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忍者と極道 艶道戦感想

忍極感想だァッ!!

前章からガムテ戦でボロボロになった忍者しのはの治療をしたことで因縁ある忍者シノハVS艶道という、これはこれで第五章のクライマックス感ある対戦カードですね。

V系クソ医者だと思っていたら
遂にシーノ自身が言っちゃったよ

【死の風纏う堕落天使】

進撃の極道電車道ヤクザライナーだの剛拳巨砲主義だの野暮ったい極道技巧ごくどうスキルの中で、厨二で真剣恰好クソかっけ良い見た目と名を持つ極道技巧、黒旋術式シュトゥルム
困ったことに闇堕ちしたとはいえ医者なので「かっけー語韻に惹かれて思わず厨二病患者が使ってしまうドイツ語」に違和感がないというのがズルい。

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ところで、私的にこの「黒旋術式シュトゥルム」は名前こそ壱、弐、終末型ですが習得順は終→壱→弐だったんじゃないかと考えています。

純真空によるメスより、塵を混ぜて研磨アブレシブジェット加工の要領で切れるメスにする方が、正直現実的ですし(この荒唐無稽な漫画で現実的とか言うのもアホらしいですが)。
ただ、可視可能、塵を混ぜるため切開箇所から雑菌が侵入する恐れがあるため(闇医者とはいえコイツ医者なので……)純真空メスの壱ノ型を習得し、隙を無くすために弐ノ型を習得という順じゃないかと。

習得は最初でも、終末型はその名の通り、雑菌侵入とか切れ味良すぎて周囲に被害が出るとかもう考えずに本気で相手を100%ブッ殺すと決めた時のみ解禁する奥の手として終末型に据えたのだと考えています。

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なおこの弐ノ型で迂闊にもダメージを負ってしまった場面はシーノに弱体化デバフが効いているなぁと感じたところ。
忍者の真骨頂は野生の勘ノラのセンス
例え見えずとも、肌で感じる気流とただの「ヤバい」という第六感で、殺島戦やガムテ戦の時のような絶好調時のシーノなら、右腕筋断裂III度損傷などという危険ヤバい重傷を負わず、かすり傷程度の間合いで退いてしまったんじゃないかと。

【忍者(しのは)復活戦】

このシーノらしからぬ迂闊な重傷からの復活は、そもそも第五章での始まりである親友である極道きわみが宿敵たる極道であると知ったことで、シーノ最強の武器である「初志貫徹」「誰よりもブレない忍者」がブレる所から始まっています。

それがテロ開始と同時に初心を思い出し

戦いの中で相手を理解し

それでも自分が戦う理由を自ら見出し
名乗りで本章の自分のテーマに触れる!

この流れは見事の一言。
前章で治療してもらった因縁ある艶道であったとしても、そいつが本心優しい奴であると理解わかったとしても、情も私心も全てを捨ててブッ殺す!これこそが忍者精神マインド!!

全姿全能たる長の自戒あるいは自嘲かな……

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ところで艶道戦での構図と台詞、割と本当に初心に帰っています。
二章の10話ですが

10話より
同じく10話より

相手の強さは段違いなものの、同じプリオタだと共感した恵介戦とほぼ全く同じ流れなんですよね。

【我慢比べ】

今回の出撃シーンで長からの忍者たちへの鼓舞ですが、それに倣うようまともな環境下では艶道に勝てないと察したシーノは麻薬ヤク水満ちる水中へと互いに堕ちて我慢比べへと勝負を持ち込む!

シーノもシーノで流血が堕天使の翼を象っているあたり
やっぱりどこまでも細かいところで『本質的に極道と変わりない存在』を強調していますね
そしてカッコ良く〆た次話では早々にこの絵面である

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ところで極道きわみさん今何やってんだよと思っていたら、MAYAと逢瀬していました。
第四章でガムテが極道きわみさんテロに巻き込んだ時の印象がまだ残ってたんですが、大体この人毎回テロ中は意味不明にカッコ良く御大層な演説しているのがパターンでしたね……。

