公平くん。

正規の通学路を通れば20分。
近道をすれば10分のところに学校がある。
近道はマンションの隙間をうまく通り抜けて、信号のない道路を越えて、通行禁止と書かれた貼り紙がしてある。さらに一軒家と一軒家の間を細い道を通り抜けていくと学校に繋がらる車道に出られる。友達と一緒に学校に行くときはちゃんと正規の道を通る。ただ、1人の時はいつも近道をしていた。先生に見つからないように、キョロキョロして体を横にしてカニ歩きでしか進めない1人しか通れない細い道だ。向こうから人がくる。『やばい!先生だ!』一軒家の屋根に覆われているので、薄暗く見上げると上級生の先輩だった。『ああ、ごめんな先、通るわ。』『あ、すいません』優しい先輩でよかった。反対の道に戻ろうとすると『どけよ、邪魔だぞ』3年生の怖い先輩だった。『うわ、終わった俺。ヤンキーと先輩に挟まれたわ。オセロじゃん。薄暗くてあんまり見えんし怖いし暗いから黒や。ある意味、黒と黒や。オセロなら黒になってるわ。ん、でも、オセロではないか。』3年の怖い先輩『何ぶつぶつ言ってねん。はよ向こういけや』公平は少しか細い声で『はい,,』と答える。優しそうな先輩が『ちょっと、何してんの?俺、急いでるんだけど』と言った。公平はパニックになり、急いがば回れということわざを思い出した。ちょっと今は違う気がするなーとか考えながら、優しそうな先輩に向けて言った『ごめんなさい、先輩、反対の方向に戻ってもらってもいいですか?向こうから怖い人来てて...』人はこういう時見た目で判断するのだな。としみじみしていた。少しの沈黙があり『りょーかい。』と言い、歩いて来た方向に戻って行った。公平にはその『りょーかい。』がとても怖かった。優しそうな先輩の後を追うようにその細い道を自分の中で1番スピードの早いカニ歩きでいったつもりだった。その優しそうな先輩の奥から何かがきた。ちょっと光って見えた。猫だ。しかも白猫。オセロだったら白、、だな。で、公平も白だから白、白、白。はい。有利〜勝ちま〜す。と考えていたら、その優しそうな先輩がこちらに向かって僕のカニ歩きよりサイドステップばりの早いスピードで戻ってきた。優しそうな先輩は『俺、猫アレルギー!!死ぬ!』と鬼の形相。公平は『無理ですよ!マジで戻ってください!』とこちらも必死な顔で言った。お互い言い合いを続けていると白猫が優しそうな先輩に飛びついた。するとその先輩は急変し、『お前いい加減にしろよ。』と折り畳み式のナイフを出して公平に向けた。公平は『わかりました。落ち着いてください。』完全にビビり倒していた。ゆっくりやってくる3年の怖い先輩に対して『あのー、これ以上進めないみたいで、、、』3年『あ?』公平『あー完全に終わったわ』と心で呟く。しかし、背中に、と、いうよりも、肝臓のちょいしたにナイフを突き出されてる。
まだナイフよりも殴られた方が痛くないと思った公平は『本当にごめんなさい!!!あれです!そ、その、奥に先生がいます!!!』と言った。すると3年は『まじで?おれ、これ以上悪さすると
親に殺されるんだわ、ありがとう教えてくれて』と言われた。
意外と素直な3年にいいところあるじゃんって思った。これがギャップというやつなのかと思いながらも、カニ歩きで進んで行く。やっとの思いで外に出れたと思った。隙間を見ると誰もいない。白猫がどっかに行き、優しそうで、ナイフをもった人もいなかった。近道の細道を覗くと誰の人影もなかった。
3年のヤンキーは小走りでとっくに正規のルートを辿っていた。気づけば15分以上経っていた。
公平もちゃんとした道で行こうとした。それから毎日正規のルートで学校に通った。

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