さ、否定主義、複雑さ、意地悪、不健康さを表しているらしい。

ドナウ川の中洲にある美術館であるため、川と空、作品のコントラストが美しい。晴天に来たのは正解だったという思いに浸っていると、後ろから犬の鳴き声が聞こえる。振り返ると、三匹の中型犬が館内を歩いている。
基本的にカフェなどでも、ペット用に水桶が置いてあり、バスの中でもどこでもペットを連れて入れるスロバキア。まさかの美術館にも現れて、驚きを隠せなかった。小型犬を飼っていた私としては、室内でトイレとかさせないように、どう躾しているんだろうと不思議だ。

他の作品にも目をやると、大体スロバキアか、チェコ・オーストリア・ポーランドなどの周辺国出身の作品が並べられていることに気がついた。基本的に知らないアーティストの絵画が展示されている。しかし、その中で美術に詳しくない私でも知っている作品が出てきた。

アンディ・ウォーホルのキャンベルのスープ缶。
疑問に思い解説書を読むと、彼の両親はスロバキアからアメリカへの移民だった。彼自身は生まれも育ちもアメリカだが、ルーツは当国らしい。

特別展示のエリアでは、Laputa展と題して、ガリバー旅行記の挿絵なども担当したペトル・ウハナール(Peter Uchnár)の絵が飾られていた。私は絵本の原画展が好きで、日本でもよく足を運ぶ。偶然にも、スロバキアの絵本作家の原画を拝見できたのは良かった。

また、別の特別展示エリアでは、ヘルマン・ニッチュ(Hermann Nitsch)の作品もあった。最初、赤く染められた絵が多く飾られていて、そういうアーティストなんだと思っていた。だが、カーテンで仕切られて18禁のマークがある部屋に遭遇した。
なんだと思いながら、中に入り込むと写真が展示されている。よく見ていくと、ヤギなどの動物から血が滴っている。どうやら動物を捌き、肝臓などをだす“パフォーマンス”をしている。人間も裸で吊し上げられ、動物の血らしきものを飲まされる写真も会った。



その残虐な写真に、ゾッとした。しかし、見えていないだけで、私たちが食す動物たちも、見せ物に晒されていないものの、人間のために命を捧げていると思うと、似たようなものかもしれない。「こういうの見ると、ベジタリアンになってしまいそうだ」と思い、お腹が重たくなりながら部屋を出た。

リフレッシュさせるためにも、外の作品を見に行った。だが寒すぎて、足早に通過をするので精一杯だった。本当は、一つ一つしっかり立ち止まって見たいが、仕方がない。

ヨーロッパにいると、絵画だけでなく、音楽や舞台などの芸術に触れる機会が増える。日本では、まだまだ“嗜好品”として扱われてしまうが、もっと手軽に楽しめるものになればいいのになと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?