極道きわみさんの悪癖はともかくとして(ラスボスらしい演出ではあるのですがプリオタであることがまず第一に印象が強すぎて残念なイケメンだという認識になってしまってたり……)、
このシーンでの台詞は今回の忍者たちは弱体化デバフによって地獄への回数券ヘルポンキメた極道と同等以下の身体能力にまで落ちているからこそ、どちらが強者でどちらが弱者なのか曖昧で、だからこそ信念を押し通せた者こそが勝つ――という解説シーンですね。

そして世界レベルのディーヴァとダンスしながら、内心では最推しのシーノに押し通して欲しいとしか考えていないあたり本当にこの人残念なイケメンだな……。

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そして我慢比べは麻薬ヤク水に入水する前から既に始まっていた!
逃げながら、医者なら想像もできない応急処置とも言えない無茶苦茶なその場凌ぎ!

利き手の暗刃、正にこれこそシーノの基本にして奥義。

実際、忍極の荒唐無稽だけど緊張感あるバトルを成立させているのがこの極道側からすればクソゲー極まりない通常攻撃が文字通りの必殺技でクリーンヒットすると首ちょんぱで即死するというところ。
一方で、忍者側も脳ミソ撃たれたりしたらさすがに死にますし、末期肝臓癌(と同じ状態)になったら死にます。

嘘はついていない
実際に、壊左と陽日の主な死因は脳への銃撃

ただちょっと忍極世界の人間は致命傷を受けてから死ぬまでの時間が異様に長い。

今回も相変わらずである

それでも致命傷は致命傷。治療不可能レベルの傷を受けたら20ページくらいは生きていても死んでしまう、これは忍者と極道は共に免れないし、互いに通常攻撃がほぼ必殺技で、それをノーガード、無対策で喰らうと死ぬっていうスタンス自体は事実なんですよね。これが緊張感を生む。
荒唐無稽な超人バトル漫画のくせに、生死のシビアさだけは確かなのは、忍者と極道の一貫した大切なスタンスだと思います。

※※※

余談ですがお兄ちゃんのレクチャーは間違ってないんだけど、まるで漫画編集者みたいなことを言っているなと思ったのは私だけではないはずだ。
読者の”想像”超える闘いを”創造”せよ!!

【艶道の過去】

医者になるきっかけとなった、最愛の妹の死。
そして彼女の生まれ変わりかのような容姿、夢、境遇を持つ少女みきこと出逢い、出逢ってしまい、艶道の運命の歯車は狂ってしまうことに。

目の前に立ち塞がる非情な現実。
この艶道の上司の医師が決して褒められた人物ではないとはいえ(論文のゴーストライターさせているとか)

艶道自身もみきこへの処置は正しいと理解わかっていた。
でも、それでも、理解わかっていても――

医師ではなく、艶道個人の私情エゴでみきこに希望を与えてしまった。

※※※

厳しい私的意見ですが、これはやはりどこまでも艶道個人の我儘にみきこちゃんを巻き込んだだけ、と思いますね……。

自らに覚醒剤ヤク打って、過労勤務し、許可が下りない手術を艶道個人の意思で強行。
これはどんなに成功できる手術であったとしても、客観的に見て強制的に手術中止させられるのは当然と言えば当然。
このシーンを見る限り、みきこ本人は当然のこと、彼女の家族とも全く相談せず本当に艶道個人が強行したであろうということが伺えます。

【本当に救済(すく)いたかったのは……】

この経験からか、いやそもそもみきこの担当医であった時からおそらく本当は艶道自身、内心気づいていたのでしょう。
救済すくいたかったのは目の前にいるみきこちゃんではなく、思い出にしてトラウマとなった最愛の妹の小夜子であり、何よりその思い出から逃れられぬ艶道自身なのだったということを。

艶道は他人に言われずとも、法で裁かれずとも、ンなこた理解わかっていました。
今までの救済無き医師団のメンバーと違い、医療界から追われたきっかけが完全なる自己責任であるという自覚があり、艶道のエゴでみきこの心を傷つけたという罪悪感もあってか、艶道はただ一人「自分たちの決行しようとしているテロは、どんなに言い訳しても自分自身を救済すくいたい」だけなのだということを自覚していた。
だからか、作中で艶道が自主的に天国への回数券ヘブポンキメているシーンが無いです。また麻薬ヤク水に入水しても美しい思い出だけでなく、トラウマも蘇っており、戦闘中であることを思い出して正気に戻っているあたり、他の連中より覚悟のキマり方が違う。

※※※

そんな自嘲を、勝者であり強者である忍者に吐露するのは、弱者が強者に縋る行為であり、実はこれが救済なき医師団にもっとも必要な処置お薬だったのではとも。
現実として、彼らに手を差し伸べたのは、心に負った傷に共感して寄り添ってくれる孔富であり、救済なき医師団たちは孔富に縋ってしまった。
でも孔富自身が、最愛の兄の死を物理的に認めていない怪獣モンスターだったので、彼らは暴走してしまった。
自らの弱さも、大切な人の死も、認められなかった。認めたくなかった。
そんな愚かしさを、客観的に評価してもらいたかった。

でも、忍者は強い

相手がどんなにクズであろうと、理解し、共感したのなら行為は許さずとも心は踏み躙らない。
こんなことができるのは正に精神的な強者です。忍者は物理フィジカルにも強いけどそれ以上に精神メンタルが強い。とくに忍者しのはは。

天国への回数券ヘブポンに頼っていないくせに、天国への回数券ヘブポンによる救済をもたらさんとしていた艶道は救済なき医師団の中でもとくにこじらせた面倒くさいV系クソ医者だったので、最期にかけてもらった言葉がシーノの理解わかるけど自立しろ」といういつものスタンスだったのは、罰と見るか救いと見るか。

【レイドボス襲来】

死を目前にし、天国への回数券ヘブポンの残留効果かみきこちゃん・・・・・・(妹の小夜子ではない)への救いの誓いを幻視する艶道に、容赦の無いトドメを刺したのはまさかの破壊の八極道最強クラスたる忍殺番長こと砕涛華虎!!

心・技・体の内、心と技は破壊の八極道筆頭たる輝村極道の方が上である可能性はあるものの、フィジカル面に関してはほぼ間違いなく劇中最強生物!
地獄への回数券ヘルポン無しで次々と日本全国各地の忍者を素手のみで数十年殺して回ってきたという、正真正銘のザ・モンスター。

よもやよもやのレイドボス。
それもこれ以上の戦闘続行は不可能とシーノが自己診断するくらいの満身創痍の状態で、万全全身全力全開の、作中最強人物候補の一角たる華虎ちゃんとエンカウントしてしまうという、この絶対絶命の状況!

前話で「強者は勝者に非ず、弱者は敗者に非ず、押し通してみせろ」極道きわみが口にしたこの状況は、まさかの忍者しのはが弱者側として試される逆境となり、襲い掛かってきたことになります。

【弱さを嘲笑わぬ忍者、弱さを踏み躙る華虎】

艶道をブッ殺してからの、情け容赦無き一言。

華虎ちゃんが実際に劇中で殺人をした描写はこれが初めてですが、忍者並かあるいはそれ以上の身体能力フィジカル持ちであることを連載当初から注目されていた彼が、このような行いと言動をしたのは、すごく忍者側と対象的ですね。

忍者側は、それこそシーノが上述引用した嘲笑わらわねーよ」というように、例え極道であっても、宿敵であっても、許せない大罪を犯したとしても、理解わかり合えたのならその気持ちに寄り添う優しく強い人間たちです。

以前これらの記事でも触れましたが、忍者とは忍者の長たる神賽惨蔵が筆頭として優しい殺し方しかしない連中なわけで。

※※※

それに対し、華虎ちゃんは敗者も弱者も踏み躙り、彼らの背負っていた業も哀しみも一顧だにしない。
「弱者の集団」と自称する極道たちの中でも、圧倒的強者であり、普通強者が持つであろう強い者の傲慢さをこれでもかとたった3ページで突きつけた華虎ちゃん。
本作の中では「優しさを持ち合わせない破壊の八極道」というのはかえって異例なんですよね。

さあそんな恐ろしいレイドボスに対し、シーノは一体どうする、どうなる。
以下次号!

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